バンコクに誕生したスノヘッタによる空中庭園

©︎ Justin Szeremeta | StudioSZ

タイ・バンコクに位置する〈クラウド11（Cloud 11）〉は、タイ最大の高架クリエイティブパークを核に、居住・業務・レジャー機能を統合した複合施設です。

世界各地にスタジオを構える設計事務所 スノヘッタ（Snøhetta）とタイの設計事務所 A49アーキテクツ（A49 Architects）が共同で設計しました。

注目ポイント

• 東南アジア都市の気候に適応する複合都市再生プロジェクト
• 都市のヒートアイランド現象軽減と空気浄化を担う「都市の肺」として機能
• 垂直タワーが主流の都市構造と対比する「水平性を基調とした建築」として構想
• 気温上昇、大気汚染、洪水、公共緑地の不足という都市課題に対するランドスケープベースのアプローチ

（以下、スノヘッタから提供されたプレスキットのテキストの抄訳）

©︎ Justin Szeremeta | StudioSZ

タイ最大の高架クリエイティブパークを併設する〈クラウド11〉

生態系とコミュニティ統合を目指す新たな創造公園

生態系インフラを兼ね備えた公共景観を有する25万m²の複合都市再生プロジェクトは、東南アジア都市における将来の気候適応の先例となる。

スノヘッタはA49アーキテクツと共同で、マグノリア・クオリティ・デベロップメント・コーポレーション（MQDC）向けにアジア最大規模の都市再生プロジェクトを発表した。バンコクで最も活気ある文化・イノベーション拠点の1つであるサウス・スクンビットに位置する〈クラウド11〉は、生態学的インフラと文化公園を兼ねた中庭を核とする複合開発である。この設計はランドスケープの力を活用し、環境レジリエンスとコミュニティのウェルビーイングを推進する都市のオアシスを創出している。

©︎ Justin Szeremeta | StudioSZ

バンコクの多層的な環境から着想を得た「中間領域」

周辺環境と深く結びついた本プロジェクトは、バンコクのショップハウスが連なるまち並み、高架を走るスカイトレイン、そして立ち並ぶ高層ビル群という重層的な条件から着想を得ている。

これらの層の間に建築を彫刻するように配置することで、〈クラウド11〉は新たな「中間領域」を形成している。その結果生まれた広大な公共ランドスケープは、異なるスケールをつなぎ、地域コミュニティを再統合し、すべての人々に活気ある市民空間を提供する。

「〈クラウド11〉は、アジアにおける新たな創造拠点として構想した。それは才能、アイデア、文化が育まれる場所である。バンコクに恩返しする深い責任を感じており、高架公園はその信念を体現している。そのため、コミュニティのための豊かな緑地空間であり、人々を結びつけ、安らぎ、インスピレーション、可能性を提供するよう設計されている。」

プロジェクト発案者兼〈クラウド11〉事業開発CEO
オンザ・ジャニャプラサート（Onza Janyaprasert）

©︎ Justin Szeremeta | StudioSZ

都市課題へ向けたランドスケープベースのアプローチ

バンコクは気温上昇、大気汚染、繰り返される洪水に加え、公共緑地面積比率がアジアで最低水準（住民1人あたり7m²未満）であることなど、深刻な都市課題に直面している。

スノヘッタが提示する解決策は、持続可能なランドスケープベースのアプローチである。水平方向のランドマークと高架ランドスケープにより、開放性・アクセシビリティ・適応性・コミュニティを優先している。

「〈クラウド11〉は持続可能な都市再生に向けた変革的なビジョンを体現している。環境レジリエンスを都市構造に組み込み、社会的・生態学的相乗効果を育む包括的な文化公園を通じて、バンコクや地域内の他の都市向けに設計された革新的な適応モデルを提示する。」

スノヘッタ アジア担当マネージングディレクター
リチャード・ウッド（Richard Wood）

©︎ Justin Szeremeta | StudioSZ

公共交通への容易なアクセスを備えた、革新・創造性・持続可能な都市生活のための新たなプラットフォームとして構想された〈クラウド11〉は、クリエイティブ企業・アーティスト・起業家を集結させると同時に、居住者や訪問者に24時間利用可能な文化施設・小売店舗・ホテル・広大な緑地空間を提供する。

本プロジェクトは2026年3月に一般公開予定である。

©︎ Justin Szeremeta | StudioSZ

都市課題へのランドスケープ主導型の対応

水平性を基調とした建築と気候適応型中庭

〈クラウド11〉は、タイが国連気候変動枠組条約（UNFCCC）およびパリ協定で掲げる目標を反映した「グリーン・バンコク2030」および「エンター・バンコク2050」構想に沿い、バンコクが直面する差し迫った都市課題に対応している。

これらの国家的・世界的目標を支援する開発として、大規模都市開発の環境影響を相殺するため、持続可能なランドスケープベースのアプローチを採用している。

©︎ Justin Szeremeta | StudioSZ

設計はバンコクの多層的な都市構造に着想を得ており、反復的な環境風力・太陽光工学を通じて地域の気候条件に対応するマスキングを採用した。都市に遍在する垂直タワーとは対照的に、25万m²の開発は水平性を基調とした建築として構想され、建築と都市計画の境界を曖昧にしている。

多様なプログラムは、プロジェクトの社会的・気候的な中心となる開放型中庭を核に配置されている。タワーとポディウムの間に位置する高架中庭は、洪水リスクが高く熱が集中するバンコクの気候に対する革新的な解決策として、受動的な遮光と自然換気を提供する。

©︎ Justin Szeremeta | StudioSZ

都市の肺としての高架ランドスケープと生物多様性の促進

都市の肺として機能する高架ランドスケープは、空気を浄化し、熱を緩和し、生物多様性を支えている。入念に計画された植栽戦略により、緑地は公衆衛生への積極的な貢献者となる。

多様な樹種を重ねた植生はより清浄な空気を生み出し、密生した樹木による日陰の回廊は都市のヒートアイランド現象を軽減し、快適な微気候を形成している。戦略的に配置された土壌と植栽区画は生態系のステップストーンとして機能し、野生生物を誘引し都市の生物多様性を高める。

©︎ Justin Szeremeta | StudioSZ

すべての人々のための「クリエイティブパーク」

タイ最大の屋上芝生広場を有する「適応型高台」

クラウド11の中核には、社会的福祉と生態系レジリエンスを支える重要なインフラとしての景観が広がっている。

「適応型高台」として構想された広大な緑地は、洪水被害の多いバンコクの地盤より高く位置し、人々が集い、遊び、交流できる快適な微気候環境の中で、安全で居心地の良い市民のための地形を形成している。中心となるのはタイ最大の屋上芝生広場（祭典、公演、ピクニック、日常のレクリエーションに柔軟に対応する多目的スペース）である。

©︎ Justin Szeremeta | StudioSZ

世代と文化をつなぐ交流の場

中央中庭に囲まれ、ポケットパーク群が補完するこのランドスケープは、社会的凝縮器としてあらゆる人々に「何か」を提供する。

スポーツコートや遊び場は若い訪問者向け、セラピーガーデンや休憩スペースは高齢世代向け、文化空間はコミュニティ集会やイベントの舞台となる。こうした活動的・遊び心ある・瞑想的なゾーンをクラスター化することで、世代間・文化間の交流を促進する。

©︎ Justin Szeremeta | StudioSZ

この市民的役割をさらに拡大し、コミュニティファーム、ハーブガーデン、水遊び場が参加・学習・共同管理を促すことで、緑のインフラを市民的責任のプラットフォームへと変容させている。

子供や保護者から高齢者、障がい者まですべての人々が利用できるよう、ユニバーサルランプ、屋外リフト、日陰の歩道、路地や広場からエスカレーターや道路に至るきめ細かい動線ネットワークを設計に組み込んだ。広々とした公共空間は24時間開放され、多様なコミュニティがいつでも景観と関わることを可能にしている。

©︎ Justin Szeremeta | StudioSZ

統合された持続可能性と文化的基盤

環境的・社会的持続可能性への取り組み

〈クラウド11〉は環境的・社会的持続可能性の両方に注力している。

緑化屋根、日除けファサード、自然換気によりエネルギー需要を削減し、多孔質舗装、バイオスウェル、レインガーデン、砂利ろ過プランターが生態系に配慮したインフラで雨水管理を実現している。製材木材と再生プラスチックで製作された座席は廃棄物を削減しつつ、カラフルで耐久性に優れた低炭素の公共家具を生み出している。

©︎ Justin Szeremeta | StudioSZ

文化的遺産と生態学的価値の統合

植栽パレットは地元産植物を採用し、バンコクの豪雨に対する保水性を高め環境レジリエンスを強化すると同時に、文化的共鳴を育んでいる。

成熟した樹木を集団記憶のアンカーとして保存し、生きたランドマークとして統合することで、デザインは生態学的価値を遺産と結びつけている。果樹園・葦原・水田という歴史的景観を現代的な高架公園として再解釈することで、地域社会を文化的ルーツと結びつけつつ、未来に向けた活気ある緑地を提供する。

©︎ Justin Szeremeta | StudioSZ

24時間稼働する、統合された都市構造

高架ランドスケープは居住・業務・レジャー機能をシームレスに統合する基盤を形成し、社会的持続可能性を確保している。

クリエイタービレッジ、先進制作スタジオ、ホテル、教育センター、市場ホールが統合された都市構造内に相互接続され、循環ネットワークが各プログラムを結びつけ、アクセシビリティ向上と偶発的出会いを促進する。その結果、居住者・住民・訪問者すべてに、多様なスケールとレベルで都市生活が展開される適応性の高い24時間稼働地区が誕生した。

©︎ Justin Szeremeta | StudioSZ

単なる建築群を超え、〈クラウド11〉はバンコクの変革をもたらす新たなクリエイティブパークである。持続可能なランドスケープ戦略を統合することで、周辺環境へ還元する市民的領域を育み、環境的レジリエンス、文化的共鳴、コミュニティの絆を促進する。

ここでは持続可能性が遊び、休息、祝祭、そして周囲の環境への配慮を通じて社会的なつながりを生み出す。

以下、スノヘッタのリリース（英文）です。

Snøhetta’s Cloud 11 Completed in Thailand with the Country’s Largest Elevated Creative Park

A New Creative Park for Ecological and Community Integration

With a civic landscape doubling as ecological infrastructure, the 250,000 m² mixed-use urban regeneration project sets a precedent for future climate adaptation in Southeast Asian cities.

Snøhetta, in collaboration with A49 Architects, has unveiled its most extensive urban regeneration project in Asia for Magnolia Quality Development Corporation (MQDC). Located in the South Sukhumvit — one of Bangkok’s most vibrant cultural and innovation hubs — Cloud 11 is a mixed-use development defined by a central courtyard that serves as both ecological infrastructure and cultural park. The design harnesses the power of landscape to create an urban oasis that champions environmental resilience and community wellbeing.

Rooted in its surrounding context, the project is inspired by the layered conditions of Bangkok’s shophouse streets, elevated skytrain lines, and emerging high-rise towers. By sculpting the architecture from the space between these layers, Cloud 11 forms a new “in-between” realm. The result is a generous public landscape that bridges scales, reconnecting the neighborhoods, offering a vibrant civic space for all.

“Cloud 11 is envisioned as a new creative hub for Asia — a place where talent, ideas, and culture can thrive,” says Onza Janyaprasert, Project Founder and CEO Project Development of Cloud 11. “We feel a deep responsibility to give something back to Bangkok. The elevated park reflects that belief: a generous green space for the community, designed to bring people together and offer comfort, inspiration, and possibility.”

Bangkok faces significant urban challenges, including rising heat, air pollution, recurrent flooding, and one of the lowest public green space ratios in Asia – less than 7 m² per resident, compared to a regional average of 39 m². Snøhetta’s solution to these issues is a sustainable, landscape-based approach with a horizontal landmark and a raised landscape to prioritize openness, accessibility, adaptability, and community.

“Cloud 11 represents a transformative vision for sustainable urban regeneration,” says Richard Wood, Managing Director Asia at Snøhetta. “It presents an innovative adaptation model designed for Bangkok and other cities in the region, where environmental resilience is embedded into the urban fabric through an inclusive cultural park that will nurture both social and ecological synergy.”

Invented as a new platform for innovation, creativity, and sustainable urban living with easy access to public transit, Cloud 11 will bring together creative companies, artists, and entrepreneurs, while offering residents and visitors 24-hour access to cultural venues, retail, hotels, and generous green spaces.

The project is set to open to the public in March 2026.

Landscape-Driven Response to Urban Challenges

Cloud 11 responds to Bangkok’s pressing urban challenges, aligning with the Green Bangkok 2030 and Enter Bangkok 2050 initiatives that reflect Thailand’s commitments under the UN Framework Convention on Climate Change (UNFCCC) and the Paris Agreement. As a development supporting these national and global goals, the design employs a sustainable, landscape-based approach to offset the environmental impact of large-scale urban developments.

The design takes cue from Bangkok’s layered urban fabric, with a massing that responds to local climate conditions through iterative environmental wind and solar engineering. In contrast to the city’s ubiquitous vertical towers, the 250,000 m² development was conceived as an architecture of horizontality, blurring the boundaries between architecture and urbanism. Its diverse programs are organized around an open-air courtyard – the social and climatic heart of the project. Nestled between the tower and podium, the elevated courtyard serves as an innovative response to Bangkok’s flood-prone, heat-intense climate, providing passive shading and natural ventilation.

Acting as an urban lung, the elevated landscape filters air, mitigates heat, and supports biodiversity. The carefully curated planting strategies turn the green spaces into active contributors to public health. Layered with diverse species, the vegetation produces cleaner air, while shaded corridors with dense foliage reduce the urban heat island effect, creating a comfortable microclimate. Strategically distributed soil and planting patches serve as ecological stepping-stones, encouraging wildlife and enhancing urban biodiversity.

A Creative Park for All

At the heart of Cloud 11 is a landscape that serves as vital infrastructure for social wellbeing and ecological resilience. Conceived as an “Adaptable Highland,” the vast green space is elevated above Bangkok’s flood-prone ground, creating a safe and welcoming civic topography within a comfortable microclimate where people can gather, play, and connect. The centerpiece is Thailand’s largest elevated lawn – a flexible plateau for festivals, performances, picnics, and everyday recreation.

Framed by a central courtyard and complemented by a network of pocket parks, the landscape offers something for everyone as a social condenser. Sports courts and playgrounds cater to younger visitors, while therapy gardens and rest pockets serve older generations. Cultural spaces, meanwhile, provide a stage for community gatherings and events. By clustering these active, playful, and mindful zones, the design fosters intergenerational and intercultural exchange.

Expanding on this civic role, community farms, herbal gardens, and water playscapes invite participation, learning, and shared stewardship – transforming the green infrastructure into a platform for civic responsibility. To ensure accessibility to all, from children and parents to the elderly and those with disabilities, the design incorporates universal ramps, outdoor lifts, shaded walkways, and a fine-grained circulation network – from alleys and plazas to escalators and streets. The generous public spaces are open 24/7, enabling diverse communities to engage with the landscape at any time.

Integrated Sustainability and Cultural Grounding

Cloud 11 is dedicated to both environmental and social sustainability. Green roofs, shaded façades, and natural ventilation reduce energy demand, while porous pavements, bioswales, rain gardens, and gravel filtration planters manage stormwater through ecologically responsible infrastructure. Seating crafted from milled timber and recycled plastics reduces waste while creating colorful, durable low-carbon social furniture.

The project’s planting palette draws on locally sourced flora, enhancing water retention for Bangkok’s heavy rainfall and bolstering environmental resilience, while also fostering cultural resonance. By preserving mature trees as anchors of collective memory and integrating them as living landmarks, the design ties ecological value to heritage. The reinterpretation of the site’s history of orchards, reed fields, and rice paddies into a contemporary elevated park connects the community to its cultural roots while offering vibrant green spaces for the future.

The elevated landscape creates a platform to seamlessly integrate living, working, and leisure functions, ensuring social sustainability. Creator villages, advanced production studios, hotels, educational centers, and market halls interlock within a coherent urban framework, with circulation networks weaving these programs together to enhance accessibility and foster spontaneous encounters. The result is an adaptable, 24-hour district where urban life unfolds across scales and levels for occupants, residents, and visitors alike.

More than just a building complex, Cloud 11 is a transformative new creative park for Bangkok. By integrating sustainable landscaping strategies, the development cultivates a civic realm that gives back to its surroundings, fostering environmental resilience, cultural resonance, and community bonds. Here, sustainability is socially connective — through play, rest, celebration, and care for the environment around us.

スノヘッタ 公式サイト
https://www.snohetta.com/projects/cloud-11-2