CULTURE

J.コンドル設計「旧古河邸」ほかを管理する大谷美術館が運営支援を求めるクラウドファンディングを開始

CULTURE2021.05.23

ジョサイア・コンドル(Josiah Conder、1852-1920)の晩年の傑作として知られる、東京・西ヶ原にある「旧古河邸」と、実業家で政治家の磯野 敬が大正期に建設した近代和風住宅で、母屋と表門が国の重要文化財に指定されている文京区春日の「銅御殿」、両施設の管理・運営を行っている公益財団法人大谷美術館が、今後の運営支援を求め、2021年5月20日よりクラウドファンディングを開始しています。

旧古河邸とは

旧古河邸・大谷美術館の公式サイトの記載と、東京都建設局がWeb上で公開している資料によれば、JR駒込駅の北に位置する旧古河邸は、かつてこの地に邸宅を構えていた陸奥宗光(1844-1897)の次男・潤吉が、古河家に養子に入り2代目となった関係で古河家の所有に。3代目当主の虎之助(1887-1940)の代に、現在の洋館と庭園がつくられました。

旧古河邸 外観

旧古河邸 外観

J.コンドル晩年の傑作

旧古河邸は、本館建物と西洋庭園は、明治期に日本に招聘されたジョサイア・コンドルが設計したことで知られています。竣工・完成は大正6年(1917)。その2年後に、小川治兵衛(1860-1933)が洋風庭園から続く池泉回遊式の日本庭園を作庭しています。
旧邸宅および庭園共に、都内にあって、大戦中の空襲の被災などを免れ、竣工当時の姿を残しているのが稀有な点です。

旧古河邸 外観

戦後の激動を経て文化財として公開へ

和洋の庭園を含め、平成18年(2006)年には国の名勝(史跡名勝天然記念物)に指定されている「旧古河氏庭園」ですが、戦争を境に、紆余曲折を経ています。

戦後は財閥解体により古河家の手を離れ、大蔵省の所管となった直後に進駐軍が接収。昭和27年(1952)に解除された以降は大蔵省の所管(国の財産)となったものの、無人の状態が30年ほど続き、荒廃が進みました。
大正12年(1923)関東大震災が発生した際に救護所が設けられたこともある、旧古河邸敷地の開放を求め、地元・北区で運動が展開されたことなどを受けた東京都が、大蔵省からの無償使用貸付を得て、昭和31年(1956)4月より都の有料庭園として公開。昭和57年(1982)には東京都の名勝に指定されています。

邸宅(本館)の公開はその後で、かねてより古河家から邸の購入を持ちかけられていた、ホテルニューオータニの創業者・大谷米太郎(1881-1968)が、美術館として再生する事業を晩年に立ち上げ、東京都の助成金を得た財団法人大谷美術館が昭和58年~63年(1985~1988)に修復工事行い、東京都の管理許可のもと、平成元(1989)年より公開しています。

出展:東京都建設局:東京都における文化財庭園の保存活用計画(旧古河氏庭園)2章-2「歴史的変遷」
https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/jigyo/park/teien/index.html

ジョサイア・コンドル設計 旧古河邸 見取り図面(東京都建設局)

見取り図の画像:出展:東京都建設局:東京都における文化財庭園の保存活用計画(旧古河氏庭園)2章-2「歴史的変遷」

1階は洋、2階は和の空間

旧古河邸

旧古河邸 内観

古河邸の規模は、2階建て+地下1階。主構造は煉瓦造、小屋組と床梁は木造、一部鉄骨梁を使用。2階ホールにトップライトを設けている。
外壁は真鶴の新小松石(安山岩)の野面石積み、切妻屋根は天然スレート葺き、出窓や玄関ポーチ屋根は銅板瓦棒葺き。素朴で重厚な外観はスコットランドの建築や英国の別荘建築に近い。
旧古河邸はコンドルの最晩年の設計で、洋館内部に和室を完全な形で取り込んだ極めて珍しいプランである。
1階がすべて洋室で主に接客のための空間であるのに対し、2階は寝室を除いたすべての部屋が伝統的な和室である。和洋の様式を折衷することなく、巧みな構成で調和を図っている。和と洋を共存させる手法は、庭園の配置にも見られ、大きな特色となっている。(以下は、旧古河邸・大谷美術館の公式サイトより引用)

出展:旧古河邸・大谷美術館の公式サイト「旧古河邸について」
http://www.otanimuseum.or.jp/kyufurukawatei/about_summary.html

コロナ禍による閉園で運営難に直面

大谷美術館では、財団の事業としてこれまでに、旧古河邸および前述の銅御殿の保存活動を行い、入園・入館や見学会の料金、旧古河邸洋館喫茶室の売り上げを運営費の主として充ててきましたが、昨年来のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大の影響で長期休館を余儀なくされ、今後の運営の見通しがたたなくなったとのこと。貴重な文化財の保存のため、クラウドファンディングにて支援を求めるものです。

銅御殿(旧磯野家住宅)

銅御殿(旧磯野家住宅)内外観

石山修武氏らも支援

クラファンの支援者として、同庭園を望むマンションに住んでいたドナルド・キーン氏の義理の息子で、一般財団法人ドナルド・キーン記念財団の代表理事を務めるキーン誠己氏。建築家の石山修武氏(早稲田大学理工学部名誉教授)らが名を連ねています。

リターンとして、旧古河庭園の年間パスポートなど館内案内動画(15分)のオンライン視聴権もセットにあった招待券、旧古河邸と旧磯野家住宅・銅御殿それぞれで開催される予定のプライベートツアーの参加権、銅御殿の非売品記念写真集などが用意されています。
5月23日の午前中の時点で、目標金額の130%に達していますが、クラファンプロジェクトは一過性ではなく、今後の運営資金の新たな柱としたいとのことです。(en)

クラファンプロジェクト「大正から続く和洋の美しい調和を未来へ」
https://readyfor.jp/projects/otanimuseum

旧古河邸・大谷美術館公式ウェブサイト
http://www.otanimuseum.or.jp/kyufurukawatei/index.html

旧古河庭園公式Twitter @kyufurukawa
https://twitter.com/kyufurukawa

文京区 旧磯野家住宅(銅御殿)サイト
https://www.city.bunkyo.lg.jp/bunka/kanko/spot/shiseki/akaganegoten.html

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