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[Movie] Interview with Isao Yoneda & Kousuke Okumoto about "ARTTEC"

[動画]米田 功(体操監督)× 奥本浩介 “木を凌駕する” 外装パネル「アートテック」

PRODUCT2025.03.24

2004年アテネオリンピックの体操競技で歴史的な逆転劇をおさめ、金メダルを獲得した男子団体の体操競技。男子体操の主将としてチームを率いたのは、現在は徳洲会体操クラブの監督をつとめ後進を育成する米田 功氏です。その徳洲会体操クラブが神奈川・鎌倉の地に、男子体操専用の練習場を2024年に移転オープン。“大きな家”のような外観は、道行く人の注目を集め地域のランドマークとなっています。

徳洲会ジムナスティクスアリーナ〉を米田氏とともに構想し、外観・内観ともに劇的な空間を設計したのは、DESIGNSHIPの奥本浩介氏。奥本氏は木の質感にこだわり、外装の主要部分に木の色柄を焼付印刷したアルミパネル「アートテック®」を多用しました。

今回は米田氏と奥本氏の2人に、計画の背景や狙い、また「アートテック®」を採用するに至った経緯や効果を対談のかたちで伺いました。

対談動画はこちら

米田 功 | Isao Yoneda(写真左)
1977年 大阪府生まれ。7歳で体操を始め、全国中学生大会で個人優勝、清風高校ではインターハイで個人総合2位。順天堂大学では97年インカレ個人総合2位、98年NHK杯と99年インカレ個人総合優勝を果たす。2004年のアテネオリンピックでは日本男子体操の主将として団体で金メダル、個人の鉄棒では銅メダルを獲得。2008年に現役を引退、指導者の道に。2012年 米田功体操クラブ 設立、2013年- 徳洲会体操クラブ監督。

徳洲会体操クラブ
https://taisou.tokushukai.jp

奥本浩介 | Kousuke Okumoto(写真右)
1961年 東京都生まれ。1984年 早稲田大学理工学部建築学科卒業。1984~1990年 株式会社 竹中工務店、1990~2000年 株式会社SUM建築研究所を経て、2001年 DESIGNSHIP一級建築士事務所 設立。2005年より株式会社DESIGNSHIP 代表取締役。主な徳洲会関連の建築作品に〈葉山ハートセンター〉(2000年グッドデザイン賞金賞)、〈湘南鎌倉バースクリニック〉(第60回神奈川建築コンクール入賞)、〈湘南鎌倉医療大学〉(2020年照明普及賞東京支部審査委員特別賞受賞)など。

DESIGNSHIP
https://www.designship.jp

DNP 内・外装焼付印刷アルミパネル アートテック®

内装・外装に使えるオーダーメイドのアルミパネル外壁材。木材や石材、金属の質感や、設計者の希望するコンセプトに合わせたデザインを、焼付印刷でリアルに表現する。

INDEX
・大きな家型の体操複合施設
・長く誇らしく思える体育館であるために
・木のリアルとシャープさを両立させる「アートテック」
・演技を引き立て相乗効果を生み出す器としての建築

大きな家型の体操複合施設

米田 功(以下、米田):私は徳洲会体操クラブの監督として、選手をオリンピックに連れていくことが最も大きな役割と思っています。それと同時に今回、子どもたちの体操教室であったり、成人やシニアの方に通っていただくクラス、そしてメディカルフィットネスジムもできましたので、それらの運営やマネジメントをしています。

奥本浩介(以下、奥本):私たちDESIGNSHIPで設計する用途は幅広く、直近では大学の校舎やクリニック、病院、集合住宅などを手掛けています。最初から最後までクライアントと丁寧にお付き合いし、お互いに納得がいくものをつくりたいと活動してきました。

米田:もともと、ここから徒歩8分ほどの場所に徳洲会体操クラブ専用の体育館がありました。用途は同じ練習場でしたが、再開発のエリアにかかって移転する必要が出て、新しい体育館の構想が始まりました。

奥本:私は以前から徳洲会の建築の設計は、近辺でいくつか携わってきました。体操場の移転の話は聞いてはいましたが、いざ始まると急でしたね(笑)。大学の体育館を設計したことはあったのですが、体操場の設計は初めてのことでした。どのような種類の器具が並び、どんな使い方をするのかといったことを、監督や機器のメーカーに教えていただくことから始めました。

米田 功氏

米田:男子の体操競技は、6種目で行われます。「ゆか」は広さ12m四方が必要ですし、吊り輪は5mほどの高さがあり、大きな空間が求められます。今回の施設は、プロチームとして選手が競技結果を高める目的に特化してつくられた体育館で、世界の中でもおそらく初ではないかと思います。

奥本さんとの最初の打ち合わせで私は「体操教室やフィットネスジムから、体操クラブの選手たちが練習している風景を見られるようにしたい」と言いました。あとは、アリーナでも選手の練習風景を見られるギャラリーや、選手が合宿できるような設備がほしいといった要望を伝えました。

これまで、海外に大会などで行って練習場で過ごすと、一般の方がふらっと立ち寄って観客席で練習を見ているようなことがあり、そうした光景はいいなと思っていました。以前の体育館は、外部から見られないようなつくりでしたから。集中できる環境ではあったのですが、もう少し子どもたちが自然と触れられるような状態にしたいと思ったのです。

奥本浩介氏

奥本:米田さんたちの大きな構成についての要望は明快でした。それらを敷地の条件や建物にかかる規制の中でどう組み立てるかを考えていきました。さまざまなパターンの中から大きくは2つの案から現在の案を選択し、基本的にはそこからブレずに進んだかたちです。

メインの30m×50mの練習場をレイアウトするので、建物自体はかなり大きなボリュームになります。倉庫のようにはしたくなかったので、最初から「大きな屋根をかけましょう」と提案しました。家のような雰囲気や一体感がほしいと考えたためです。また、存在感があり力強い建物になってほしいと思い、屋根を載せるというよりは大地から盛り上がって家型になるようなイメージがありました。

前面道路側から見る〈徳洲会ジムナスティクスアリーナ〉(写真提供:DNP)

長く誇らしく思える体育館であるために

米田:外壁と屋根は、金メダルのゴールド色にするというアイデアも出てきましたね。

奥本:材料については、そうしたことを話し合いながら決めていきました。室内の仕上げでは、LVLという木の積層材を多用しています。体操やフィットネスをする空間の仕上げは素肌に近いものにして、リラックス感を求めました。またLVLの表面には、積層面の縞模様が直線で通っています。まっすぐに通る表情は、体操競技のイメージにすごく合っているなと思ったのです。

内装の壁や天井にはLVLを多用している

外のファサードにも室内のイメージを出していきたいと考え、日射や視線制御のためのルーバーを木で付けようと考えていました。当初はヒノキのような木材をルーバー材に張ることを検討していたのですが、耐久性やメンテナンスでの懸念があって悩みました。

「アートテック」はほかのプロジェクトで使ったことがあり、今回は途中でDNPに相談をしながら採用する方向になりました。木目でどのような表情ができるのか、どんなディテールで納められるのか、折り曲げたときの見え方などについて細かく対応していただきながら、外部のルーバーはすべてアートテックに替えることにしたのです。

特に、外観の印象を決定づける色については、見本を多くつくってもらい検討を重ねました。室内の木の明るく柔らかい感じを外にも現して、 地域にも体操クラブとしてアピールできるようなファサードにしたいと設計しました。

前面ファサードのルーバーに「アートテック」を採用(写真提供:DNP)

米田:最初に出していただいたデザイン案が、私にとっては「こんなものができるのか」と衝撃的でした。今となってみれば、最初に奥本さんは明確なイメージがあって、それを形にされていったのだなとわかります。自分たちも体操選手としてオリンピックに行きたい、金メダルを獲りたいと願いますが、そのためのプランがどこまで描けているかが大切ですから。

建物を設計しつくる過程では、ミーティングの後でもさまざまな方々が「もっといいものはないか」「いい方法はないか」と議論する様子を目にしました。そうして選ばれた「アートテック」についても、印刷でここまで本物と区別がつかないような高度なものがあるということは初めて知りましたし、そうした工夫を重ねていく場に加わらせてもらったのは貴重な体験でした。

耐久性やメンテナンスという話では、以前の体育館は、15年ほどしか使いませんでした。体操クラブには新しい選手がどんどん入ってきます。また体操教室やフィットネスの会員さんにも毎日使っていただいているので、いつ来ても誇らしいと思える体育館であり続けてほしいと思います。

木のリアルとシャープさを両立させる「アートテック」

奥本:長く変わらない価値を提供するには、天然の木では維持の面で難しい。「アートテック」は木のイメージを表現して耐久性があるという点で、現在のところ最適だと思います。そして今回のルーバーでは、シャープに見えることにこだわりました。私は、体操競技は動きがシャープだと感じていて、叩いて磨き上げられた日本刀のようなイメージを抱いています。そうしたイメージのディテールを、木の素材感や温度感と合わせたいと考えました。実際の形としてつくるためにも「アートテック」の採用はとてもよかったと感じています。

ルーバーに用いた「アートテック」は厚さ2mmのアルミパネルで、先端は30°の鋭角に折り曲げてもらいました。印刷された先端部分はアルミが伸びるので白くなるかもしれないことから、もっと厚くして曲げ加工をせずに同じ形状にする案もありましたが、パーツが分かれてしまうとソリッドな感じが薄まり、雨仕舞いが複雑になります。サンプルを見ながら折り曲げ加工とし、結果的にはイメージしたとおりの姿になったと思います。

ルーバーの両端部を見る。先端は「アートテック」を折り曲げ加工して納めている(写真提供:DNP)

米田:世の中の建材がほとんど印刷されてできていることは、今回初めて知りました。技術の発展をすごく感じましたね。体操も技術がどんどん向上していて、昔と今ではやっていることが全然違います。

建材でも、木と思っていたものが木ではなかったり、タイルと思っているものがタイルではなかったり、知らなかったことがたくさんあります。でもそうしてこだわってつくる方々がいることで、建材は発展してきたのだろうと思いました。

奥本:今回のこだわりの根源にあるのは、「木に見えてほしい」ということです。いくら優れた材料で木目が綺麗に出ていても、一般の人が目にして木の良さが表現できていなかったら意味がありません。

私は他のローコストな材料にもたくさん触れましたし、「アートテック」の採用事例も数多く見に行きましたが、「アートテック」は木に見えるということと、明るくて爽やかなイメージを兼ね備えているため採用に至りました。建物ができて、通りを歩いている人に「木の建物ができたんですね」と声をかけられたとき、成功したなと思いましたね。

演技を引き立て相乗効果を生み出す 器としての建築

米田:工事が進み、少しずつ足場が外れて全貌が明らかになっていくにつれて、最初のパースと変わらないどころか、それ以上のものが目の前に広がっているという驚きがありました。選手たちも「すごい」としか言えないという感じで。海外の方からも「ここで練習したい」という声がいくつか届いているくらい注目されていて、選手も誇らしく練習していると思います。

日中は本当に明るいですし、日が落ちてくると間接照明で綺麗に見えてきます。ここで選手が練習している映像を見ると、窓と屋根の壮大な雰囲気と相まって演技が絵になり、惚れ惚れします(笑)。こういうところで体操ができるのは幸せなことだなと、日々満足しながら指導に携わっています。

器で良い食材や料理を引き立てるように、一流のものをどう見せるかということは大事ですよね。建物の室内や外観は、選手の演技をさらによく見せるために大切だと実感しました。良い空間で選手の価値が上がっていきますし、「こんな体育館で練習したい」という将来有望な選手が来てくれたら嬉しいですし。そうした意味で、この体育館は最高の建物で、ここで一流の選手が活躍していけば、より良いものになっていくと思っています。

選手の練習場

奥本:私は体操クラブのInstagramをフォローしているのですが、すごく良いシーンがあって感動します。イメージをしたものにどれだけ近づけるかということは建築のプロとして当然ですが、米田監督に「思った以上のものだった」と言っていただけて嬉しいですね。ここは体操をするための「家」で、体操をどう見てもらい、どんなイメージを持ってもらうかということは強く意識しました。

この建物はパリオリンピックが始まる前からつくってきて、オリンピックでは日本の体操選手が団体でも個人でも金メダルを獲得するというすごい結果を目の当たりにしました。体操教室に今通っている10歳のお子さんも10年後には20歳で、国際大会でメダルを獲るような年齢になっています。選手や子どもたちがここで成長していくことが、とても楽しみです。

米田:金メダルを穫ってすぐに、奥本さんから「おめでとうございます」とメッセージをいただきましたね。私も「ようやく金メダルアリーナになりました」と返信しました。エントランスには表彰台があったり、選手が通る通路の鏡にはナンバーワンのモチーフがあったり、外壁はゴールドであったり。世界の頂点をイメージしたつくりにしていただいた期待にふさわしい結果を出せたなと思いました。

体操教室やジムに通う子どもや会員さんにとって、選手の演技を身近に触れていただくことは刺激になると思いますし、選手にとっても見られて応援していただけることで励みになり、良いサイクルが生まれるのではないかと思います。このアリーナでは今後、外部の方々を招いた大会もできたらいいなと構想しています。

奥本:今回のプロジェクトを通じて、耐久性や存在感がある誇り高い建築をつくり、これからの体操のスタンダードを示すことができたのではないかと思います。体操競技の認知度が世代を越えてさらに向上し、選手が結果を出し続けていくことに建築が役立つなら、私たちとしても本当に嬉しいですね。

(2024.12.17〈徳洲会ジムナスティクスアリーナ〉にて)

DNPの「アートテック®」について

・天然木と合わせて使用しても違和感のない意匠レベル
・同柄でいろいろなカラーをつくることができるデザインカスタマイズ性
・完全外部でも使用可能な高い耐候性

DNPのアートテック®は物件によってその顔を変え、その物件のコンセプトや込められた想いを印刷の力で表現します。

今回の施設で用いられた木目調のバリエーションは以下のページで確認いただけます。


「アートテック®」サンプルセットを用意


アートテック®のサンプルセットを お取り寄せできます。ぜひご活用ください。
※ サンプルセットは「リン酸処理風柄」となります

Movie & Photo: toha(一部動画からのキャプチャを含む)
Text & edit: Jun Kato

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