住まい方・働き方とITを掛け合わせ、暮らしの質向上を目指すグッドルーム。
既存の住居やオフィスを生まれ変わらせ、新たな価値を創造し、それらを繋ぐ独自のサービスを展開することで、ニュースタンダードの住まい方・働き方を世の中に提案している。
現在、グッドルームは事業拡大に伴い設計業務における求人を行っており、企業の特徴や、暮らしにITを掛け合わせた事業を展開することの背景について、グッドルーム代表の小倉弘之氏と、アセット企画事業部 開設部の小林拓也氏に話を聞いた。
(特記以外の画像=グッドルーム提供)
── まずは、グッドルームの企業理念から教えてください。
小倉弘之(以下、小倉):私たちは「どこにもない、ふつう」という理念を掲げています。暮らしとITを掛け合わせて、これまでになかった「ふつう」を生み出し、安心感と驚きを共存させ、次世代のスタンダードとすることを目指しています。
日本には世界的に著名な建築家がたくさんいます。素晴らしいことである一方で、その建築家たちによる特別な空間で暮らせる人は限られています。そうした特定の人だけではなく、誰もが心地よいと思える暮らし方、働き方を実現できるような提案をしています。
── 今回募集することになった、設計業務の特徴は何ですか?
小倉:グッドルームではこれまで、お手軽な金額でも居心地のよい空間に住むことができる環境づくりを目指し、無垢のフローリングを使った、賃貸に特化したリノベーションを7000室以上提供してきました。さらにコロナ禍を経て、新しい暮らし方・働き方をつくっていきたいという想いの中で、近年はコリビング施設やシェアオフィス、カフェやサウナといったサードプレイスの事業を加え、設計から工事、その後の運営まで手掛けています。
すでに当社で運営する施設数は20拠点以上となっており、その拠点で得た経験をもとに設計にもフィードバックを重ね、さらによいものとする仕様づくりを進めています。デザインをする設計業務という視点よりかは、ユーザー目線で暮らし心地のよい空間を提供するために、工事や運営までを含めて一緒に事業をつくりあげることを目指すというのが、通常の設計とは異なるポイントかと思います。
── もともとリノベーションがメイン業務とのことですが、どういった背景があったのでしょうか。
小倉:大学生のころの私は、建築好きの経済学部生でした。造形へのセンスがなかったようで建築学部は諦めてしまっていたのですが、それでも建築が好きで、卒業後は竹中工務店の開発部に入りました。後にコンサルティング会社に転職したのですが、勤める傍ら、住んでいた部屋のセルフリノベーションを趣味としていました。床や壁紙を張り替える簡単なものでしたが、部屋の印象が劇的に変わったことを覚えています。
グッドルームを起業した2009年頃は、空き家問題が全国的に顕在化してきていました。今でこそDIYという言葉が世の中に浸透して環境が整っていますが、その当時、一般の人にはセルフリノベーションという発想自体がほとんどありませんでした。そうした社会背景と自分の好きなことが重なった結果として、空き家のリノベーション事業をスタートするにいたりました。
── 自社でメディアをもつ理由を教えてください。
小倉:自社物件を知ってもらううえで、他社の物件紹介メディアでは築年数という壁がありました。リノベーション物件は築年数が古いのが当たり前なのですが、物件の検索時に築年数の絞り込みが出来てしまうことで、リノベーション物件が真っ先に候補から外れてしまい、そもそも情報として世に流通させることが難しいと考えていました。
オウンドメディア「goodroom」は、自社によるものだけはでなく、他社の物件も含めて紹介するポータルサイトとしてスタートさせました。ユーザーにとって有益な情報を提供しつつ、まずは自社物件の魅力を知ってもらう環境づくりが重要だと考えていたからです。この、築年数にとらわれない物件の魅力を伝えることができる新しいメディアの立ち上げが大きな転換点となり、今ではオウンドメディアの運営があることが事業の根幹になっています。
── まずは入社した経緯と、現在の業務内容について教えてください。
小林拓也(以下、小林):2017年に新卒で入社し、「TOMOS」のリノベーション賃貸物件を手掛けてきました。現在、私が所属している部署ではシェアオフィスやコリビング施設といった、比較的新しい事業の設計を担当しています。設計だけではなく、プロジェクトのマネジメントや、より現場に近い設計・施工監理といった実務的な業務までを一貫して携わっています。
── 社内の雰囲気はどうでしょうか?
小林:私は入社7年目ですが、社内の平均年齢は私よりも若干低いくらいで、若手が活躍しやすい会社という印象があります。
社内ではもともとが建築畑だった人は少数派です。施工のための大工を抱えていたり、物件の仲介、管理なども自社で行っているので、人材が幅広く、社員のバックボーンもさまざまです。1つのプロジェクトに対して上流から下流までを自社で手掛けることができるため、情報共有が円滑で、私たち設計側への課題のフィードバックが明快なのがいいですね。
── 業務で難しいと思うことを教えてください。
小林:私たちの設計では、一点物の空間をつくるわけではなく、ユーザーがどこの物件でも同じような住み心地を体験できるようにある程度仕様を統一し、ブランドとして展開しています。1つの物件が完了すると、次の物件ではデザインをより洗練させて品質を上げながら、ユーザーの手に届きやすいよう施工の効率を上げ、コストは下げていく必要があります。また、設計条件が既存の状態によって大きく異なるので、一定のクオリティを維持していくだけでも難しいのです。ですが、そうした困難を乗り越えていくことが、社会が求める課題解決に携われているという実感にも繋がるので、とてもやりがいを感じています。
── 現場の視点で、いま求めている人材を教えてください。
小林:賃貸物件のリノベーションから始まった企業なので、住居のリノベーションを経験したことがある人は、すぐに活躍できると思います。ただ、これから新しく事業を拡大していくうえで、住居以外にもさまざまなノウハウがある人が近くにいると、やはりありがたいですね。オフィスやホテル、飲食店舗などの経験者の知見は、業務の底上げになります。
私たちは一点物の空間をつくっているわけではありません。ですので、自分のやりたいことを突き詰めていくというよりは、グッドルームのビジョンに共感してもらえて、私たちと一緒に社会に向け広げていきたいと考える人に来てもらえたら嬉しいです。
── ITによって、建築はどのように変化していくと考えていますか?
小倉:実際の竣工物件においては、入退室管理の顔認証システムの導入や、照明や空調の自動化などを採用しています。心地よく暮らしていくためには、空間性による心地よさだけでなく、UIやUXを活用した勝手のよさも不可欠だと考えているからです。
今後、IT技術の普及と共に、建築のシステム面における需要も増え続けていきます。私たちは親会社を含めると社員の約半数がエンジニアですので、こうした多様化する要求に対しても、柔軟に応答していけると考えています。
── 最後に、グッドルームの今後の展望についてお聞かせください。
小倉:近年、住居と仕事場との境界がより曖昧になってきていて、コリビング施設やコワーキングなど多様な暮らし方、働き方に応える事業にも力を入れています。また、空間や時間の隙を活かしたサードプレイスの提案にも取り組み出しました。
中でも、賃貸物件と10年接する中で「もっと気軽に引っ越せる仕組みをつくれないだろうか?」という思いから立ち上げたのが、ホテルのサブスクサービス「goodroomサブスくらし」です。現在は全国に700カ所以上の拠点を構えていて、働き方改革の追い風もあって、場所に縛られないホテル・マンスリー暮らしがじわじわと広がっています。
コロナ禍以降、人々の暮らし方、働き方に対するマインドは劇的に変わってきていますが、多くの不動産会社がこの変化に追いつけていません。私たちは「どこにもない、ふつう」を目指し、固定概念にとらわれない新しいシステムづくりで、働き方や暮らし方を提案していきます。
(2023.10.31 goodoffice 新橋 by goodroom にて)