複数の照明や設備を設置する空間で、電気を供給し、電線を安全に整理する役割を担う配線ダクト。広い空間で多くの電源を必要とする工場、照明を多く設置するスーパーマーケット、美術館などで活用されています。近年、住宅や飲食店、オフィス、公共施設などでも、照明のみならず、防犯カメラやスピーカー、プロジェクターなど、設備の多様化により天井から電源供給可能な配線ダクトの活用シーンが増えています。

[上段:スマートリモコン、ウェブカメラ、下段:スポットライト、ペンダントライト]照明をオフにしても、スマートリモコンで家電操作が可能。また、ウェブカメラもオフにならないため、家の様子を外出先から確認できる(ジョイホーム株式会社 山口県M様邸)
1960年代から配線ダクトの開発・製造、販売を手がけるパナソニック エレクトリックワークス社が2020年から発売しているのが、1本のダクトで上下2段の電気回路に電源を供給できる天井用配線ダクト「OSライン ダブル」です。

「OSライン ダブル」
天井の可能性が広がる「OSライン ダブル」の特徴
- 1本で2回路供給可能[定格20A125V×2回路]
- 天井だけでなく、床もすっきりさせられることで空間の自由度を高める
- Archi Designの思想にもとづく、空間のノイズにならないデザイン性
通常の照明用ダクトや「OSライン シングル」は1段構造で、ダクトにセッティングした複数の照明を1つのスイッチですべて点灯させられる反面、1カ所だけ消したい場合でも、すべて同時に消えてしまいます。ダクトから電源を取っている設備も消した照明と連動してオフになってしまうため、天井に何本も配線ダクトを設置したり、常時付けておきたいカメラやスピーカーは天井付けにするなど、「天井をすっきりさせたい」という設計者、デザイナーのニーズに合わない事例も多くありました。

「OSライン ダブル」は、ダクト1本で2回路を供給する天井用配線ダクト。常時電源をオンにしたいワイヤレススピーカーや見守りカメラ、家電を一括管理するスマートリモコンなどの機器と、使わないときは電源をオフにしたい照明器具を1本の配線ダクトで別の回路を使用することができ、オンオフの併用が可能です。スポットライトとペンダントライトなど、シーンに応じて照明器具を使い分けたいときや、プロジェクターで投影する際に照明を消すなど、1本の配線で複数機器のコントロールができます。
また、プラグの着脱が容易でレイアウト変更にも配線工事を行う必要がなく、天井をすっきり保ったままで空間の用途、バリエーションを広げることができます。
オフィスや店舗、住宅、老健施設などでも天井から電源を取ることで、床の配線によるつまずきや転倒を軽減でき、OAフロアを設置する場合と比べても天井高が制限されません。レイアウト変更や多目的スペースのさまざまな使い方にも対応し、空間価値の向上につながります。オフィスの床清掃やお掃除ロボットを使用する家庭でもメリットとなるでしょう。

[上段、下段:リーラーコンセントプラグ]講義用モニターやスピーカーなど、電源確保のため「OSライン ダブル」を採用(愛知工業大学)
工場や大学、専門学校などの教室といった広い空間で、多くの工具や設備のための電源を確保したくても壁が遠く取りづらいというケースがありますが、パナソニックの天井用配線ダクト「ファクトライン」により、どこでも電源を取れるようになりました。この「ファクトライン」の技術を生かし、同社は店舗やオフィス、家庭でも電源がどこでも取れる配線ダクトの開発に取り組みました。
上下2段構造のダクト製品は工場用にはすでに販売されていましたが、「OSライン ダブル」は1から設計され、小規模な店舗や住宅でも違和感なく使えるよう、工場用よりひと回り小さくしています。
「OSライン ダブル」は外側の樹脂、強度を確保するための内側の鋼板、電気を伝える銅で構成されています。樹脂、鋼板、銅、これらを同時に押し出し成型することができるのはパナソニック独自の技術です。住宅やオフィスなどで設置されるスポットライトなどの熱に対して耐久性を上げるため、内側には耐熱性のある樹脂を採用しています。

[上段:スマートリモコン、ウェブカメラ、下段:スポットライト](ジョイホーム株式会社 山口県M様邸)
「OSライン ダブル」は、白と黒の2色展開で、シングル回線の「OSライン シングル」同様、幅33㎜のスリムな形状が特徴です。左右と上部にはリブがあるマットな質感で、クロスや木材など天井を構成するさまざまな素材に馴染みます。また、電気設備の視覚的なノイズを徹底的に減らすことを目指し、設計者目線で複数の事業部を横断して開発した製品群「Archi Design(アーキデザイン)」にラインナップされています。
下段は通常の配線ダクトと同寸法のため、これまで使用していた機器を使うことができるほか、昨年秋に「OSライン ダブル」の機能を拡張するアタッチメント3種※が発売されました。
※ 上段回路へ照明器具、スピーカー、ナノイーX発生機などの取り付けを可能にする「照明用アダプタL型」、LEDベースライトの直付けをする「ベース照明用プラグ」、L字やロの字に配線ダクトをレイアウトできる「ジョイナL」の3種
各アダプター、エンドキャップなどは、製品同様の白と黒が揃い、照明の光や紫外線などによる変色に配慮した素材で製造されています。

[上段:照明用アダプタL型+スピーカー、下段:スポットライト](株式会社サントー)
「天井を照明だけに使うのはもったいない」と、パナソニック エレクトリックワークス社 マーケティングセンター 電設資材商品部 配管企画課の内田 健氏は語ります。「これまで電源は壁か床から取るものと思われていました。OSライン ダブルにより、デザイン性も保ちつつ天井から電源を取ることを選択肢の1つとしてほしいと思います」(内田氏)。
照明や設備の増減も容易で、レイアウト変更や空間の用途変更にも柔軟に対応できるだけでなく、住まい手や顧客の転倒軽減や清掃性の向上にもつながる天井用配線ダクト。天井と空間の可能性を広げる選択肢と言えるでしょう。

[上段:リーラーコンセント、下段:スポットライト]上段はパソコンなどの機器用電源、下段を照明に分けている(株式会社日沼工務店)
お問い合わせ先
パナソニック エレクトリックワークス社
トップ写真:[上段:照明用アダプタL型+スピーカー、下段:スポットライト](株式会社サントー)