CULTURE

隈研吾氏が手がけた小松マテーレ ファブリックラボラトリー〈fa-bo〉がリニューアル、10/1より一般公開

CULTURE2021.10.01

1943年創業、染色を基盤とした繊維加工事業を中心に、多彩な領域をカバーする化学素材メーカー、小松マテーレ(石川県能美市)が、建築家の隈 研吾氏(隈研吾建築都市設計事務所主宰)が改修設計を手がけた、同社のファブリックラボラトリー〈fa-bo(ファーボ)〉の内部をリニューアルし、2021年10月1日より一般公開します(予約制、9月21日より受付中)

小松マテーレのファブリックラボラトリー〈fa-bo〉は、1968年に建設された小松精練旧本社棟を、同社が製造する熱可塑性炭素繊維複合材料(カボコーマ・ストランドロッド)によってリノベーションされた企業ミュージアムで、2015年にオープン。
建物の外観は、地面と既存躯体を全長30,000mもの炭素繊維の組紐でつなぎ、ドレープのひだをモチーフとした、建物がレースを纏っているかのような、隈氏ならではのデザイン。改修前の課題でもあった耐震補強もこれらによってクリアし、耐震補強の方法とイメージを一新させた建築として話題となりました。2015年完成当時の施工は清水建設が担当しています。

〈fa-bo〉ではさらに、断熱性や遮音性にも優れている、小松マテーレのエコ建材「グリーンビズ」を建物の外構や屋上庭園に採用し、緑豊かな環境を整備するとともに、機能性および建物の付加価値をも高めました。

〈fa-bo〉はこれまで、関係者に限り、見学・利用が行われてきましたが、かねてよりあった建物の内外観の見学を望む声に応え、小松マテーレが産業ツーリズムの拠点として建物を再設定し、広く一般公開できるように内部をリニューアル、近隣施設を含めて準備を進めてきました。

〈fa-bo〉の見学は、展示品などの説明を行うアテンダントがつくツアー形式で、以下の5コースが設定されています(要予約、カッコ内は所用時間)

fa-bo見学コース一覧(アテンダー同行)
・fa-bo見学+ワークショップコース(所要時間:120分、料金:500円)
・fa-bo見学コース(所要時間:60分、料金:無料)

小松マテーレ ファブリックラボラトリー〈fa-bo〉

小松マテーレ ファブリックラボラトリー〈fa-bo〉俯瞰 ©︎小松マテーレ

一般公開にあたっての隈 研吾氏コメント
「fa-bo(ファーボ)はこれまで携わった中でも印象深い建築です。カーボンファイバーで補強したいという話を聞いたとき、「これは難しい」と思いました。コンクリートや鉄でできたものを、あんなフニャフニャなもので補強できるのかと。意匠的には最後まで不安でしたが、皆さんのご協力、熱意が良い結果を生んでくれました。小松マテーレさんとはその後も、持続可能な社会づくりの為に、材料メーカーとして何が出来るかという観点から、共同でものづくりを進めています。今回、我々の協業の一端をお見せする機会を得ました。ご覧いただければ幸いです。」

東京国立近代美術館「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」第1会場

〈小松マテーレ ファブリック ラボラトリー fa-bo〉模型(2021東京年 国立近代美術館「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」会場にて撮影 Photo by toha)、模型の下の展示台も小松マテーレが製作協力した

東京国立近代美術館「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」第1会場

2021東京年 国立近代美術館「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」会場にて撮影 Photo by team TECTURE MAG、最先端素材「カボコーマ」で製作された、国立競技場インタビューゾーンのランプシェード(見上げ)

〈fa-bo〉館内では、隈作品の建築模型などが展示されるほか、地場産業である繊維について学べる場「ワークショップ」が、今年6月に先行オープンしています(参加は有料)。
主な見どころは、以下の通りです。

ファッションアーカイブ
今回のリニューアル以前より陳列していた、1980年代から現在に至るまでに、小松マテーレが開発してきた約5万点の生地サンプルを1カ所に集約。これまでセミクローズ公開だった、世界的トップブランドに採用された素材や実際の商品の数々を見学できる。

小松マテーレ ファブリックラボラトリー〈fa-bo〉

#創業以来、78年の間につくられた生地のアーカイブ。その時代ごとのトレンドを感じることができる貴重な展示 ©︎小松マテーレ


建築資材の展示
小松マテーレ初の建材として事業化された、エコ建材の超微多孔スポンジ状セラミックス基盤「グリーンビズ」をはじめ、〈fa-bo〉にとって重要な素材である炭素繊維ロッド「カボコーマ・ストランドロッド」、玄武岩繊維「バサルト繊維」、木材と炭素繊維を複合した素材など、最新の耐震補強用建材の数々を展示。

小松マテーレ ファブリックラボラトリー〈fa-bo〉館内

小松マテーレと繊維産業の歴史を辿る展示 ©︎小松マテーレ

建築家・構造家とのコラボレーション
「小松マテーレ グリーンビズ・カボコーマ 建材への第一歩」と題して、隈研吾氏や、構造設計の権威・江尻憲泰氏(江尻建築構造設計事務所主宰)らとの協業や、国宝〈清水寺 本堂〉や〈富岡製糸場 西置繭所〉、重要文化財〈善光寺 経蔵〉のほか、兼六園〈見城亭〉などの文化財の修理や補強に、小松マテーレの炭素繊維複合材が使用された事例について、パネルや模型で紹介。最新事例として、隈氏が設計に携わった〈国立競技場〉で採用された素材に関する展示もあり。

小松マテーレ ファブリックラボラトリー〈fa-bo〉館内展示

〈国立競技場〉3-4F外周プランターの素材に採用された「バサルト繊維(玄武岩繊維)」の展示 ©︎小松マテーレ

小松マテーレ ファブリックラボラトリー〈fa-bo〉館内展示

〈国立競技場〉入場ゲート、屋上緑化、外周舗装材に採用された、小松マテーレ「グリーンビズ」の展示 ©︎小松マテーレ

小松マテーレ ファブリックラボラトリー〈fa-bo〉館内展示

群馬県富岡市〈富岡倉庫 3号倉庫〉 2019年 設計:隈研吾建築都市設計事務所+構造設計:江尻建築構造設計事務所
耐震補強材に小松マテーレ「カボコーマ」、本館1Fテラスに「グリーンビズ」を使用 ©︎小松マテーレ

小松マテーレ ファブリックラボラトリー〈fa-bo〉館内展示

〈富岡倉庫 第3倉庫〉展示パネル ©︎小松マテーレ

小松マテーレ ファブリックラボラトリー〈fa-bo〉館内展示

群馬県富岡市〈富岡製糸場 西置繭所〉の屋根、壁面補強材に「カボコーマ」を使用 ©︎小松マテーレ

小松マテーレ ファブリックラボラトリー〈fa-bo〉館内展示

京都府京都市 〈清水寺 本堂〉 舞台(本堂下)の耐震補強材に「カボコーマ」を使用 ©︎小松マテーレ

小松マテーレ ファブリックラボラトリー〈fa-bo〉館内展示

長野県長野市〈善光寺 経蔵〉の耐震補強材に「カボコーマ」を使用 ©︎小松マテーレ

小松マテーレ ファブリックラボラトリー〈fa-bo〉館内展示

箱根〈富士屋ホテル〉改修工事(2018-2020年)における、本館と花御殿の耐震補強材に「カボコーマ」、本館1Fテラスに「グリーンビズ」を使用 改修設計:石本建築事務所 ©︎小松マテーレ

小松マテーレ ファブリックラボラトリー〈fa-bo〉館内展示

石川県金沢市 兼六園茶屋〈見城亭〉 2019年 リノベーション 設計:隈研吾建築都市設計事務所+構造設計:江尻建築構造設計事務所
小屋組み部分補強材に「カボコーマ」を使用 ©︎小松マテーレ

小松マテーレ ファブリックラボラトリー〈fa-bo〉館内展示

茨城県猿島郡境町〈さかい河岸レストラン茶蔵〉 2019年 設計:隈研吾建築都市設計事務所
店内壁面と駐車場に「グリーンビズ」、境町産の猿島茶で染めた店内の装飾布に「オニべジ」を使用 ©︎小松マテーレ

小松マテーレ ファブリックラボラトリー〈fa-bo〉館内

展示風景 ©︎小松マテーレ


製造工程を学ぶ
同社が展開するフィルムやファブリックの展示。その広範囲にわかる用途や、それらを使って製造された鞄や靴なども展示する。

製造工程を学ぶ
各種マテリアルの生産・製造の一端を、ラボラトリーなどで紹介。

繊維について学べる場「ワークショップ」
小松マテーレの染色工程を、家庭用調理器具を用いて再現した体験ゾーン。「アップサイクル」をテーマに、主に工場から発生する端材が活用されている。

小松マテーレ ファブリックラボラトリー〈fa-bo〉館内

1F「ワークショップ」 ©︎小松マテーレ

小松マテーレ ファブリックラボラトリー〈fa-bo〉館内

1F「ワークショップ」 ©︎小松マテーレ


〈fa-bo〉がある小松マテーレの本社横には、同社として初となるリアル店舗、ファクトリーショップ「mono-bo(モノーボ)」が、今年6月にオープンしています。素材の企画・製造・販売までを一貫して行う、工場直販型の店舗で、これまでのBtoB事業とは異なる、消費者との直接の接点の場としてオープン。こちらは予約なしで利用できます(営業時間:10:00-18:00)

小松マテーレ ファクトリーショップ「mono-bo(モノーボ)」

ファクトリーショップ「mono-bo(モノーボ)」内観 ©︎小松マテーレ

ファクトリーショップ「mono-bo(モノーボ)」取り扱い商品

芝生の養生シートとしてつくられたメッシュ素材をアップサイクルした「シアーバッグ」 ©︎小松マテーレ

ファクトリーショップ「mono-bo(モノーボ)」

上の画像「シアーバッグ」を同じ素材による養生シート(使用イメージ) ©︎小松マテーレ

ファクトリーショップ「mono-bo(モノーボ)」の1Fには、カフェスペース「mate-café(マテカフェ)」が設けられ、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)対策として、建築家・坂 茂氏が監修し、小松マテーレと共に開発した、抗ウイルスパーティション「PPSA」が実際に設置されています。

坂 茂監修 抗ウイルス卓上パーティション〈PPSA(卓上タイプ)〉

坂 茂監修 抗ウイルス卓上パーティション〈PPSA(卓上タイプ)〉設置イメージ

ファクトリーショップ「mono-bo(モノーボ)」1Fカフェ

ファクトリーショップ「mono-bo」1Fカフェ ©︎小松マテーレ

施設名称:小松マテーレ ファブリックラボラトリー〈fa-bo〉

所在地:石川県能美市浜町ヌ167番地 小松マテーレ本社敷地内(Google Map)
入場料:無料(ワークショップへの参加は有料)
営業時間:10:00-17:00
定休日:火曜、年末年始、GW、夏季休業期間(「mono-bo」の定休日に準じる)
予約受付開始日:2021年9月21日(火)
一般公開開始日:2021年10月1日(金)予定
予約方法:電話またはウェブサイトにて受付
予約専用電話番号:0761-58-0374(受付時間 平日10:00-17:00)
予約専用ページ
https://www.komatsumatere.co.jp/cabkoma/fabo.html

【購読無料】空間デザインの今がわかるメールマガジン TECTURE NEWS LETTER

今すぐ登録!▶

小松マテーレ 関連記事

PRODUCT2020.12.09

坂 茂監修 抗ウイルス素材を用いた新型パーテーション

小松マテーレが〈PPSA〉12/7販売開始
PRODUCT2021.05.19

坂 茂監修 紙管と布でできた抗ウイルス卓上パーティション

小松マテーレが〈PPSA(卓上タイプ)〉発売
FEATURE2021.08.05

【会場レポート】「隈研吾展 新しい公共性をつくるための😸の5原則」

東京国立近代美術館にて9月26日(日)まで

RECOMMENDED ARTICLE

  • TOP
  • CULTURE
  • TECHNOLOGY
  • 隈研吾氏が手がけた小松マテーレ ファブリックラボラトリー〈fa-bo〉がリニューアル、10/1より一般公開
【購読無料】空間デザインの今がわかるメールマガジン
お問い合わせ