［Interview］建築施工管理者を募集

北海道にある総合建設会社、紺野建設が施工管理者を募集しています。協力会社の設計事務所が設計する住宅の施工のほか、最近では道内で進んでいるサポーズデザインオフィス・谷尻 誠氏、吉田 愛氏のプロジェクトも手掛けています。

十勝、札幌を中心に着工数を増やし続ける同社のなかで、「実は設計者よりも、建物を建てているという実感を一番もてる」という同社の施工管理者について話をうかがいました。

北海道でサポーズデザインオフィスのプロジェクトも手掛ける紺野建設

紺野建設は寺院の建築や修復で腕を磨いた大工だった現会長の父・紺野芳夫氏が1957年に創業。約30年後、2代目（現会長）・宏氏が社長となり、住宅建築、管工事や浄化槽工事、除雪や除草まで幅広く手がけて徐々に会社を大きくしていきました。10数年前、現在ほど断熱の概念も技術も普及していなかったころから高断熱に取り組みました。

紺野 宏氏（紺野建設 取締役会長）

やがて北海道中に断熱工事が浸透し、多くの建設会社や工務店でも取り組むようになったことなどから、紺野建設では性能面だけでなく、デザイン面に力を入れていきます。

「性能のよい住宅をつくる技術や土台は十分にある。さらに会社を成長させるにはデザインが重要だと気づいたのです。しかし、私は土木の勉強をして就職したあと、実家（紺野建設）に戻ってきたので、デザインのことはほとんど分かりませんでした。そのため自分は施工管理技士になろう、設計は外部の設計者にお願いしよう、と考えました」（会長）

10数組の外部設計事務所とチームを組んで紺野建設が施工する業態が定着し、徐々に売り上げも上がってきたといいます。

札幌市に建てたモデルハウス〈円山西町の望楼〉（Photo: 永井博史）

3年前に現社長である3代目の将氏に交代し、十勝・帯広だけでなく札幌でも事業を広げるべくモデルハウスと自邸を建てるため、協力会社として自身が社長となる設計事務所・Design du Koh（デザイン・ド・コウ）を設立。現在、大半の仕事がインハウスの設計部門ともいえるDesign du Kohが設計しています。このモデルハウスに加え、SNSやホームページで積極的に発信することで、次第に認知されるようになりました。

紺野 将氏（紺野建設 / Design du Koh 代表取締役社長）

「父（会長）が力を入れ始めたデザイン部門を、さらにギアを上げて強化するため札幌に構えた設計事務所（前出のDesign du Koh）と紺野建設のタッグが認知されてきたこと、モデルハウスや実例を見たお客様が増えたことなどから、依頼も増えてきました。引き続き外部の建築家との仕事も行っているため、進行しているプロジェクトも多くなり、今回メンバーを増やしたいと思っています。募集したいポジションは施工管理者です」（社長）

図面の線に現れないディテールまで仕上げる施工管理者

多くの建設会社や工務店では、施主が設計者と打ち合わせ、さらに設計者は施工者と打ち合わせを行い、施工者がそれぞれ職人に伝えるといった一方向の流れが主流です。紺野社長は「施工管理者は間に挟まれ、建築を楽しいと思えなくなることもある。この構図を変えたいと考えています」と話します。

紺野建設の施工管理者は、施主と設計者の打ち合わせのテーブルに最初から同席しています。それは施工管理者のためだけでなく、施主にも大きなメリットとなるそうです。

「施主と設計者だけの打ち合わせでは、施主の要望がどのように形になるか、または実現が難しいか、予算がどれくらい増えるのかといった疑問にすぐに答えが出せないこともあります。施工管理者がその場にいることで、差額変更分やスケジュールのアドバイスができるし、難しい場合も代わりの材料や製作の仕方を提案して、実現に近づけることができます。現場もスムーズに進むことで、結果的に工事費や経費を抑えられることは施主にもメリットになるんです」（社長）

〈河畔林にたたずむ家〉Photo：永井博史

「前職のゼネコンで現場管理を担当していたころ、図面通りに確実に建てることだけ求められていましたし、紺野建設に入社するまではデザインにあまり興味はありませんでした。（紺野建設で）施工管理をするようになり、デザイナーの設計図を多く見ていくなかで、形状やその理由、色づかいの意味を読み取ることができるようになってきたと思います」（専務）

〈一枚屋根の森のすみか〉Photo：永井博史

ただ渡された図面で建物づくりをしていくだけではない、手描きスケッチの段階から打ち合わせに同席して、コストや品質のためにはどんどん設計者に意見を出す。紺野建設では「施工管理者が一番クリエイティブな仕事」（社長）なのです。

「設計者の立場から言うと、紺野建設の施工管理者は設計リテラシーが高いというか、セオリーをちゃんと押さえて、あれこれ指示を出さなかった個所でも図面の線に現れないディテールまで仕上げてくれるので、施主の満足度も高いんです」（Design du Koh）

施主と設計者と、よりよい建物をつくるために。

紺野 基氏（紺野建設 取締役専務・左）と斉藤公平氏（Design du Koh 代表取締役副社長・右）

紺野建設の施工管理者は図面を描いたりデザインすることはありませんが、施主との距離も近く、設計者にも提案するため、設計者よりも建物をつくっている感覚を強く感じられるといいます。

「紺野建設では大手ゼネコンや工務店、建設会社から転職してきた人が多く活躍しています。私も前の会社では経済性ばかり求められていましたが、ここで施工管理の仕事をして、あらためて図面から建ち上がる建築の楽しさを知れたと思っています」（専務）

〈農家の変形切妻〉Photo：安田琢朗

「多くの現場ではいかに楽に、安く、問題なく建てるかが求められます。立場や予算ばかり考えて、見え方なんて気にしなくていいのかというとそうではありません。本来、施主も設計者も施工者も、いい建物をつくりたいという思いは同じはずです。その思いでつながり、それを後押しできる会社でいたいんです。

住宅の依頼も本州の建築家が道内で手掛けるプロジェクトも増えてきています。施工管理の経験は問いません。とにかくいい建物をつくりたい、将来独立するための力を付けたい、じっくり1軒1軒に取り組みたいという方のチャレンジをお待ちしています」（社長）

左奥より、斉藤公平氏、紺野 基氏、紺野 巧氏（紺野建設）、右奥より紺野 宏氏、山本潤樹氏（Design du Koh 建築士）、紺野 将氏

インタビュー：2024年11月13日 紺野建設 札幌支店にて
トップ画像：〈森の居〉Photo：永井博史
Photographer：Shun Fukuda（人物）