CULTURE

『Casa BRUTUS』の元・編集者が厳選したワンダー・アーキテクチャー集『世界のビックリ建築を追え。』

CULTURE2020.11.23

建築・デザイン雑誌『Casa BRUTUS』の編集者として、世界中の「ビックリ建築」を20年以上にわたり追いかけてきた白井良邦氏。その集大成となるビジュアルブックが発売されています。北欧の”UFO型”住宅や、キューバ革命の父・カストロのつくったトロピカル建築など、世界中を巡って見つけた、驚愕の建築ばかりを紹介する一冊です。(en)

著者プロフィール:白井良邦(しらい・よしくに)
ビックリ建築探究家 / 編集者
1971年神奈川県生まれ。大学卒業後、1993年マガジンハウス入社。雑誌『POPEYE』『BRUTUS』編集部を経て『CasaBRUTUS』には1998年の創刊準備から関わる。
2007~2016年『CasaBRUTU』副編集長。建築や現代美術を中心に担当し、安藤忠雄特集」、書籍「杉本博司の空間感」、連載「櫻井 翔のケンチクを学び旅」などを手掛ける。
2017年より「せとうちホールディングス」執行役員兼「せとうちクリエイティブ&トラベル」代表取締役を務め、客船ガンツウをはじめとした、瀬戸内海での富裕層向け観光事業に携わる。2020年夏、コンサルティング会社アプリコ・インターナショナル設立。出版の垣根を越え、さまざまな物事を“編集”する事業を行っている。

宇宙時代が生んだUFO型住宅「フトゥロ」(本書P.10-11より)

BRUTUSという雑誌の編集部に配属されてすぐの、僕がまだ20代だった頃、新しい雑誌をつくらないか、と当時の編集長に声をかけられた。その新しい雑誌というのが『Casa BRUTUS』という建築を切り口にしたライフスタイル誌だった。

時は1998年夏。当時スマートフォンなんていうものはなく、編集部ではようやくパソコンが会社から支給され、各編集者にメールアドレスが割り当てられ始めたばかりだった。だから当然、インターネットで検索なんていうことはまだできず、調べものがあったら、その分野の詳しい人物を探し出して話しを聞くか、本屋や図書館をいくつもまわり、文献をあたるしかなかった。

建築には興味があったが全くの素人だった僕は、その日も海外の雑誌がたくさん置かれている図書館へ行き、当時担当することになっていた北欧デザイン特集のネタ集めをしていた。そんな折、パラパラと洋雑誌をめくっていると目に飛び込んできた奇抜な建築があった。写真こそ小さかったが、そこには岩肌にへばりつくように建つ無数のUFO型の家のようなものが写っていた。よく読んでみると、1968年フィンランドで生まれた未来の住宅フトゥロと書かれている。

1968年、フィンランド人建築家マッティ・スーロネンによりデザインされたUFO型住 宅「フトゥロ」の模型

「なんだ、これは!」

身体中を電流のようなものが駆け巡った。と同時に、ムクムクと好奇心が湧いてきた。そこにロマンを感じた。謎のこの建築を自分の目で見てみたい。建築ってなんだか難しくて、固いものだと思っていたけれど、こんな得体のしれない建築もあるのかーー。これが僕のビックリ建築との出会いだった。

「フトゥロ」はアメリカ、ソ連、日本など約40カ国に輸出された

それから約20年。ブラジル、キューバ、フランス、メキシコ、ジョージア、そして日本各地……僕は世界中を巡りビックリ建築を探し捉えてきた。なぜ不思議なフォルムをもつ建築が生み出されたのか? それは時代のせいなのか?それともマッド・サイエンティストのような建築家のせいなのか???

この本ではその一部ではあるけれど、「ビックリ建築」という不思議な建築が世にあることをお伝えすると共に、その魅力や、生まれるにいたった時代背景や建築家の思想など、リポートしてみたい。(『世界のビックリ建築を追え』前書きより、著者:白井良邦)

黒川紀章設計〈寒河江市庁舎〉のメインロビーに展示された岡本太郎の彫刻作品『生誕』(本書P.98-99より)

黒川紀章設計の<寒河江市庁舎>のメインロビーを竣工当時から50年以上、変わらぬ姿で照らし続けている岡本太郎の彫刻作品『生誕』。FRP(繊維強化プラスチック)製で高さは優に2mを超える。縦横無尽に突き出た角は全部で16本。内部には蛍光灯が仕込まれている。太郎はこの作品について「建物の直線に“ツノ”を曲線で対抗させ、生みの苦しみとエネルギーを表現した」と語っている。4層分吹き抜けの天井から吊るされた作品は、圧倒的な存在感で心を揺さぶる。

東京・市ヶ谷に建つ、いけばな龍生派の拠点〈龍生会館〉(本書P.88-89より)

東京・市ヶ谷に建つ、いけばな龍生派の拠点<龍生会館>は、知られざる和風モダニズム建築だ。しかし、このアヴァンギャルドな名建築も残念ながら、解体され、永遠に失われてしまった…。家元自邸(写真左)は、力強く出っ張る斧のような梁や、バルコニーのスペーシーな雰囲気の造形に注目。1階の応接室(写真右下)は、洞窟のように薄暗い空間で、天井からは鍾乳石のような照明がせり出す。

アウグスティン・ヘルナンデスが設計した、スペースシップ・ハウス〈TALLER〉(本書P.38-39より)

 中南米の国メキシコには、まだまだ日本で知られていない驚くべき建築がある。メキシコシティ郊外の高級住宅地に建つ、スペースシップ・ハウス〈TALLER〉は、マヤのピラミッドを思わせる造形だ。設計は、70年大阪万博『メキシコ館』をデザインした建築家アウグスティン・ヘルナンデス。完成以来、彼の建築事務所兼住居として使われているという。

キューバ・ハバナ新市街の中心、革命広場に面して建つ内務省ビル。1953年に建築家アキレス・カパブランカの設計で建てられた。建物自体はル・コルビュジエの影響が見て取れるが、壁面にはキューバ産の石灰石が使われるなど、この国の独自性もみられる。当初、建物正面の壁面にチェ・ゲバラの顔は無かったが、キューバ革命後に取り付けられた。

『世界のビックリ建築を追え。』表紙

「この本で紹介している建築の多くは、人類が宇宙に飛び立った1960~70年代初頭という時代につくられたものばかりです。この時代のデザインは今も色あせない魅力を放っていますが、その60~70年代カルチャーを、社会情勢・スピリチュアル世界の話しなどを織り交ぜながら、建築を通じ紹介しています。建築をよく知らない人でも、大いに楽しんでもらえる内容になっています」(著者コメント)

『世界のビックリ建築を追え。』

著者:白井良邦
販売価格:本体3200円+税
ページ数
:オールカラー152ページ
判型:A4変型判(大型ビジュアル本)
ISBN:978-4-594-08627-5
発行
:扶桑社
発売:2020年10月28日

書籍詳細(扶桑社ウェブサイト):https://www.fusosha.co.jp/books/detail/9784594086275

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