日本板硝子(以下:NSG)は、英国のCohda Design Limited社との共同で、各種電子機器にワイヤレスで送電するガラスアプリケーションを製作したと発表しました(2021年10月25日)。
このアプリケーションは、NSG社の「NSG TEC™透明導電膜付きガラス」[*1]と、Cohdaのパワータップ P-Tap®[*2]ワイヤレスパワー技術を組み合わせることにより、ワイヤーの役割を果たすガラスの透明導電膜を通じて、ワイヤレスで電気やデータをあらゆる電子機器に送ることができるというもの。
送電の仕組みは、複数の透明導電付きガラスで中間膜を挟み込み、正(プラス)と負(マイナス)の電荷に分かれた2つの電流層をつくり、外部からの電流を流しています。2層をつなぐタップ(接続点)をガラスの表面に配置することにより、タップに置かれた電子機器に電気を供給することができます。
#PilkingtonTV YouTubeチャンネル「Invisible power delivery through glass」(2021/10/12)
NSGによれば、両社のコラボレーションにより、設計士、建築家、技術者などからのそれぞれのニーズに応じて、この仕組みを使った多様なアプリケーションの製作も可能となっています。
初期段階の展開イメージとしては、携帯電話やカメラなどの電子機器をワイヤレスで充電するディスプレイスタンドなど。自動車の分野では、フロントガラスに組み込まれたヘッドアップディスプレイのスクリーンに送電するアプリケーションなどが考えられています。
将来の用途としての可能性は、美術館などのギャラリー空間において、ワイヤレスで埋め込まれたLED照明が、ガラス製の陳列棚を美しく照らすこともできるようになるでしょう。携帯電話の充電ももちろん可能です。
未来のキッチンイメージとして、透明なガラスカウンター上に電力を供給すれば、鍋や湯沸かしを使った料理や、トースターや電子レンジなどの調理家電もあわせて使用できます。
NSG TEC™透明導電膜付きガラスは、高透過率、ガラス表面のコーティング膜の高耐久性や熱処理が可能であるといった特長から、P-Tap技術とのマッチングにより、幅広いデザインや用途の課題に対応することができるとのことです。(en)
*1.NSG TEC™ 透明導電膜付きガラス:
英語表記:Transparent Electrically Conductive glass(Transparent=透明な、Electrically=電気を、Conductive=通す、glass=ガラス)
ガラスの製造工程で、熱分解を活用し、ガラス表面上に透明導電膜(TCO)を成膜した製品。成膜技術は、オンラインCVDと呼び、その膜の耐久性は非常に高く、さまざまな用途に使用できる。
https://glass-wonderland.jp/product/nsgtec/
*2.P-Tap®:
Power Tap®の略語。導電膜付きガラスと非導電膜付きガラスの間の透明なラミネーション。この構造により、ラミネーションの内の個々のレイヤー間で電気やデータが転送される。事前に開口部を加工してコーティング内の正極と負極を持つタップ(接続点)をつくり、そのタップに接続された電子機器に送電することが可能。これらの接続電子機器は、透明なガラスパネル内に自由に浮かんでいるように見え、電源接続部は見えない。
https://www.cohda.com/projects/power-tap/
Photography: Cohda Design Limited
Cohda Design Limited
https://www.cohda.com/
日本板硝子プレスリリース
https://www.nsg.co.jp/ja-jp/media/ir-updates/announcements-2021/nsg-group-and-cohda-collaborate