グローバルカンパニーの1つ、ダイソン社の創業者兼チーフエンジニアのジェームズ・ダイソン(James Dyson、1947-)氏の著書『インベンション 僕は未来を創意する』が5月24日に刊行されています。
昨秋に刊行された同著(原題 Invention : A Life)の待望の和訳です(訳者:川上純子氏)。
ダイソン社の起業は1993年、英国の地方の小規模なスタートアップから。現在では、シンガポールを本社とする、世界全体で1万3,000名を超える従業員を雇用するグローバルテクノロジー企業へと成長しています。
幾多の失敗を経て、サイクロン式掃除機や羽根のない扇風機、ヘアドライヤーなど、さまざまなテクノロジーやプロダクトを生み出してきたジェームズ・ダイソン氏。本書では、ジェームズが自身の人生を振り返り、その尽きることのない向学心、未知の世界に踏み出す大胆さがテキストから浮かび上がるとともに、エンジニアや科学者という存在の社会における重要性や、自立の精神の重要性などが説かれます。
#Dyson YouTube “The trailer, from Invention: A Life, by James Dyson”(2021/09/16)
YouTubeサイトでの再生で日本語字幕表示可能
著者は自身の子供時代も振り返り、アートと長距離走が好きなノーフォークの学生が、1960年代にロンドンのロイヤル カレッジ オブ アートで、当時の優れたデザインに囲まれて過ごす日々や、卒業後に、発明家で起業家のジェレミー・フライのもとで実践的に学んだ経験、革新的な上陸用高速艇「シー トラック」の開発、そして、サイクロン式掃除機に代表される革新的なプロダクトを生み出した後も、さまざまな製品を世に送り出し、常に先鋭的な新技術に挑戦していく、不屈の精神をもった起業家の姿が描かれます。
また、本書では、ダイソン社のサクセスストーリーだけでなく、技術開発の「失敗」から学び得た視点も盛り込まれています。
コントラロテーター洗濯機、ディーゼルトラップ、ダイソンEV(電気自動車)、人工呼吸器など、研究開発されつつもビジネス的視点から製品化を諦めざるをえなかった逸話も明らかに。
加えて、教育、慈善事業、農業など、さまざまな分野でダイソンが培ったテクノロジーや知見を活かし、新たなアプローチで取り組んでいるプロジェクトも紹介されます。
本書では、ジェームズおよびダイソン社のがこれまで歩んできた長い道のりのほか、英国の製造業が直面してきた困難やチャレンジに関しても触れられており、長い経済停滞期にある日本の現状とも照らし合わせることができるでしょう。
また、彼にさまざまなインスピレーションを与えた、小型大衆車のMINI(ミニ)の開発で知られるアレック・イシゴニス卿、ジェットエンジンを開発したフランク・ウィトル、アメリカの建築家で発明家のバックミンスター・フラーといった、エンジニア、発明家、デザイナーたちへの思いも述べられています。
著者:ジェームズ・ダイソン
訳者:川上純子
装幀:四六判(ソフトカバー)
総頁数:464ページ
ISBN:978-4-296-11306-4
定価:2,420円(税込)
発行元:日経BP 日本経済新聞出版[*]
刊行日:2022年5月24日発行
*日本経済新聞社の子会社で書籍出版事業を手がける日経BPと日本経済新聞出版社が2020年4月に経営統合
詳細
https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/22/05/02/00146/
なお、本書の著者であるジェームズ・ダイソン氏は、本書の収益金をすべて、エンジニアリング、先端技術や科学の分野を主軸に次世代の教育・育成に取り組む一般社団法人日本先端科学技術教育人材研究開発機構(JASTO)に寄付する予定です。
書籍の刊行にあわせ、挫折や苦難とともにある挑戦のストーリーが凝縮された特設頁もダイソン社のウェブサイトにオープンしています。
ダイソン 特設ページ
https://www.dyson.co.jp/JamesDyson.aspx