近代日本における五大監獄(千葉、金沢、奈良、長崎、鹿児島)の1つとされる奈良監獄が、星野リゾートによってミュージアムが付帯したホテルへと生まれ変わります。
奈良監獄は、当時の明治政府が欧米列強諸国とのあいだに結ばれた不平等条約解消を目指し、国の威信をかけて建設したもので、1908年(明治41)に完成。監獄の国際標準化を目指して計画されました。
設計は、建設当時は司法省に勤め、刑務所や裁判所の設計を数多くの手がけた山下啓次郎(1868-1931)が担当。イギリス積みの赤れんがを多用し、随所に当時の先進的な技術や意匠が取り入れられた、秀麗なロマネスク様式の建築です[*1]。
赤れんが造の塀で囲まれた約10,6000m²の敷地には、看守が立つ監視所を起点に複数の収容棟が放射状に伸びた「ハビランド・システム[*2]を採用しているのが特徴です。
明治期の近代監獄の姿を唯一、完全に残した建造物であり、意匠の面でも優れた歴史的価値の高い近代建築であるとして、2017年(平成29)2月に国の重要文化財の指定を受けています。
#旧奈良監獄保存活用株式会社 YouTubeチャンネル「近代監獄の歩み」(2018/09/26)※再生と同時に音声が流れます
建物の老朽化などから、2017年3月31日をもって刑務所(1946年より奈良少年刑務所)としての役目を終え、廃庁。法務省の「旧奈良監獄の保存及び活用に係る公共施設等運営事業」に基づき、歴史的建造物の保存・活用(アダプティブリユース)のための計画が立てられ、改修工事を経て、2019年に史料館が開館。さらにホテルとして再生される計画が2021年に発表されていました。
星野リゾートでは、締結された協定書[*3]に基づき、旧奈良監獄の赤れんが建造物の魅力を最大限に活かしながら、非日常なひとときを味わうラグジュアリーなホテルへと再生する計画です。
所在地:奈良県奈良市般若寺町18
建築面積:星のや奈良監獄:6,226m² /ミュージアム(仮名称):1,762m²
延床面積:星のや奈良監獄:10,343m² /ミュージアム(仮名称):2,168m²
敷地面積:100,478.80m²(付帯のミュージアムを含む)
客室数:48室
付帯施設:レストラン、ラウンジ、ミュージアム(ミュージアムは、日帰り利用可能)
ホテル計画:東環境・建築研究所(代表:東 利恵)
ランドスケープデザイン:オンサイト計画設計事務所(代表取締役:長谷川浩己)
開業時期(予定):2026年春
星野リゾートプレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000247.000033064.html
*1.参照元:旧奈良監獄ウェブサイト「建物」ページ
https://former-nara-prison.com/architecture/
*2.英国生まれの米国人で、新古典主義時代の建築家、ジョン・ハビランド(1792-1852)が考案したことに由来する
*3.星野リゾートと旧奈良監獄保存活用株式会社による協定書の締結について
平成29年12⽉に国(法務省)との間で締結した「公共施設等運営事業実施契約」に基づき、旧奈良監獄の⾚れんが建造物の耐震改修⼯事や史料館、その他付帯施設の開業準備を進めている。今後は「星のや奈良監獄」のホテル運営に加え、旧奈良監獄の歴史などを伝えるミュージアム施設(⽇帰り利⽤可能)の運営計画についても検討中。
旧奈良監獄ウェブサイト
https://former-nara-prison.com/index.html