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[大阪・関西万博]海外パビリオン紹介_オーストラリア

バカンがデザインした〈オーストラリアパビリオン〉

[大阪・関西万博]海外パビリオン紹介

CULTURE

パビリオンDATA

  • デザイン
    バカン(Buchan)
  • 設計
    日建設計
  • エリア
    コネクティングゾーン
  • テーマ
    Chasing the Sun ― 太陽の大地へ


オーストラリアパビリオンの見どころポイント!

    • ユーカリの一種、ガムナッツを抽象化したデザイン
    • 2020年東京オリンピック・パラリンピックの競技場資材を再利用
    • 廃棄される麦わらを使用したDurra Panelを内装に採用

2020年東京オリンピックの資材を再利用した膜構造のパビリオン

オーストラリアパビリオン

Photo: The Australia Pavilion at World Expo 2025 Osaka, designed by Buchan and Nikken Sekkei

デザインコンセプト

世界的な建築事務所であるバカンが設計した2025年大阪・関西万博〈オーストラリアパビリオン〉は、「Chasing the Sun ― 太陽の大地へ」をテーマに、オーストラリアを象徴するユーカリの花からインスピレーションを得ています。オーストラリア全土に自生するユーカリは、そのさまざまな形や色でオーストラリアの人々の多様性と活気を象徴しています。パビリオンのカラフルにライトアップされた外観は、花を咲かせるユーカリの実をモチーフとしており、新しい生命と次世代の無限の可能性を象徴する力強いシンボルとなっています。これは、万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」を反映したものです。

内部には、オーストラリアの先住民の文化とつながり、その土地の風景や音、雰囲気を体感できるブッシュウォークが設けられています。このデザインは、オーストラリアの独特な自然美を際立たせ、オーストラリアの編み出すさまざまな物語、革新、創造性を共有するためのキャンバスとなっています。

オーストラリアパビリオン

Photo: The Australia Pavilion at World Expo 2025 Osaka, designed by Buchan and Nikken Sekkei

建築デザインコンセプト

デザインの概要は、万博のメインテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」への回答として、「Chasing the Sun ― 太陽の大地へ」という物語のテーマを中心に展開されました。デザインは、新旧のオーストラリアの国民と文化の共通性を表現する必要がありました。
当初からバカンの設計チームは、先住民文化アドバイザーのKarrdaと協力し、オーストラリアパビリオンに「カントリー(先住民の大地)」を組み込み、先住民の視点、経験、関心を強調しました。コンセプト的には、オーストラリアのいたるところに生育するユーカリの多様な形態からインスピレーションを得たデザインで、オーストラリアの人々の多様性とレジリエンス(回復力)を象徴しています。

パビリオンの形状は、ユーカリの一種であるガムナッツの花が咲き誇る様子を抽象化したものです。これは、新しい生命と次世代の無限の可能性を象徴する力強いシンボルです。このダイナミックなイメージは、成長と変容を象徴しています。ガムナッツの種は可能性の象徴であり、その花は現代のオーストラリア社会の活気、楽観性、温かさ、そして将来への希望を象徴しています。また、万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」に応えるものとして、明日の課題に自信を持って立ち向かう次世代の力を象徴しています。

パビリオンの大胆で印象的なアーチ(弧)は、両手を広げて人々を歓迎し、保護し、抱擁するようなジェスチャーを表しており、一体感、インスピレーション、つながりといった感覚を生み出します。それは、新しいアイデア、コラボレーション、進歩に対する受容性を表現しています。また、オーストラリアの温かさと楽観性を象徴しています。

このデザインには、柔らかくて耐久性のある素材である張力膜が不可欠です。このファブリックの半透明性により、1日の時間の経過とともに自然光が環境と来場者の体験を形づくることを可能にしています。オーストラリアのユニークな自然美を展示するオーストラリアパビリオンは、この国の物語、革新、創造性を共有するためのキャンバスとなっています。

オーストラリアパビリオン

Photo: TEAM TECTURE MAG

先住民との関わり

先住民文化のアドバイザーであるKarrdaのバーバラ・ビンダー氏とファーリー・ガーレット氏は、2025年大阪・関西万博における先住民文化の翻訳、表現、代弁方法が、オーストラリア全土のすべての社会を包括するものであることを確認したいと考えました。先住民文化は均質ではなく、また、すべての物語が彼ら自身の物語であるわけではないことを尊重したものです。

ビンダー氏とその他のKarrdaチームメンバーは、オーストラリア全土の先住民の文化に共通する「カントリー(大地)への思いやり」の原則をデザインに組み込むため、バカンと緊密に連携しました。彼らは、時空を超えて先住民の間で深い知識を共有するカントリーを横断するソングラインの構造を基に、概念的な枠組みを構築しました。この流れは、進化し続ける生きた文化として、建築と展示設計に組み込まれています。

オーストラリアパビリオン

Photo: The Australia Pavilion at World Expo 2025 Osaka, designed by Buchan and Nikken Sekkei

展示設計

オーストラリアパビリオンの内部では、ブッシュウォークをイメージした展示設計により、カントリーを歩く体験を再現しています。来場者は、五感を刺激する没入型かつインタラクティブな旅へと誘われます。この体験は、大地、空、海のカントリーの「太陽を追いかける」もので、大地を横断し、何万年もの間先住民の間で共有されてきた知識であるソングラインの構造と流れに基づいています。現実と超現実の間を移動し、昼から夜へと移り変わるこの旅は、世界最古の今も続いている生活文化を称えるものです。

来場者はオーストラリアの社会や功績について学びながら、その物理的な美しさに触れ、過去、現在、未来を認識します。オーストラリアは、環境とのつながりと環境への配慮が、社会の繁栄の中心にある未来を思い描いています。パビリオンは、来場者に古代の伝統と現代の革新がどのように融合し、次世代のために地球を守ることができるかを考えさせます。来場者を考えさせ、インスピレーションを与える環境は、内省とアイデアの交換を促します。

オーストラリアパビリオン

Photo: The Australia Pavilion at World Expo 2025 Osaka, designed by Buchan and Nikken Sekkei

文化ゾーンのプログラム

〈オーストラリアパビリオン〉の大きな庇は、ガムナッツから生命が芽吹くように、来場者が集う緑あふれる前庭に面したステージを覆い、活気あふれる文化ゾーンを創り出します。カフェではオーストラリアの飲食物を提供し、芸能のパフォーマンスによって現代のオーストラリアを世界に紹介し、この国のユニークな文化と個性を表現します。

この文化ゾーンは、人々のつながり、交わり、文化交流を促進するよう設計されています。 オープンで親しみやすい集いの場として、ランドスケープデザインの中にヤーニング・サークル(注:先住民が知識を共有し、関係を築き、互いに学び合うための会話のプロセス、またはその場所)を設け、オーストラリアのおもてなしの心で人々を迎えます。音楽、ダンス、舞台芸能、映像コンテンツを盛り込んだプログラムでは、先住民の声を伝え、多様性を祝い、オーストラリアと日本の永続する友情を紹介します。

オーストラリアパビリオン

Photo: The Australia Pavilion at World Expo 2025 Osaka, designed by Buchan and Nikken Sekkei

招待客の体験

オーストラリアパビリオンのパブリックスペースの裏手には、特別イベントゾーンが設けられています。 3つの接遇スペースは、昼夜を問わず運営され、小規模な会議から大規模な催しやプレゼンテーションまで、さまざまなイベントに対応できます。これらのスペースは、オーストラリアの豊かな自然環境と文化の多様性の本質を表現しています。「Chasing the Sun ― 太陽の大地へ」という全体的なテーマに沿って、屋外と自然光とのつながりが優先され、窓から直接、あるいは日中の変化する影を捉える張力膜のシェルを通して、自然光が取り入れられています。

使用されている色彩と素材は、森林の緑から海の青、砂漠の赤まで、オーストラリアの多様な景観を反映しています。 サステナビリティ(持続可能性)に重点を置き、オーストラリアのデザイン、アート、工芸品が随所に取り入れられています。 ホワイエには、先住民アーティストによる吊り物の装飾品や彫刻作品が飾られ、オーストラリアのデザイナーやメーカーによる照明器具、カーペット、家具が、この国の創造性と革新性をアピールしています。魅力的で五感を刺激する空間で提供される、温かくて寛大なもてなしは、訪れた人々の心にいつまでも残る、思い出深いユニークなオーストラリア体験を提供します。

オーストラリアパビリオン

Photo: The Australia Pavilion at World Expo 2025 Osaka, designed by Buchan and Nikken Sekkei

持続可能性

オーストラリアパビリオンの建築は、持続可能な設計と循環経済の原則、素材、調達方法に則っています。仮設建築物として、建設と運営による二酸化炭素排出量にも同等の配慮がなされています。オーストラリアパビリオンの主要構造には、再利用可能なスチール製フレームであるESグローバルの「スーパートラス・システム」が採用されています。このシステムは、2020年の東京オリンピックおよびパラリンピックでも使用されたものです。このシステムを再利用することで、二酸化炭素排出量を大幅に削減でき、輸送コストを考慮しても、現地で新たに製造する場合と比較して、ライフサイクル全体でカーボンフットプリントを約87%削減できます。

このフレームは、張力膜のシェルを支え、最小限の建築資材でコスト効率の高い持続可能な設計ソリューションを実現し、より迅速な建設と光透過による省エネを実現します。展示会場の壁と天井パネルは、オーストラリア製のDurra Panel材で、天然および再生された小麦わらからつくられています。100%リサイクル可能で生分解性のあるDurra Panelは耐火性があり、優れた音響性能と断熱性も備えています。

機械設備をレンタルしたり、付帯施設においてプレハブ構造を採用したりすることにより、廃棄物を最小限に抑えます。ランドスケープ要素もその多くがレンタルされ、植物や既存の樹木は植え替えられます。展示グリッドなどの再利用可能な資材は、将来の建築物で再配置することができます。運用面では、パビリオンの設備システムは、高効率の設備や機器を使用し、関西の気候に合わせて調整されています。

オーストラリアパビリオン

Photo: The Australia Pavilion at World Expo 2025 Osaka, designed by Buchan and Nikken Sekkei

コンピュテーショナルデザイン

コンピュテーショナルデザインは、オーストラリアパビリオンの特徴的なファサードを実現させています。その有機的で自由な形状を、洗練された方法で追求し、日本の日建設計チームとのシームレスな協働を実現しました。また、ESグローバルとのコラボレーションにより、最適なプレファブ案が生まれました。

統合されたパラメトリックモデルにより、コンセプトデザインから製作へのスムーズな移行を保証し、すべてのプロジェクト関係者間の調整が合理化されました。工事が簡素化され、設計チームのストーリーとビジョンを反映した印象的なファサードが予定通りに完成しました。

 

ファサードのグラフィック処理

ファサードに施されているグラフィックデザインは、「Chasing the Sun」のロゴを分解したもので、太陽の放射エネルギーとカンガルーの尾から着想を得ています。このグラフィックは、動き、多様性、創造性を象徴しています。この生き生きとしたグラフィックはファサードに色とエネルギーを加え、来場者を展示会場の入口や特別イベントゾーンへと導きます。また、ランドスケープ彫刻を引き立て、パビリオン全体に視覚的なつながりを生み出し、建築から販促物に至るまで、来場者の体験全体を向上させます。

オーストラリアパビリオン

Photo: The Australia Pavilion at World Expo 2025 Osaka, designed by Buchan and Nikken Sekkei

建築DATA

プロジェクト名称:EXPO2025 大阪・関西万博 オーストラリアパビリオン
クライアント:オーストラリア外務貿易省
敷地面積:3,504.11m²
建築面積:2,291.25m²(本館、展示会場入口、テラス、搬入口を含む)
総床面積:2,821.59m² 1階+2階+キャビン(本館と切り離されているカフェ)
構造:鉄骨造・一部骨組膜構造
階数:2階(建築許可による)
高さ:16.193m

設計者
リードデザインアーキテクト:バカン(Buchan)
ローカルアーキテクト、構造および設備設計:日建設計
ランドスケープアーキテクト:McGregor Coxall
先住民文化アドバイザー:Karrda Pty Ltd(Barbara Bynder、Farley Garlett)

コンサルタント
施工、展示実施設計・施工:ES Global
プロジェクトおよびコストマネジメント:Turner & Townsend
デザインマネージャー:GHD Design
先住民文化アドバイザー:Jilda Andrews

トップ写真:The Australia Pavilion at World Expo 2025 Osaka, designed by Buchan and Nikken Sekkei
テキスト・写真は〈オーストラリアパビリオン〉メディアキットより


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