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コンクリートブロックを素材にした能勢孝二郎氏の彫刻作品展「NOSÉ KOJIRO BLOCKHEAD」沖縄県内3会場にて開催

沖縄県で彫刻家として活躍する能勢孝二郎氏(1950-)の個展が、2021年10月から11月にかけ、沖縄県内の3つのギャラリーで開催されます。

能勢孝二郎〈渦〉“vortexes” 2008

能勢孝二郎〈渦〉“vortexes” 2008(撮影:岡本尚文)

彫刻家として沖縄県を拠点に活躍してきた能勢氏は、沖縄の建築に多用されるコンクリートブロックを削り、切り出し、作品制作を行っています。これまでに、南城市のシュガーホールの壁面レリーフ、沖縄県立博物館・美術館の野外彫刻、沖縄平和祈念堂の平和祈念モニュメントなど、県内各地にシンボリックな作品を提供してきました。

能勢孝二郎 ポートレイト

工房で制作中の能勢孝二郎(撮影:座喜味優)
コンクリートブロックの作品制作では、図面を基に下書きをし、グラインダーなどで大まかなかたちをつくり、細かな部分はヤスリや砥石を利用して、手作業で仕上げている。

前回、能勢氏の個展が開催されたのは1988年。実に33年ぶりとなる本展「NOSÉ KOJIRO BLOCKHEAD」では、能勢孝二郎氏のプランにより、以下の3会場で異なる作品が展示されます。
コンクリートブロック単体のシリーズ「A PEACE OF CONCRETE BLOCK」や、文字を削り出したシリーズ「CARVED WORDS」などに加え、スケッチ、エンボスなど、新たな取り組みも含めた50点余りが発表されます。3会場とも入場は無料。

前後期に分かれている会期中、能勢氏のこれまでの彫刻作品をまとめた作品集『NOSÉ KOJIRO BLOCKHEAD』も刊行されます(発行:編集工房 東洋企画 / 本稿1枚目の画像:表紙)。11月3日より、後期展示の2つの会場・RENEMAとLuft shopで先行販売されます。

能勢孝二郎氏 ポートレイト

制作中の能勢孝二郎氏(撮影:座喜味優)

能勢孝二郎氏プロフィール
1950年生まれ。1974年多摩美術大学彫刻科卒業、1976年多摩美術大学大学院修士課程修了。

第2次大戦後、本格的な基地建設に着手した米軍は、沖縄の風物詩である度重なる台風に悩まされていた。資材現地調達方式の結果、沖縄でコンクリート・ブロックの生産が可能ということで量産がスタートし、まるでテントをたてるかのようにコンクリート・ブロックで続々と米軍施設が建てられるようになった。風に強くこのように合理的な建築資材は、もともと屋敷に石垣を積むことを習慣としていた沖縄の人たちに抵抗があるはずもなく、すんなりと民間でも歓迎され、着実に浸透して現在の沖縄の建築風景を作る基盤となり、戦後46年、いつのまにか一種独特の沖縄のアイデンティティをも帯びた素材として見ることができるようになってしまった。赤瓦や石灰岩のように。ぼくの彫刻思考は、初めから外的要因の強い屋外に向いていた。雨ざらしの彫刻まるごとアウト・ドア派であった。

彫刻の素材としてコンクリート・ブロックの再発見とも言える出合いは、一瞬にして、ぼくの目にはすべてのコンクリート・ブロックの構築物が新鮮でいとおしく映るようになった。そして、沖縄で制作することの意味性を与えてくれたのである。足を向けては眠れない。

コンクリート・ブロックの特性を一言で説明するのは難しい。歴史をも取り込んだ多面性があるからである。
今でこそ脇役に回された感もあるが、沖縄の復興を文字通り土台から支えてきた主役であった。
風や日差しを堅牢に防ぐが、水に弱くスポンジのようである。積み構造で圧縮力には強いが、衝撃には脆い。彫刻したコンクリート・ブロックを搬送する時などまるで赤子を抱いているようである。しかし、ぼくに言わせれば、それぞれに味があるし、古い壁など苔がむし、中程で少しズレたりして国宝級の趣が感じられ、思わず手を合わせたくなるものも多々見受けられる。不完全な建築資材であるがゆえに、自然に戻りやすいのだ。

(文:能勢孝二郎 / 1991年9月「南島・沖縄の建築文化」その2より抜粋)

能勢孝二郎 彫刻作品

能勢孝二郎〈A PIECE OF CONCRETE BLOCK〉 展示会場:gallery rougheryet(撮影:岡本尚文)

彫刻家 能勢孝二郎 個展 / NOSÉ KOJIRO BLOCKHEAD

会期(前期):2021年10月7日(木)~17日(日)
第1会場:gallery rougheryet
所在地:沖縄県沖縄市中央4-1-3 2F(Google Map
営業時間:11:00-18:00
休廊日:10月11日(月)休
展示構成:1つのブロックを削ることで多様な形状を展開する「A PIECE OF CONCRETE BLOCK」は、これまで大規模な彫刻作品を展開してきた能勢氏が、いつか取り組みたいと思考を重ねてきたシリーズ。30点の作品と、架台、そして架台のためのスケッチ群があわせて展示される。

能勢孝二郎 彫刻作品

能勢孝二郎〈PEDESTAL〉 展示会場:gallery rougheryet(撮影:岡本尚文)

能勢孝二郎 彫刻作品

能勢孝二郎〈CARVED WORDS〉 展示会場:RENEMIA(撮影:岡本尚文)

会期(後期):2021年11月3日(水)~14日(日)
第2会場:RENEMIA
所在地:沖縄県那覇市牧志2-7-15(Google Map
営業時間:11:00-16:00
休廊日:11月8日(月)
展示構成:ブロックから文字を削り出すシリーズ「CARVED WORDS」は、規則的な形状のブロックを素材とすればこそ生まれるリズムが特徴と言える作品。20点の新作が架台と共に展示される。

能勢孝二郎 彫刻作品

能勢孝二郎〈EMBOSS〉 展示会場:Luft shop(撮影:岡本尚文)

第3会場:Luft shop
所在地:沖縄県那覇市壺屋1-7-16 #103(Google Map
営業時間:13:00-18:00
休廊日:11月8日(月)
展示構成:「CARVED WORDS」の上に紙を置き、その質感を写しとる作品シリーズ「EMBOSS」が、「CARVED WORDS」の立体作品と共に展示。会場の壁面には、能勢氏の作業風景の映像が投影される。

能勢孝二郎氏 ポートレイト

制作中の能勢孝二郎氏(撮影:座喜味優)

企画:Luft / 真喜志奈美、桶田千夏子
作品集製作:RENEMIA Inc. / 金城博之、桃原天
写真:life goes on Inc. / 岡本尚文、terrificz / 座喜味優
Web製作:NOIPLUS / 砂川和也、崎谷果梨
動画製作:M・PLANT / 新田雅一

能勢孝二郎 彫刻作品

撮影:岡本尚文

「NOSÉ KOJIRO BLOCKHEAD」展 特設Webサイト
https://nosekojiro.com

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