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サポーズの“有機的な無機質”を実現する素材の使い方

〈JINS 広島T-SITE店〉にみる水性カラーステイン塗料「アクアカラー」活用術

PRODUCT2023.04.06

広島市の「知・食・住」をテーマとする複合商業施設〈LECT(レクト)〉の1階メイン通路の出入り口脇に、アイウエアブランド「JINS(ジンズ)」の店舗がある。ボックス状の什器が点在するインテリアはアースカラーで統一され、什器の間を縫うように巡る通路の床には、同じ色合いでムラのあるニュアンスが付けられている。

この〈JINS 広島T-SITE店〉を設計したのは、SUPPOSE DESIGN OFFICE。動線や配置の計画からディテールまで、どのように考えてつくったのか、また全体のトーンをどう整えていったのか。谷尻 誠氏と吉田 愛氏の代表取締役2人、そして担当スタッフの岩竹俊範氏に話を伺った。

(2022.11.30および12.22にオンライン取材)

SUPPOSE DESIGN OFFICEの谷尻 誠氏と吉田 愛氏、岩竹俊範氏(元所員)

タイトル写真を含む事例写真:矢野紀行

INDEX

  • 公園のように自由に人が行き交う空間をつくる
  • コンクリートの質感を残すカラーステイン塗料を採用
  • アンティーク感を醸し出す素材を活用

公園のように自由に人が行き交う空間をつくる

JINSは店舗を出店するにあたり、ブランド発足当初の時期からさまざまな建築家と協業してきた。SUPPOSE DESIGN OFFICEでもいくつかJINSの店舗を手掛けたが、谷尻氏は「全国的に展開が進んでJINSブランドのアイデンティティが確立されてからは、地域ごとの体験を重視されているように思う。そうしたフェーズに入ったころ、広島の店舗設計で声を掛けていただいた」と振り返る。

〈JINS 広島T-SITE店〉が位置するのは、メイン通路に接するテナント区画で、奥は「広島 蔦屋書店」に隣接するスペース。ここでSUPPOSE DESIGN OFFICEは、「動線でありながら人々の憩いの場であるような場所をつくる」ことをコンセプトに設計を進めた。

〈JINS 広島T-SITE店〉

〈JINS 広島T-SITE店〉。メイン通路から奥の「蔦屋書店」方向を見通す。ニュアンスのついた表情の床が店内を貫く

「動線である」というのは、JINSの店舗を通り抜けて書店に向かう、あるいは逆に書店から店舗を経由してメイン通路に出られるように、利用者が流動的に行き交うことを想定したことを意味する。

「人の通り道になるだけでなく、ベンチみたいなものがあって少し立ち止まり、リラックスしながら眼鏡を吟味できるようになればいいなと。公園のような雰囲気をイメージしました」と谷尻氏は語る。

「そうした場所に主役である眼鏡を置くことで、店舗の存在感が立ち現れてきます。商品自体で空間をつくり出すことを目指しました」と吉田氏は説明する。

〈JINS 広島T-SITE店〉

通路の途中で公園のベンチに佇むようにして眼鏡を選ぶことが想定された


コンクリートの質感を残すカラーステイン塗料を採用

空間づくりで谷尻氏は「地面が起伏して什器になり、地形の中にプロダクトがあるようにしたかった」と狙いを語る。

そのためには、全体のトーンを統一することがどうしても必要だったという。吉田氏は「ワンマテリアルにすることを定めたうえ、同色で素材感を出すことを追求しました」という。

色は公園のイメージから、大地を連想させるアースカラーをメインにすることを決定。岩竹氏は「壁と什器、そして床ではそれぞれ求められる機能が異なるので仕上げを変える必要はありますが、一体として見せるために、さまざまな素材の組み合わせを検討しました」と振り返る。

〈JINS 広島T-SITE店〉

壁や商品展示什器、カウンターなどと色合いを合わせた床仕上げ

床の仕上げについて岩竹氏は、商業施設でのテナント特有の、工法や施工面での制約があることを指摘する。「今回のようなテナントでは躯体から仕上げまでの寸法が3mm程度しかなく、薄塗りしかできない区画がほとんどです。コンクリートに色を混ぜ込むカラーコンクリートでは、十分な厚さを確保できません。樹脂系の薄塗りモルタルでは、塗膜が剥がれて下地のコンクリートが見えてしまうことが予想されました。それで、具体的には塗装の中で比較することになりました」という。

谷尻氏、吉田氏、岩竹氏は、JINSの店舗設計チームとともにサンプルで実際の表情を確認しながら、コストを含めて床材を検討。そして、床用カラーステイン塗料「アクアカラー for floor」を採用した。コンクリートの質感を残す色合いと色ムラ感が、今回の店舗で求める世界観に合致したためであった。

〈JINS 広島T-SITE店〉

半透明でコンクリートのテクスチャーを残す「アクアカラー for floor」の床

「実際の施工では、コンクリート床下地の上に2工程で重ね塗りをして、濃淡による色ムラを出してもらいました」と岩竹氏は語る。「アクアカラー for floor」の「ミッドブラウン(グロス仕上げ)」で、コンクリートのテクスチャーを残しながらムラ感を出した床は、土で覆われた地面を想起させる表情となった。

※ 素地が透けるため、汚れ・補修跡・打ち継ぎ・クラック等は隠れません
※ 下地色や吸い込みにより、色合いに違いや濃淡ができますのでご了承ください
※ モニター画面での色味のため、実際の色調とは異なります

谷尻氏は「スタッフとはよく、“有機的な無機質”という方向性について話すんです。“なんとなく質感があるけど、抽象的にしたい”という場合が多くあります。『アクアカラー』の質感は申し分ありません。単色のベタっとした感じがせず、細やかなニュアンスをもつ空気感が出せることがいいなと思います」と語る。


アンティーク感を醸し出す素材を活用

「アクアカラー for floor」は、コンクリートやモルタルの素地の床に使用できる。コンクリート下地に作用し強化する下塗剤「ハードベース」のうえに、上塗剤である床用の「グロスコート / マットコート」を施す。半透明の状態にカラーリングを施すことで、コンクリート特有の風合いを活かすことができる。

〈JINS 広島T-SITE店〉

コンクリート床の風合いが活かされた〈JINS 広島T-SITE店〉

SUPPOSE DESIGN OFFICEがデザインした〈JINS 広島T-SITE店〉はオープンから3年弱が経ち、設計の狙い通り、人の往来が絶えない店舗となっている。

特に店舗では使用状況により、メンテナンスやさらなる改修のタイミングや程度は変わってくるが、メンテナンスを利用して、「アクアカラー for floor」でさらに風合いを増すことも可能だ。「アクアカラー for floor」を製造販売するアシュフォードジャパンによると、既存で塗られた「アクアカラー for floor」の上に塗り重ねることでムラ感が増し、より奥行きのある床へと仕上げることもできる。

竣工時からコンクリートのテクスチャーを残したアンティーク感のある表情をもち、また長期にわたってもニュアンスや色味の変化を楽しめる仕上げとして、「アクアカラー for floor」は床仕上げの新たな選択肢となるのではないだろうか。同様の特徴をもつ壁用の「アクアカラー for wall」もラインナップする。

そして、使用する場面や場所に応じて選択肢が幅広いことは「アクアカラー」の大きな魅力である。自然な色ムラや重ね塗りによる濃淡表現、異なる色の重ね合わせなど多彩な表現ができることはデザインの幅を広げ、理想とする空間のイメージに近づけてくれるに違いない。

aqua color for floor

aqua color

コンクリートやモルタルの質感を残したままカラーリングできる床用の水性カラーステイン塗料。半透明に仕上げ、粉塵の発生を予防する。コート剤はマットとグロスの2種、カラーリングは20色+クリアから選べる。

aqua color(アクアカラー) のページ

コンクリート塗料、モルタル塗料|Ashford Japan(アシュフォードジャパン)のページ

施工事例
オフィシャルサイト:https://www.ashford.co.jp/construction.html
Instagram:@ashfordjapan


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