食用に育てたコオロギなどによる昆虫食の魅力を探究する ANTCICADA(アントシカダ)と、自然からの小さな発見を形にする蒸留所・mitosaya薬草園蒸留所は、蚕(カイコ)の糞である「蚕沙(さんしゃ)」を原材料に使用した蒸留酒「SANSHA – Mulberry and Silkworm droppings」を共同で開発。7月26日よりオンラインショップなどで販売を開始します。
千葉県夷隅郡大多喜町に拠点を構えるmitosaya薬草園蒸留所の代表を務めるのは、都内でも有数の個性派書店・ユトレヒト(Utrecht)の運営者から醸造家に転身した江口宏志氏。自然からの小さな発見をかたちにすることをテーマに、オー・ド・ヴィ(Eaux-de vie:フランス語で「命の水」の意)という、果物や植物を原料にした蒸留酒などをつくっている蒸留所。オープンは2019年9月。元は県立の薬草園だった施設の改修を、中山英之建築設計事務所が担当したことでも話題となりました。
今年1月には、ダンデライオン・チョコレートとコラボレーションしたブランデー 「CHOC & MINT」を発表しています。
篠原祐太氏が代表を務める昆虫食のプロジェクトチーム・ANTCICADAについては、今年6月に東京・日本橋馬喰町に昆虫食に特化したレストランを開店したニュースを小誌にて取り上げています。
【TECTURE MAG】BUSINESS|2020.06.21掲載
「コオロギラーメン」と「地球を味わうコース料理」とは? 昆虫食の「ANTCICADA」が東京・日本橋馬喰町にレストランをオープン
https://mag.tecture.jp/business/20200621-8341/
今回新たに発売される蒸留酒の原料が「蚕の糞」と聞いて、顔をしかめる人もいることでしょう。しかし実は、蚕の糞は「蚕沙(さんしゃ)」と呼ばれ、古くから漢方として愛飲されてきたものなのです。
「蚕沙」の効能は、血液の流れを良くしたり、神経痛や関節痛、胃痛に効くとされています。また、カイコの幼虫は、桑の葉を好んで食べて生長するため、糞は桑の葉の未消化物。これを煎じて飲めば、桑の葉茶を思わせる上品な香りが楽しめるのだそうです。
「自然からの小さな発見をかたちにする」ことを目的に、さまざまなフルーツやボタニカルを原料にした蒸留酒を製造するmitosaya薬草園蒸留所と、動物や植物と同じ食材・素材として真正面から向き合い、ポジティブな昆虫食のあり方、魅力を伝える活動をしているANTCICADAのコラボレーションは、自然な成り行きと言えるのかもしれません。それぞれのボタニカルの特徴を最大限に引き出す技術や探究心と、それらを支える商品への深い愛情は、両社の活動の根底にある、真摯なものづくりの姿勢と重なります。
原料の蚕には、山梨県で約150年続く養蚕農家アシザワ養蚕の6代目・芦澤洋平氏から提供される蚕沙を使用。鮮度の良い糞を収穫し、丁寧な乾燥と熱処理を加えた、安心安全な食材です。
このほど開発された「SANSHA – Mulberry and Silkworm droppings」は、桑の実であるマルベリーのブランデーと、桑の葉をカイコが食べたあとの未消化物である蚕沙のスピリッツをブレンドするという、桑という種を通じて生まれた2つの自然物を蒸留酒にしたものです。
玉露のような奥深いグリーンな香りが特徴で、プルーンや海苔のようなニュアンス、桑の実の滋味深い香りを、ほのかな酸味とともに感じられるオー・ド・ヴィ。飲み口はフレッシュで、心地よい余韻あり。ミルクチョコレートや、アールグレイのシフォンケーキ、カラメルの効いたプディングなどと一緒に、軽く冷やしてストレートで飲むのもオススメとのことです。
「SANSHA – Mulberry and Silkworm droppings」
開発:ANTCICADA+mitosaya薬草園蒸留所
使用素材:マルベリー、蚕沙、ライススピリッツ
内容量・価格:100ml 2,200円(税込)/ 500ml 9,680円(税込)
発売日:2020年7月26日(日)10:00より、mitosaya薬草園蒸留所 公式ウェブサイトにて販売(ANTCICADA店舗でも後日販売を開始)
https://mitosaya.com