LIXIL独自の技術「FORCE CARBON」を駆使して生まれた製品は、どのような背景を経て誕生したのか—–。開口部のハイエンドブランド「NODEA」のブランドディレクターでもある、常務役員本部長 / LIXIL Housing Technology 商品・デザイン本部 デザインセンター 羽賀 豊はこう語ります。
「私は以前から、建材業界の課題の1つは、進化のスピードが遅いことではないかと感じていました。やはり、新たな技術や素材の開発は簡単ではありません。
『FORCE CARBON』でCFRP(炭素繊維強化樹脂)のさまざまな特性を生かすことで、建材の可能性をさらに広げていきたい。そうすることで住まいの自由度が上がり、将来的にはまるで着る服を気軽に選ぶように、ユーザーにより多くの選択肢を提供できるようになるのではないかと考えています」(羽賀 豊)
「FORCE CARBON」は、炭素繊維強化樹脂(CFRP)を建材に適用・展開するため、これまで研究開発を進めるなかで蓄積されてきたLIXILがもつ技術・ノウハウの総称です。
「FORCE CARBON」のCARBONとは、カーボンファイバー(炭素繊維)に樹脂を染み込ませ成形加工した複合材料である「CFRP(炭素繊維強化樹脂)」を指します。CFRPの最大の特長は「軽くて、強い」という点であり、その特長を生かしてさまざまな製品に使用されています。
アルミと比較すると重さは約1/2、比強度は10~20倍、比剛性は3~10倍であり、そのほかにも振動減衰性、耐腐食性、そして耐薬品性に優れるといった特長を有します。
LIXILはこれまで画一的であった建材に対し、既成概念を超え新たな価値の創造へ向けたチャレンジを始めました。そのなかで、軽くて強く、自由な造形が可能なCFRPに着目し、建材に適用・展開するため研究開発を進めてきました。
「FORCE CARBON」を構成する主な技術要素には、CFRPを効率的に使用するための「構造解析技術」、そしてアルミなどの異素材と組み合わせる「異素材複合化技術」があります。
CFRPは高強度、高断熱、高耐久など優れた特長を有していますが、実は建材としてCFRP単独で使用することは困難です。そこで、LIXIL独自の「構造解析技術」を活用し、アルミやガラスといった異素材と組み合わせることにより、CFRPの効果を最大限に発現させることを可能にしました。
単一素材でなく、異なる複数の素材を組み合わせる場合、カーボンの特長を最大限に生かすには接着が適した接合方法です。しかし、異素材同士の接着においては各素材の熱膨張率が異なるため、温度変化により接着剤が剥がれる恐れがあります。そこで、LIXILでは温度変化だけでなく、屋外環境においても高い耐久性を有し、カーボンの効果を最大限に発現させる接着技術である「異素材複合化技術」を開発、商品化につなげています。
LIXILでは、NODEA・パノラマウインドウ「SEAMLESS」をはじめ、CFRPを使用することで柱がなくても自立し、それによって光、影、気配といったニュアンスを演出する「パーティションConcept F」、CFRPとアルミの複合材スリーブを使用したフレームを採用し、長くノイズレスなデザインを実現した「プラスG ロングアーチ」など、従来の材料では実現できなかった高い性能とデザイン性を兼ね備えた製品を提供しています。
「技術力のない企業からは、いいデザインの商品が生まれることはありません。デザイナーがどれだけ素晴らしいデザインを思いついても、それを商品として世に出せる技術がなければ絵に描いた餅と同じです。優れた技術とデザイン性の2つが揃うことで、初めてイノベーションが実現できる。私はそう信じています。
LIXILはこれからも、『FORCE CARBON』という技術とデザイナーの発想力を高次元で融合させていくことで、ユーザーの想像を超える商品を生み出し続けていきたいと考えています」(羽賀 豊)
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