日建設計は、文部科学省のスーパーエコスクール[*1]実証事業に認証されている、岐阜県下の公立中学校において、2019年9月から2020年8月までの1年間で、ビルのエネルギー消費量正味ゼロであるnet Zero Energy Building(以下、ZEB)を達成したと発表しました(日建設計 2020年11月30日プレスリリース)。
新築のスーパーエコスクールでは初であると同時に、日本の学校施設(幼稚園を除く)においても初のZEB達成とのことです(同社調べ)。
*1.スーパーエコスクールとは、省エネを徹底して消費電力を抑え、創エネ・蓄エネの技術やさまざまな工夫でエネルギー消費を実質ゼロにする学校のこと
ZEBを達成したのは、2019年4月に開校した瑞浪市立瑞浪北中学校(上の外観写真の撮影:近代建築社)。同校は、瑞浪市内公立中学校の統合再編に伴い建設されたもので、新築校としては全国で初めて「スーパーエコスクール」として開校しました。
全国的に公立学校施設の老朽化が進む中、環境負荷を減らし、環境教育の推進や環境保全への取り組みが求められることから、文部科学省は2012年(平成24)より「スーパーエコスクール実証事業[*2]」を実施、同校はこの実証事業で認証された7校目となります。
*2.文部科学省「環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備推進」スーパーエコスクール実証事業について
https://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/ecoschool/detail/1319684.htm
今回のZEB達成は、同校の環境教育による生徒と教員らによる省エネ活動と、再生可能エネルギーの利用などによる創エネおよび省エネ技術を備えた学校建築が一体となり、達成されたとのこと。
以下のグラフとテキストは、瑞浪市と、建築設計を担当した日建設計と日建設計総合研究所が、2019年9月から2020年8月[*3]までに実施した調査データより。
*3.実測期間は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大による緊急事態宣言期間(4月7日~5月25日)を含む。授業が再開された、本来は同校の夏季休暇にあたる7月21日~8月27日に実測を行った
実測期間:2019年9月~2020年8月
実測結果:一般的な中学校のエネルギー消費量364MJ/㎡年に対して、さまざまな省エネルギー手法の効果により、50%を削減。さらに創エネルギーである太陽光発電の発電量を学校内で消費することにより、72%を削減した。校内で消費しきれずに余った電力は電力会社へ売電。学校外のオフサイトで使われ、地域の省エネルギーにも寄与している。この効果も加味して、ネットで101%の省エネ実績を達成した(下の図1)
昨年(2019年)と本年(2020年)の買電電力量を比較すると、4月~6月は登校の制限により電力量は減っている。逆に、登校を開始した7月~8月は冷房運転により電力量が大きく増え、4~8月の期間合計では昨年より電力消費量が増えた。これは、いわゆるコロナ禍による登校の制限の影響でエネルギー消費量が減り、ゼロ・エネルギーを達成したのではなく、導入した省エネルギー手法を計画意図通りに発揮することで、ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)を実現したことを示している(下の図2)
建築空間としては、瑞浪市の文化遺産である「登り窯」をモチーフにした自然換気を取り入れたほか、高断熱高気密化や、自然採光・地中熱を積極的に利用しています。高効率システム(LED照明、高効率エアコンほか)とエコモニターによるエネルギーマネジメントを採用。このほか、創エネルギーとして太陽光発電(120kw)や、風力発電やペレットストーブも採用しているとのこと。
同校における環境教育に対しては、「五感で育む環境体験」を大切にしているとのこと。エコモニターによる「見える化」はもちろん、「感じる化」の仕組みや、継続的運用を支援する環境マニュアル、歴史や自然から癒しを享受するバイオフィリックデザインなどの環境教育プラットフォームが整備されています。
義務教育機関である公立学校施設によるZEB達成には、脱炭素化社会の実現へ向けて大きな意義があると考えられます。(en)
日建設計公式ウェブサイト「ZEBプランニング」ページ
https://www.nikken.co.jp/ja/expertise/mep_engineering/zeb_planning.html