「ここちよく、生きよう。」
そんなコンセプトを掲げる企業が、「街と暮らしのつくり手」を募集している。
福岡市博多区に本社を置くLANDICグループ。ここちよい暮らしを実現するためのプランニングやコンセプト開発を軸に、マンション、ホテル&レジデンス、ライフデザインといった各事業を幅広く進めている同社では、「ここちよく働けるからこそ、ここちよい街がつくれる」として、街に、そして社員に「well-being」を実現させようとしている。
「数字」が特に重要視される業界の中で、「豊かさ」や「ここちよさ」といった本質的に数値化できない要素を追求する同社の姿勢は、従来の価値基準では測れない創造性を秘めている。新たな価値基準を置き、まだ誰も見たことのない地平に、街や暮らしをつくる——。
同社が実現しようとしている環境は、顧客だけではなく、共に働く社員にとってもクリエイティビティを発揮できる環境だといえよう。
同社の目指すwell-beingな街づくりと、共に働く人材に寄せる思いを取材した。
「単にコンクリートの箱を売るのではなく、ここちよい場所や時間をプロデュースすること、そして街を元気に、人を笑顔にすること」
福岡市で1993年に創業したLANDICにとって、企業のミッションとして掲げるこの言葉は“夢物語”や“絵空事”ではない。実現に向けて、まさに今歩みを進めている具体的な目標だ。
ファミリー向け分譲マンションの販売事業からスタートした同社は、中古マンションのリフォーム販売を行う株式会社LANDICリアルティ、賃貸マンションやオフィス物件を運用する株式会社LANDICレジデンシャル、賃貸物件の管理業務を担う株式会社LANDICソリューション、ホテル事業を展開する株式会社LANDICホテル&リゾートといったグループ各社からなる。2017年には現在の株式会社LANDICホールディングスを設立して各事業会社を統合・包括し、グループ全体でクリエイティブな企業を目指す体制を築いた。
大手を含めさまざまなデベロッパーが進出する福岡の不動産業界の中でも、同社を際立たせているのは、「街づくり」にかけるその思いだろう。幅広く展開される同社のさまざまな事業は、そのどれもが、都市と自然が比較的近い距離にある福岡の街において「自然との暮らし」「well-being」という同じ“ゴール”を見据えている。
居住用・投資用合計で70棟を超える物件を手掛け、年間約400戸を供給するなど、同社の事業の中核を成す「マンション事業」は、そのコンセプトに「都市に自然と暮らすコト。」を掲げる。
マンションデザインや共用部には自然の豊かさをふんだんに取り込み、自然の情景を日常的な「体験価値」として提案する。この場所での暮らしそのものが「特別な体験」となる――。LANDICはそれを「新しい暮らしかた」として打ち出す。
同社が手掛けるさまざまなマンションの中でも、特に人気を集めているのが〈GARALOシリーズ〉。居住空間の「高さ」を活用し、上部と下部、2層のスペースを確保することで、同じ空間内で別々の使い方を可能にしている。
居住空間を壁で仕切ることによってゾーニングする平面的な「ヨコ」の視点から、高さによってゾーニングする「タテ」の発想から生まれたデザイン。上部のロフト部はワークスペースや寝室、キッズスペースとして、下部のガレージ部分はストレージやパントリーとしてなど、暮らしかたに合わせた使い方が可能になる。アイディア次第で「新しい暮らしかた」を創造することができるとあって、人気を博している。
また、日本ハムの新球場「エスコンフィールド北海道」(北広島市)の開発などを手掛けている「株式会社日本エスコン」をJV(ジョイントベンチャー)パートナーに迎えて進めている大型プロジェクトが、〈LeJIAS大橋〉だ。
福岡のおおらかさを象徴するように市内をゆったりと流れる那珂川に面し、水と緑を楽しめるこのマンションは、「豊かさ」にフォーカスする。本質的には、「豊かさ」は貨幣価値や平米数、アクセスの良さといった数字に置き換えることはできないはず。そうした考えに基づいて、機能的な価値だけではなく、ここで過ごすことで体験する時間や風景が、暮らす人の心と身体に働きかける、そんな場所を目指している。
同社では、これらをコンセプトとして掲げるだけでなく、具体的なアイディアやデザイン研究につなげるため、九州大学都市研究センター長・馬奈木俊介主幹教授とコンソーシアムを設立。人々がここちよさや豊かさを感じる「見えないものの価値」の「見える化」などに学術的にも取り組んでいる。
グループCEOでLANDIC創設者の中山朋幸・代表取締役社長は、「従来のように機能や価値、立地の良さなどのスペックだけで『いかがですか』と提案するのではなく、私たちが提案する“背景”に共感していただけるかに重点を置いています。それがひいては“LANDICを選んでいただく意味”につながるはず」と語る。
コンクリートの箱ではなく、「well-being」という価値基準でコンパクトシティ福岡ならではの暮らしかたを提案する。同社のマンション事業の特徴は、そうした点にあるといえるだろう。
福岡市の西側、唐津湾に面し、有史以前には「伊都国」として栄えたとされる糸島市。深い歴史と自然を有するこの地は、いま全国的にも大きな注目を集める土地の1つだ。人口25万人以下の街を対象にした英情報誌の調査では、「自然と都市生活の両方にアクセスでき、生活の質に優れている」「クリエイティブマインドを惹きつけ、面白いビジネスが生まれている」といった点に加え、「市外から入って来た人に寛容で馴染みやすい」といった要素が評価され、「輝く小さな街」として世界第3位にランクインしている。
LANDICはこの土地のポテンシャルをさらに活用すべく、現在プロジェクトを進めている。それが、「自然と建築の調和」などをテーマにしたラグジュアリーリゾート「STANCE 糸島 HOTEL & SPA (仮称)」のプロジェクトだ。
海と緑を目の前に、宿泊、レストラン、スパ、サウナなど、多彩な体験を提供。自然のここちよさに抱かれて心と身体を解放するランドマークを目指すとしている。
糸島市は福岡市に隣接し、福岡空港までのアクセスも良好なため、リモートワークの推進によって浸透する「デュアルライフ」のスタイルにも合致する。しかし中山氏は「パソコンのモニタ上ですべてが売買されるデジタルビジネス時代は、一方で自然環境を愛し『人間』を慈しむ時代でもあります。だからこそ私たちは『人間』の顔が見える仕事を、あえてアナログな仕事をしていきたい」(同社HPより)と語る。
糸島だからこそ生まれ得る「つながり」。心身のリフレッシュだけではなく、「この場所がつながりを生み、そしてそれが新たな街づくりにつながっていく。そんな世界観を輸出したい」。
人間は社会性のある生き物だ。誰もが人と人とのつながりを求めている。中山氏のこの言葉は、この事業が単にハードだけでなくそこで生まれる人と人とのつながり――つまりは人間の暮らしの豊かさに必要不可欠な要素――という極めてアナログなソフト面にフォーカスしていることを物語っている。
博多の中でも天神エリアの奥座敷と呼ばれる「西中洲」で進められているプロジェクト〈STANCE HOTEL NISHINAKASU〉もその視点は変わらない。単なるホテルとはカテゴライズできない、タイムシェアオフィス機能やサウナ・スパ、分譲レジデンス棟など、目的やシーンに応じた可変的な「ここちよさ」を提案している。
LANDICを特徴づける、最も大きな事業は「ライフデザイン提案事業」だろう。
「L+(エルプラス)」と名付けられたこのプロジェクトは、暮らしについて考え、住まいについて話す「RETHINK LIFE」プロジェクトの一環としてスタートしたもの。
福岡市南区にオープンした〈L+ HIRAO〉は、「暮らしを体験する想像空間。」をテーマに、空間・食・暮らしにまつわるモノや情報との出会いを通して、暮らしをもっとここちよくするための気づきや、刺激、 ちょっとした感動を与える空間を提供している。
3階建てのショールーム兼ショップ・カフェは、建築家・谷尻 誠氏と吉田 愛氏の率いるSUPPOSE DESIGN OFFICEの設計によるもの。
「福岡の都心、周辺は雑然としていて
目の前の交差点はいつも込み合っている
そんな場所に緑が生い茂り
静かで心地よい風を感じる都市の中の
森をつくった」
SUPPOSE DESIGN OFFICEはこの場所をそう表現する。テラスやカフェ、シェアオフィス、アートエリア、購入もできるボタニカルエリアなどをゆったりと回遊しながら、読書をしたり、お茶や食事を楽しんだり、家族や友だちとの思い思いの時間を「暮らすように」過ごすことができる。
これまでさまざまなプロジェクトで手を携えてきたLANDICとSUPPOSE DESIGN OFFICE。吉田氏はかつて、LANDICが手掛けた「デュレジア薬院スタンス」の空間設計についてのインタビューで「人間は何もない、ただ広がりのある空間にいるよりも、何かに包まれることで不思議な安堵感を感じることができる」と語っている。
人に安堵感を与える空間設計の基本方針は、この「L+(エルプラス)」でも引き継がれているといえるだろう。空間の広がりを感じさせつつ、人や緑が空間に立体感を与える。機能的でありつつ、人や自然の存在を身近に感じさせ、訪れた人に癒やしや「豊かさ」を感じさせる場づくりは、SUPPOSE DESIGN OFFICEが手掛けてきた多くの建築デザインに通底している。
マンション事業、ホテル&レジデンス事業と同様に、ここでも人の暮らしに本質的に必要なものは何か、「豊かさとは何か」をLANDICはSUPPOSE DESIGN OFFICEとの協業を通して問いかけている。
事業が多岐に渡るのは、LANDICが業界の慣例や習慣に縛られず、常に新たなビジョンを提示しクリエイティブであろうとし続けてきたことの結果だろう。
「こうした私たちの考え方に共感してくれるような、デザインが好きだったり建築が好きだったり、未来志向の人たちと一緒に働きたい」
代表の中山氏は、今同社が求める人材についてこう話す。「例えば『淡路島で暮らしているんだけど、福岡の街の開発を一緒にやってみたい』『副業になるけど参加してみたい』といったかたちでもいいと思う。働き方はこれから多様化していくはずだし、多様化する中でどのような暮らし方がそれぞれにとって最適なのかも含めて、一緒に考えてくれる人を求めています」
デザインセンスの良さや知恵を貸してもらいたい。中山氏はそう言葉を継ぐ。オンラインであっても、そこでの生まれたつながりや多様な働き方を提案していけるようになれば福岡を、ひいては日本を新たにデザインし直せるのではないか。LANDICはそう考える。
「自然体で暮らしを愉しむことで、人生はもっと豊かになる」
そう信じるLANDICは、彼らが目指すwell-beingな街と暮らしの「つくり手」を、今、求めている。