2025年の9月26日から11月18日に開催される「ソウル建築都市ビエンナーレ2025」を彩る24名のデザイナーが発表されました。
デザイナーには、ビエンナーレの総監督を務めるトーマス・ヘザウィックや、日本を代表する隈研吾建築都市設計事務所、2022年にプリツカー賞を受賞したブルキナファソの建築家フランシス・ケレ、北京を本拠地とするMADアーキテクツといった著名な建築家が名を連ねる。
そして、シェフやファッションデザイナー、ジュエルデザイナー、職人、自動車製造チームなど、これまで建物を設計したことのない者も含めた多分野のデザイナーが集まり、それぞれが2.4m×4.8mのスケールの壁「ウォール・オブ・パブリックライフ(Walls of Public Life)」を広場に制作します。
ビエンナーレ概要
開催期間:2025年9月26日(金)ー 11月18日(火)
メイン会場:ソンヒョン緑地広場、ソウル都市建築展示館(Seoul Hall of Urbanism & Architecture)
(以下、ヘザウィック・スタジオから提供されたプレスキットのテキストの抄訳)

© ヘザウィック・スタジオ(Heatherwick studio)
ソウル建築都市ビエンナーレ2025にて、「ウォール・オブ・パブリックライフ」を制作する24名のデザイナーが発表された。
デザイナーにはインド、韓国、中国、日本、イギリスの建築家やエンジニアだけでなく、韓国系アメリカ人シェフであるエドワード・リー(Edward Lee)、ファッションデザイナーのステラ・マッカートニー(Stella McCartney)、ブルキナファソの2人の職人、韓国を代表するEVメーカー「ヒョンデ」の製造チームなど、これまで建物を設計したことのない者も含めた、多様なデザイナーが名を連ねている。
それぞれのデザイナーは、2.4m×4.8mのスケールで、建物の外壁の新たな可能性を探る断片的な構造物「ウォール・オブ・パブリックライフ」を制作する。
トーマス・ヘザウィックは次のように語る。
「これらの壁は、日常的な建物の外郭がどれほど魅力的なものになり得るかを示す、巨大で喜びに満ちたヒントである。私はこれらの作品を、無味乾燥で魂のない建物の表面への真の挑戦として人々に受け止めてほしい。そして開発者には『この多様な壁のアイデアを、自身のプロジェクトに応用できないか?』と考えてもらいたい。現状維持に固執するのではなく、都市での生活体験を刷新する一歩となってほしい。」

© ヘザウィック・スタジオ(Heatherwick studio)
今回のビエンナーレの主会場は、ソウル中心部に位置する公共の公園「ソンヒョン緑地広場」である。公園南側には、建築が人々の感情に与える影響についての公共的議論を喚起することを目的とした、4階相当の高さと90mの全長を誇るインスタレーション「ヒューマナイズ・ウォール(Humanise Wall)」が設置される。
北側には24の「ウォール・オブ・パブリックライフ」が並び、実際の建築がいかにして人々の喜びや感情と結びつき得るかを探求する場が創出される。
ここでは、韓国のNAMELESSアーキテクチャ(NAMELESS Architecture)による「壊れたレンガと石で構成された壁」、イギリスのジュエリーデザイナー スティーブン・ウェブスター(Stephen Webster)による「トゲと宝石で覆われた壁」、フランシス・ケレによる「韓国松を用いた壁」、ブルキナファソの職人による「現地で制作する壁」の設置を予定している。
これらの作品は、素材、テクスチャ、色彩、浮き彫り、パターンを駆使し、通行人の感情に意図的に訴えかけるよう設計されている。使用されている素材には、石、樹脂、松、再利用されたキノコなどが含まれ、それぞれが創造的かつ感動的な表現を試みている。

© ヘザウィック・スタジオ(Heatherwick studio)
それぞれのデザイナーは、自身が手がける壁について次のように語る。
シェフであるエドワード・リー
「レストランは通りすがりの人々に喜びを与えるべきであり、その外観はメニューやコミュニティ、内部の素材の物語を語るべきである。」
プリツカー賞受賞建築家フランシス・ケレ
「私は壁を障壁ではなく橋として想像した。一方の壁は韓国松でつくられ、もう一方は韓国の粘土を用いて、ブルキナファソ南東部の地域『ティエベル(Tiébélé)』の建築伝統を再解釈した。この2つの壁は、建築が人と人とをつなぐものであるという、共有された人間の物語を語っている。」

© ケレ・アーキテクチャ(Kéré Architecture)
韓国のモアレス・アーキテクツ(Moreless Architects)のキム・ヨンソ(Youngsoo Kim)
「ソウルのような高密度都市では、バルコニーが私有化され閉鎖されてきた。私たちは内と外、私的と公的、古と新をつなぐ、活発な空間としての本質を再発見したいと考えた。私たちの作品が、建築を都市景観の不可欠な人間的な要素として再考する手助けとなることを願っている。」
ソウル市未来都市空間計画局長のイム・チャンソ(Chang-su Lim)は次のように加える。
「ウォール・オブ・パブリックライフは、建築が人々の感情に触れ、都市の顔を変える可能性を示している。ソウル市は、誰もがアクセスでき、包摂的で温かく、感情に響く公共建築の発展を今後も継続して支援していく。」

© More Less Architects
ビエンナーレのキュレーション目標は、建築の外側をより魅力的で人間的なものへと再考する公共的対話を生むことである。これは、建築デザインが私たちの脳、身体、社会に与える影響を検証し、都市が人々にもたらす感情や、愛され、長く残る建物を創造する方法について、市民に考えることを促す。
ビエンナーレは、9月26日から11月18日まで開催され、9月27日と28日には「エモーショナル・シティ」と題した2日間の国際カンファレンスが開催される。このフォーラムでは、400人の科学者、開発者、デザイナー、コミュニティが、ソウルを拠点とするアーティストによる革新的な研究、市民主導のプロジェクト、創造的な介入について議論を交わす予定である。
近年の研究によれば、視覚的な複雑性に欠ける建築環境は、公共衛生や社会、文化に深刻な影響を及ぼすことが示唆されている。
「ウォール・オブ・パブリックライフ」のデザインチーム一覧
a.co.lab:多分野連携型のリサーチ志向の建築設計事務所
Anomalia:建築、空間体験、家具、インスタレーションを通じた実験的なデザインプレクティス
Anupama Kundoo Architects:健康、幸福、ウェルビーイングを探求するデザインプラクティス
Arup:150を超える分野で専門知識を有するグローバルデザイン、エンジニアリング、サステナビリティコンサルティング企業
バポサン・アレムポア(Bapossan Alempoua) & アセタ・イドゴ(Asseta Idogo):ブルキナファソのアーティスト
Bureau de Change:ロンドンを拠点とする建築事務所
エドワード・リー(Edward Lee):韓国系アメリカ人シェフ、作家、レストラン経営者
Hankuk Carbon:事前浸漬繊維のパイオニアである複合材料メーカー
Hawkins\Brown:イギリス、アイルランド、カナダを拠点とする建築、都市計画、インテリアデザイン事務所
ヒョンデ・モーター・カンパニー(Hyundai Motor Company):多国籍自動車メーカー
隈研吾建築都市設計事務所:多岐にわたる受賞歴を誇る日本の建築事務所
ケレ・アーキテクチャ(Kéré Architecture):プリツカー賞受賞のブルキナファソ系ドイツ人建築家フランシス・ケレ(Francis Kéré)が設立した建築事務所
韓国家具博物館(Korean Furniture Museum): 朝鮮時代後期の木製家具を展示
MADアーキテクツ(MAD Architects):マ・ヤンソンが設立したグローバルデザイン事務所
Moreless Architects:ソウルを拠点に繊細な美しさを追求する建築スタジオ
Ozwald Boateng OBE:イギリスのファッションテーラー
NAMELESS Architecture:ソウルを拠点にアイデア駆動型のデザインオフィス
ロナルド・レイル(Ronald Rael):カリフォルニア大学バークレー校の建築家、アーティスト、教授
SOSU Architects:ソウルを拠点とする韓国建築事務所
ステラ・マッカートニー(Stella McCartney):ファッションデザイナー、クリエイティブディレクター、ステラ・マッカートニーの創設者
スティーブン・ウェブスター(Stephen Webster):イギリス人ジュエリーデザイナー
ワン・シュウ(Wang Shu)、ルー・ウェンユー(Lu Wenyu):Amateur Architecture Studioの創設者
インカ・ショニバレ(Yinka Shonibare):人種、階級、文化的なアイデンティティをテーマに作品を手がけるアーティスト
YOAP Architects:持続可能な楽しみを追求する建築事務所