施設DATA
- 設計
KIRI ARCHITECTS- 主用途
屋外ステージ- エリア
エンパワーリングゾーン
〈ポップアップステージ(東内)〉の見どころポイント!
共に過ごす時間を包む、軽やかな雲の建築
〈ポップアップステージ(東内)〉では、舞台と観客席を包み込むのは建築素材だけではなく、人口霧による雲。水という素材を用い、風の流れを読み、期間中だけその姿を現しやがて消えゆくこの雲は、さまざまな分断を越えて人々が共に過ごす風景を生み出します。

Photo: Ikuya Sasaki
夢洲駅から東ゲートをくぐり、木造の大屋根リングを抜けるとすぐに姿を現します。開放的な「光の広場」の中央に位置し、世界各国の音楽や踊り、日本の文化を世界に発信する演目などが催される屋外ステージです。本プロジェクトでは、大勢の人々が集うステージと観客席の頭上を覆うように、人工の霧による一塊の雲を浮かべることを試みました。
雲はそのかたちを絶えず変化させながらも、世界中に存在する身近な存在です。会期中となる夏場の日差しを柔らかく遮り、ステージ周辺に涼しく快適な場をつくります。また、半年間だけの仮設建築であることから、現地で手に入る「水」という素材に着目し、会期中だけ存在感を現し、会期が終われば痕跡を残さず消えていく〈現象としての仮設性〉を目指せるのではないかと考えました。

Photo: Ikuya Sasaki

Photo: Ikuya Sasaki
敷地は臨海部で風が強く、噴射した霧はすぐに流されて消えてしまいます。そこで、防風メッシュをボウル状に垂らすことで、上空に風の流れの淀みをつくり、雲を舞台の上空に滞留させることを考えました。このボウル状の器によって、横風に対しては低風速の領域を囲い、ボウルに吹き込む風は大らかな曲面に沿って旋回しまとまりのある雲を形づくります。
また、風の傾向を掴むため、夢洲を観測地点とした風速・風向のデータを分析し、リング上の構造体に這わせたノズルのピッチを調整しています。もっとも頻度の高い定常風の南西側を密に配置したり、機能的にステージ上を多めに配置したりするなど、細かな調整を重ねていきました。自然を相手にすべてを制御することはできませんが、半分くらいは細部に至るまでしっかりと準備をし、半分くらいは自然に身を委ねるというちょうど良いバランスをつくれたのではないかと思います。

Photo: KIRI ARCHITECTS

Photo: Ikuya Sasaki
1970年の大阪万博では、芸術家・中谷芙二子氏がペプシ館の表面を人工霧で覆い、公害によって失われた「水と人間の直截的な関係性」を取り戻そうと試みました。それから半世紀を経た今日、世界のあちこちでさまざまな分断が生じている現状に対して、地上から空へと雲を持ち上げることに挑戦しました。この雲の下でたくさんの人々が時間と空間を共有し、遠く離れた世界の出来事や人々とのつながりを実感する瞬間が数多く生まれることを期待しています。

Photo: Ikuya Sasaki

平面図。Image: KIRI ARCHITECTS

断面図。Image: KIRI ARCHITECTS
建築DATA
構造:鉄骨造、一部木造
階数:地上1階
最高高さ:8,500mm
軒高:7,500mm
敷地面積:340.99m²
延床面積:118.69m²
延床面積:118.69m²設計:KIRI ARCHITECTS
担当:桐 圭佑、野間海成
構造設計:DN-Archi
設備設計:環境エンジニアリング
外構アドバイス:グラック
証明アドバイス:遠藤照明
協賛:大東建託
施工:長村組
鉄骨:アムロン
防風メッシュ膜:太陽工業
ミストノズル:いけうち
電気設備:タキバ電機
ウッドデッキ:木部工務店
テキスト提供:KIRI ARCHITECTS
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