建築家の青木茂氏(青木茂建築工房 代表取締役社長)が設計活動において長年取り組んでる、既存躯体を再利用して建物を再生するリファイニング建築®に関して、青木事務所および三井不動産と、東京大学新領域創成科学研究科の清家剛教授の3者が、CO2排出量削減効果について共同で調査・研究を行い、その結果が先ごろ発表されました。
対象とした既存建物は、三井不動産がリファイニング建築®での改修(リノベーション)を計画中の、新宿区内の築49年(旧耐震基準)の地上9階建て賃貸住宅です。
敷地概要
所在地:東京都新宿区信濃町3-1
用途地域:第1種中高層住宅専用地域
敷地面積:968.46m²
物件概要(予定)
用途:賃貸住宅(32戸)店舗1戸
構造:高層棟SRC造、低層棟RC造
延床面積/建築面積:約2,610..42m² / 405.86m²
建築確認申請:建築確認申請提出(工事種別:大規模の模様替え)
検査済証:検査済証取得予定
補強計画:耐震壁の新設により耐震指標Is値0.6を確保
設計:青木茂建築工房
施工:大末建設
竣工予定:2022年3月(既存建物1971年築)
一般的に、建物の建設工事において、新たな躯体建設のために調達される鉄やセメントなどの建築資材の製造時において、多量のCO2が発生します。
今回の共同研究では、製造、運搬、施工の段階のうち、最も削減効果が大きい製造段階に注目し、今回のリファイニング建築®時に使用される建築資材量を算出、資材の製造時に排出されるCO2排出量を試算しています。建て替えの場合も同様に算出し、比較することで、同建築手法の削減効果を検証しました[*]。
*本共同研究における前提条件(三井不動産プレスリリース)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000146.000051782.html
SRC造(一部RC造)の既存躯体の約84%を再利用する、今回の計画における試算結果では、建て替えた場合の躯体の資材製造に伴うCO2排出量が1,761t(トン)だったのに対して、躯体の資材製造に伴うCO2排出量が40t、全体の数値は1,721tとなり、約72%の削減効果があることが判明。
リファイニング建築®は、老朽化不動産の耐震化を行い、不動産価値を高めるだけではなく、脱炭素社会の実現に向けたソリューションの1つとなり得ると、今回の研究結果は提示しています。
なお、青木氏が行っているリファイニング建築®は通常、躯体の80%以上の再利用を目指しています。建物寿命を新築同等とするため、躯体の調査、補修を実施したうえで、耐震性能を現行法規レベルまで向上させています。また、竣工後の運用時エネルギーも新築同等とするため、サッシ交換や断熱改修などもあわせて実施しています。
「リファイニング建築®」解説動画(三井不動産)
https://lets.mitsuifudosan.co.jp/refining/02.html