丹下健三(1913-2005)建築作品における設備設計を数多くの手がけた、設備設計家でプラントエンジニアの川合健二(1913-1996)が自ら設計した”鉄の家”ことコルゲートハウス(川合健二邸)が、日常から切り離された生活を味わえる宿として再生されました。
旧川合健二邸は、インフラから脱却し、自然の中で自給自足の生活を送りたいという想いから、川合が愛知県豊橋市内に自邸として設計したもの。セルフビルドで建設され、1966年に竣工した住宅建築です。
日本におけるモダン・ムーブメントの建築として、DOCOMOMO(Documentation and Conservation of buildings,sites and neighbourhoods of the Modern Movement)にも選出されています(No.119)。
施設を運営するFOOD FORESTによれば、旧川合健二邸は日本最古のコルゲートハウスとのこと。
開業する〈CORRUGATED HOUSE〉では、敷地の中で自給自足の生活を送り、家族や大切な人と分け合う”自給多足”も行いながら、日常を見つめ直し、社会を俯瞰をする1日を過ごしてもらうことを目的としています。このため、エアコン・暖房設備は最小限での稼働となり、建築当時の空間を体感できるとのこと。
また、開業にあたり、周辺敷地も整備。設計者の建築思想をランドスケープにも取り込み、”地球と縁を切ってみる体験ができる、1日1組限定、1棟貸しの宿泊施設としてリデザインされました。
敷地内には、築約100年の古民家も移築され、ゲストハウスとして運用されます。
プロジェクトチーム
運営:FOOD FOREST
プロジェクトデザイン:ADDReC
光環境デザイン:ambiguous
まちづくりアドバイス:micro development inc.
プロジェクトメンバー各氏コメント
発起人:冨田 円(FOOD FOREST代表)
「このプロジェクトは、激動の社会変革に追いつくよりもあえて環境と時間にゆっくり身を任せ、調整をするという次世代の旅の未来を考え実装する実証実験施設として、旅の目的地をコンセプトで素敵に彩り、旅する理由を作り出した初めてのプロジェクトになります。」プロジェクトデザイン:福島大我(ADDReC 代表取締役)
「ADDReCではプロジェクトのプロデュースをさせていただいております。
これからの新しい時代に、過去からの何を残していけるか、未来に向けて何を新しくするか。そういうことを丁寧に考えて、リノベーションにより価値を再解釈したり、新しい価値を生み出していくことの大切さと向き合わせていただいたプロジェクトになります。」光環境デザイン:服部祐介(ambiguous 代表)
「ambiguousは、このコルゲートの空間が本来持つダイナミズムを演出しつつ、なぜかホッと落ち着くという非日常的な光の体験を目指しました。この空間ならではの”暗がりの豊かさ”をお楽しみ下さい。」まちづくりアドバイス:守屋真一(micro development inc.CEO)
「まちの中に新たな”点”ができたことでエリアにどのようなポジティブな影響が出せるか。まちづくりは建築ができることがゴールではなく、たくさんの人が関わることで有機的に拡張されていくことでできる結果だと思います。これからはじまる出来事を一緒に考えていきたいと思います。」
所在地:愛知県豊橋市内 ※非公開(宿泊利用者には通知あり)
形態:1棟貸し、1日1組限定
定員:5名(最大利用数)
部屋タイプ:ツイン1(12m²)・ダブル1(8m²)・シングル1(6m²)
宿泊料金:素泊まりプラン 15万 / 2DAYS FREE PLAN 30万 / レンタカーパッケージプラン 17万/泊(30時間)
アメニティ:公式ウェブサイト参照
ゲストハウス(別棟)
概要:築年数約100年、川合健二が生まれた時代の豊橋市内の古民家を移築した1日2組限定のゲストハウス。フルリノベーションされたワークスペース・共用キッチン・共用ダイニングスペース・水洗トイレ・シャワールームを完備。
定員:2組まで
ルームA 和室 1-3名(8畳)/ ルームB 和室 1-2名(6畳+ワークスペース)
料金:ルームA 6,000円〜(1名)、ルームB 7,000円〜(1名)
アメニティ:公式ウェブサイト参照
CORRUGATED HOUSE Website
https://corrugatedhouse.com/
本稿作成にあたり、編集出版組織体アセテートWebsiteのアーカイブを参照した
https://www.acetate-ed.net/bookdata/008/008.html