三菱地所設計が、新時代のモビリティ・SMS(: Seamless Mobility System)に関する一連の構想の最新版をリリース、YouTubeでコンセプトムービーも公開しています(後述)。
同社では、フランス・カンヌにて今年3月11日から4日間にわたり開催された「MIPIM 2025(不動産プロフェッショナル国際マーケット会議)[*1]」にて「SMS」に関する最新のプレゼンテーションを披露。今後の本格展開が期待されている”空飛ぶクルマ”を都市・建築・人をつなぎ合わせるものとして捉え、建物の内外を問わずに人の移動をシームレスなものとする建物および都市の未来像を建築設計事務所として提案しています。
“空飛ぶクルマ” 4人乗りモデル 画像提供:三菱地所設計
プレゼンテーション「Seamless Mobility System」では、地上から空中にまで拡張する一連のモビリティの構想と、これにより変容する未来のまち・建築像を紹介。プレゼンテーション終了後には、海外のデベロッパーやメーカーからさまざまな質問や意見が寄せられ、活発なディスカッションが展開されたとのこと。
*1.MIPIM(Marché International des Professionnels de l’Immobilier):1990年より毎年開催されている、投資家や不動産・建設企業、メーカーなどが一堂に会する世界最大規模の不動産見本市。「MIPIM 2025」では90カ国・のべ2万人超が来場(三菱地所設計調べ)。日本からは国土交通省と民間企業・自治体14 団体による「ジャパンブース」が出展された。
三菱地所設計が提案する「SMS」とは、路上を走行するキックボードや、ビル内外の境界を越えて移動できる小型モビリティ、そしてこれを空中にまで展開させたVTOL(垂直離着陸機、Vertical Take-Off and Landing aircraftの略称。都市型の次世代航空交通として注目されている「次世代エアモビリティ」「空飛ぶクルマ」に代表される)といった一連のモビリティに関する提案です。
2023年8月にアイデアをまとめたブックレットを公開。その後も順次発信が行われています。
人びとの移動の利便性を向上し、都市空間をより可変的で自由に使えるものにするという可能性のもと、建築設計事務所からのアプローチとして、モビリティそのものの姿を描くだけでなく「進化したモビリティによる『新たな移動』がインストールされた、未来のまち・建築のあり方」の提案である点が特徴とのこと(三菱地所設計2025年3月31日プレスリリースより)。
「MIPIM 2025」では、2024年に発表したVTOLの構想をさらに拡張し、1人、2人、4人乗りのeVTOL(イーブイトール)モデル[*2]や、これにより姿を変える未来のビルの姿を提案しています。
*2.1人、2人乗りモデルについて:欧州における意匠権(欧州共同体意匠)を三菱地所設計では出願中。4人乗りモデルは、2024年に欧州共同体意匠DM/235029、日本における意匠登録第1775924号を取得済
1人、2人、4人乗りのeVTOL(イーブイトール)モデル 提供:三菱地所設計
三菱地所設計が提案するVTOL(図は2人乗り仕様)。モジュール(ユニット)の組み合わせで飛行モードと走行モードに変形可能
同社が提案するVTOLは、プロペラ・キャビン・走行の3つのユニットから構成される、全自動操縦のモジュラー(組み合わせ)型のモビリティシステムです。可変的なシステムでシームレスな移動を可能としています。提案によれば、離発着ポートと一体で機能し(後述)、ポートからポートへの空中移動に限らず、空中と地上への移動をもシームレスに行えるとのこと。
これらを前提に、VTOLが離発着する未来のビルのかたち、都市の可能性まで提案しています。
“空飛ぶクルマ”によって変わる未来のビルのすがた 提供:三菱地所設計
VTOLにより、ビルの「新たな玄関」となる屋上の姿。離発着ポートとして、旅客や荷物の乗降やVTOLとデバッグシステム・Podbusのモード転換などを行う想定。パーゴラ屋根にはプロペラユニットを懸架できる設計
三菱地所設計 YouTube「Seamless Mobility System / Mitsubishi Jisho Design Inc.」より(提供:三菱地所設計)
空中輸送のため、”荷捌き”スペースは屋上付近に設置。これにより従来は1階部分に計画された荷捌きや倉庫などのスペースを縮小化、よりオープンな都市空間を実現する
三菱地所設計 YouTube「Seamless Mobility System / Mitsubishi Jisho Design Inc.」より(提供:三菱地所設計)
デバッグシステム・Podbusを移動させる垂直動線が新たな機能として加わったビルのイメージ。従来のエレベータと異なり、1つのリフト(レーン)に複数のパレット(床板)を稼働させることで待ち時間を短縮するシステムを提案。三菱地所設計では、エレベータもまたモビリティのひとつと捉え、”シームレスであること”を追求している
三菱地所設計 YouTube「Seamless Mobility System / Mitsubishi Jisho Design Inc.」より(提供:三菱地所設計)
地上や上空から各階に直接、モビリティがアクセスできるようになり、新たに生まれる小型搬送ロボットやキックボードのポートが共存する「モビリティハブ空間」の提案。フロア構成だけでなく、ワーカーの働き方・オフィスでの過ごし方も変化していく
三菱地所設計 YouTube「Seamless Mobility System / Mitsubishi Jisho Design Inc.」より(提供:三菱地所設計)
VTOLの離発着ポートが屋上や中間階に設けられたビル群による未来の都市像(イメージ)
三菱地所設計 YouTube「Seamless Mobility System / Mitsubishi Jisho Design Inc.」より(提供:三菱地所設計)
詳細 / 三菱地所設計プレスリリース
「《空飛ぶクルマ》で変わる「これからのビル」とは? 都市×建築×次世代エアモビリティからなる一連の運用システムとデザインを提案」(2024年4月10日)
https://www.mjd.co.jp/news/55625/
《空飛ぶクルマ》で変わる「これからのビル」とは? 世界最大級の不動産見本市に初参加、当社のモビリティ×都市コンセプトを発表(2025年3月31日)
https://www.mjd.co.jp/news/74581/