東京・銀座3丁目の松屋銀座の8Fイベントスクエアにて、日本デザインコミッティー主催の企画展「Tsu-tsu-mu展 世界をやさしく繋ぐデザインの作法」が9月26日より開催されます。
同百貨店の開店100周年を記念するアニバーサリー企画の一環として行われるもので、主催は日本デザインコミッティー(会長:田川欣哉)。テーマに「包む」を掲げ、日本で古くから用いられている「包む」技法から、現代のプロダクトまで、およそ90点を展示。単なるパッケージデザインや伝統的な包装技術の紹介にとどまらず、「包む」という行為に関するさまざまな事象に潜む「包む」という概念にケアの視点を見出し、デザインの方法論として多角的に捉え直すことを試みます。
ワークショップなどの関連企画も併催されるほか、現代における新しい「包む」かたちを体現したものとして、建築家の隈 研吾氏が2007年に発表したモバイル茶室〈浮庵(ふあん)〉も展示されます。
日本デザインコミッティーとは、戦後の日本デザイン界を牽引したデザイナーや建築家、評論家らによって1953年に設立された団体です。
デザインの啓蒙を掲げ、松屋銀座を拠点に活動。優れたデザインを選定・紹介する「デザインコレクション」や、企画展を開催する「デザインギャラリー1953」の運営などを行なっています。現在のメンバーは31名(一覧)。

商品選定中の剣持 勇、丹下建造、滝口修造、岡本太郎ら日本デザインコミッティー創立メンバー(1955年撮影、写真提供:日本デザインコミッティー)

日本デザインコミッティー メンバー Photo by Yoshihiko Ueda
日本デザインコミッティー 公式ウェブサイト
https://designcommittee.jp/
同団体による企画展は、デザインの視座を中心に据えながら、メンバーが知見を持ち寄り、1956年から断続的に展開されてきました。およそ6年ぶりの開催となる本展では、グラフィックデザイナーの色部義昭氏が中心となり、「包む」という新たな視点でメンバーの作品を選出、会場構成から書籍(図録)の編集などのディレクションを担当しています。

色部義昭 (いろべ よしあき)氏 近影
本展展覧会ディレクター / アートディレクター・グラフィックデザイナー・色部デザイン研究所主宰
展覧会コンセプト
鳥類の新しい生命は、卵の殻に包まれています。手から手へわたすプレゼントは、紙で包まれています。人々の暮らしは、建築によって包まれています。そして社会は、あらゆるものを包むことで豊かになります。包むものと包まれるものの絶え間ない循環から、この世界は成り立っているのかもしれません。「包む」という行為は、過剰なものや本質的でないものと見なされることがあります。
しかし、むきだしの何かがバラバラに存在している状態は、どんな物事についても最適といえるでしょうか。
本展は、他者をケアしながら内側と外側を繋ぐ「包む」をデザインの新しいタイポロジー(類型)としてとらえます。そして、「包む」にまつわるさまざまな作品や活動をあらためて取り上げ、その可能性を紐解いていきます。
そこに世界を良い方向へ進めていくための手がかりがあるのではないか、という希望をこめて。

会場イメージ(空間デザイン:中原崇志、HIGURE 17-15cas)
本展では、卵やおにぎりといった自然物や日常の風景、日本の伝統的な礼法・折形(おりがた)から現代のプロダクト、さらには建築に至るまで、「包む」をめぐる7つのテーマ・7つの章立てのもと展示される約90点の作品・事例を通じて、その本質と新たな可能性を紐解いていきます。
第1章:包むをデザイン作法としてとらえなおす
Tsu-tsu-mu=「包む」行為にあるケアの視点を、あらたなデザイン作法として提案第2章:Tsu-tsu-muは自然生まれ
卵、バナナ、鳥の巣。自然界にあるTsu-tsu-muのお手本たち第3章:Tsu-tsu-mu、こんなところにいたのか
おにぎりや苺大福など、食のシーンの意外なところで働くTsu-tsu-muをCTスキャンや断面展示で可視化第4章:Tsu-tsu-muの思考、Tsu-tsu-mareruの形
たまごつと、Aiboのパッケージ、PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE BASICS、ECLISSE、Organic Chair、田根剛「Tane Garden House」など、パッケージ、プロダクト、家具、建築まで、デザインのなかにあるTsu-tsu-muを収集第5章:クリエイターたちのTsu-tsu-mu学
日本デザインコミッティーのメンバーでもある8人のクリエイター(深澤直人、原 研哉、小泉 誠、隈 研吾、面出 薫、佐藤 卓、柴田文江、須藤玲子)に聞く、Tsu-tsu-muの技に関するインタビュー第6章:日本生まれのTsu-tsu-muの精神
折形デザイン研究所の監修のもと、折形に込められた7つの精神を紐解く第7章:世界にTsu-tsu-muというデザイン作法を
平野啓一郎氏の寄稿小説家・平野啓一郎氏が『包むことの豊饒』を寄稿

会場イメージ(空間デザイン:中原崇志、HIGURE 17-15cas)

卵 外にはつよく、内にはやさしく(第2章展示より)

鳥の巣 その周りにあるもので編む(第2章展示より)

おにぎり おいしさは、粒と粒のあいだに(第3章展示より)

シュークリーム 手で食べられるケーキ(第3章展示より)

最中 空気の層でふたつの食感を分ける(第3章展示より)

小籠包 食べる瞬間まで熱々に蒸す(第3章展示より)

たまごつと そのまま飾れる。保管できる(第4章展示より)

ECLISSE 今日はどんな光にしましょう(第4章展示より)

Tane Garden House 記憶の集積に包まれる(第4章展示より)
Tane Garden House ATTA – Atelier Tsuyoshi Tane
Architects + Vitra
Photo by Julien Lanoo Courtesy of Vitra and ATTA

9h スリーピングポッド お手本は、洞窟です(第4章展示より)Photo by Nacása & Partners Inc.
深澤直人(SIWA A4 light)、原 研哉(歌麿 The Beauty)、平野敬子(小沢健二 “dogs” CDジャケット)、岩崎一郎(Closer)、川上元美(O-Bath F)、喜多俊之(WINK)、小泉 誠(kehai)、隈 研吾(浮庵)、黒川雅之(GOMシリーズ)、松永 真(スコッティ ウェットティシュー・スコッティ ティシュー)、三澤 遥(RB_DRAWING SCARF and RB_DRAWING BEANIE package)、三谷龍二(鞠椀)、永井一史(ヘルプマーク)、佐藤 卓(イッセイ ミヤケのショッピングバッグ)、妹島和世(うめきた公園 大屋根施設)、柴田文江(電子体温計 MC-681 けんおんくん)、須藤玲子(布の迷路)、鈴木 元(Glow)、森山 茜(BlueBricks)、山中俊治(RAMI 3Dプリンター製アスリート用義足)
本展では、「包む」の現代的な概念を体現した作品の1つとして、日本デザインコミッティーメンバーで建築家の隈 研吾氏が2007年に発表・展示したモバイル茶室〈浮庵(ふあん)〉が特別に展示されるのも見どころです(入室時間など見学に関する会場規定あり)。

隈 研吾〈浮庵〉 ©Kengo Kuma& Associates
ヘリウムガスを充填したバルーンに、世界で最も軽いとされる布「スーパーオーガンザ」をかけて空間を創り出すこの茶室は、布の仕切りがふわりと宙に浮かび、物質的な重さから解放されたミニマルな構造でありながら、布のドレープが内部の気配を柔らかく「包み」、身体が浮く感覚を生み出します。伝統的な茶室の概念を更新し、現代における新しい「包む」かたちを体現した、どこへでも持っていけるモバイル茶室です。
会期:2025年9月26日(金)~10月13日(月・祝)
開場時間:11:00-20:00(最終日は17:00閉場、入場は閉場30分前まで)
※店舗営業日・営業時間の詳細は松屋ウェブサイトを参照
会場:松屋銀座8階イベントスクエア
所在地:東京都中央区銀座3-6-1
当日入場料(税込):一般 2,000円、高校生 1,500円、小中学生 1,000円
※入場割引あり・詳細は松屋銀座本展案内ページを参照
主催:日本デザインコミッティー
企画・構成:色部義昭+日本デザインセンター 色部デザイン研究所
構想:色部義昭、土田貴宏、田川欣哉、鈴木 元
アートディレクション:色部義昭
グラフィックデザイン:本多万智、谷口美鄉
編集・テキスト:土田貴宏、長瀬香子
設計・施工:HIGURE 17-15 cas
空間デザイン:中原崇志、香坂朱音、梶田ひかる
照明監修:面出 薫
映像ディレクション:小野陽平(展示物)、羽深俊幸(インタビュー)、柳 忍(インタビュー)
会場音楽:畑中正人
題字:塩川いづみ
本展詳細(松屋ウェブサイト)
https://www.matsuyaginza.com/jp/ginza/events/exhibition/tsu-tsu-mu-exhibition-20250916

本展関連書籍『Tsu-tsu-mu 世界をやさしく繋ぐデザインの作法 Tsu-tsu-mu:Design Typology for Care and Inclusion』表紙
制作:日本デザインコミッティー
構想:色部義昭、土田貴宏、田川欣哉、鈴木 元
編集:テキスト:土田貴宏
執筆:土田貴宏、長瀬香子
アートディレクション:色部義昭
装丁・デザイン:本多万智
言語:日・英語
本体価格:2,800円(+消費税)
ISBN-13:978-4756260505
発行:パイインターナショナル / PIE International)
発行予定日:2025年10月15日
※本展会場にて先行販売あり
パイインターナショナル 書籍ページ
https://pie.co.jp/book/i/6050/

HOW TO WRAP_によるワークショップ
日時:2025年9月27日(土)14:00-16:00
定員:20名
参加費(税込):3,850円
※定員に達したため、申し込み受付締め切り

折形デザイン研究所によるワークショップ
日時:2025年10月5日(日)14:00–16:00
定員:15名
参加費(税込):6,600円
※参加費は、書籍『折形のコードとモード』代金を含む
参加方法:要予約・チケット制、Peatixページより要申し込み
https://tsutsumu-origata.peatix.com/
上記ワークショップのほか、コミッティメンバーによるトークショーも開催されます(詳細が決まり次第、展覧会公式ウェブサイトなどで発表予定)。
本展の会期中に限り、京都の大垣書店とコラボレーションによるオフィシャルブックカフェ[Tsu-tsu-mu Café by OGAKI BOOKSTORE]が展覧会場併設でオープン。日本デザインコミッティーメンバーの協力のもと、選書コーナー「私が影響を受けた一冊」が設けられます。本には選者のコメントも添えられるとのこと。
「Tsu-tsu-mu(包む)」のコンセプトを表現したカフェの空間設計を、デザイナーの小泉 誠氏が担当。インテリアには、松屋銀座7階でも取り扱っているマルニ木工の椅子や、能作、菅原工芸硝子の器などが用いられます。

Tsu-tsu-mu Café by OGAKI BOOKSTORE カフェメニュー(一部)イメージ
オープン期間:本展会期に準じる
会場:松屋銀座 8階イベントスクエア
席数:79席
営業時間:松屋銀座の営業時間に準じる ※ラストオーダーは閉店30分前
メインスポンサー:大垣書店
協力:マルニ木工、能作、菅原工芸硝子、スキャンデックス、バルミューダ、わざわ座+相羽建設
展覧会公式ウェブサイト
https://designcommittee.jp/event/2025/08/tsutsumu_ten.html