京都市は、2020年9月にも概要を発表している、京町家の意匠形態に合う木製防火雨戸(下の画 / 概略図)について、2021年4月27日付けで国土交通大臣の認定(大臣認定)を取得したことを発表しました。地方自治体による防火設備の大臣認定取得は、全国でもこれが初となる事例とのこと。
京都市が市の貴重な財産と位置付ける京町家は、その9割が準防火地域などに存在しています。外壁の開口部に木製の建具が使われていることが多く、外からの火災に弱いという問題があります。防火性能を向上させるには、アルミサッシや鋼製シャッターなどに改修するしかないものの、現在認められている告示および認定仕様の防火設備では、建具の厚みが大きいため、京町家の意匠形態が保存できない、重くて操作性が低いといった別の課題がありました。
このような課題を解決するため、京都市などの「官」、早稲田大学などの「学」、京都府建築工業協同組合などの「産」の三者が連携し、京町家の意匠の保存・復原と火災に対する安全性の両立が可能となる「木製防火雨戸」の研究を2018年(平成30)より進めており、関連して、建築基準法適用除外制度の基準拡充についても並行して検討を重ねてきたものです(後述)。
今回の木製防火雨戸の大臣認定の取得によって、京町家の既存の木製建具を活かしたまま、木材を活用した防火性能の向上が可能となります(新築建物への活用も可能)。
京都市では今後、2021年秋頃の運用開始を目指して、木製防火雨戸の製作のポイントや注意点をまとめたマニュアルを作成し、性能確保のための適切な施工のチェック体制の検討を進めていくとのこと。
また、木製防火雨戸の普及は、地域産木材利用の促進にも有用であり、設置に係る支援策などについても検討される予定です。
京都市では、景観的、文化的価値を有する京町家などの歴史的建築物を、良好な状態で保存活用しながら次世代に継承できるよう、建築基準法の適用除外規定を活用した「京都市歴史的建築物の保存及び活用に関する条例」を運用しています。
法適用除外制度を活用する場合、規模や用途にかかわらず、全ての建築物に対して、最終的に震度6強から震度7相当の耐震性能を確保することを前提に、第一段階の耐震改修として、構造部材の健全化に加えて、震度6弱相当の耐震性能の確保を求めていました。
しかしながら現状は、京町家の約9割は住まいとして利用されており、標準的な規模の居住用京町家においては、当該耐震改修ですら居住者の負担が大きく、やむを得ず制度活用を断念し、法の適用を受けない範囲での部分的な改修に留めるなど、京町家の適切な改修が進まない状況となっていました。
この課題を解決するため、京都市では、法適用除外の際の技術的基準(京都市建築審査会の包括同意基準)を改正。上の画が示す条件はあるものの、水まわりの増築や屋根の全面的改修などを行う際に、高度な構造計算を行う必要がなくなり、基準に合致するものは、建築審査会の個別の審議を経る必要がないため、手続に要する期間が短縮されます。
今回の大臣認定および建築基準法適用除外制度の対象拡大は、京都が誇る美しい町並みを形成している京町家の保存と活用を、市が継続して後押ししていく考えを示したものです。
木製防火雨戸の規格の詳細などは、京都市の発表資料を参照してください。「VIEW MORE」をクリックすると、プレスリリースが表示されます。(en)
京都市公式ウェブサイト
建築基準法の適用除外制度における標準的な京町家の手続の簡素化(包括同意基準)(2020年9月24日)
https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000273648.html
京町家の意匠形態に合う木製防火雨戸を研究開発(2020年9月25日)
https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000274075.html
歴史的建築物の保存活用(建築基準法の適用除外)資料一覧
https://www.city.kyoto.lg.jp/menu4/category/54-24-0-0-0-0-0-0-0-0.html