建築家の隈 研吾氏率いる隈研吾建築都市設計事務所がスコットランド北部の都市ダンディーに設計した〈V&Aダンディー(V&A Dundee)〉は、建築の一部を川の中にはり出し、川と建築が1つに融合するミュージアムです。
建物を水平に貫通する特徴的な「孔」は、倉庫街によって分断されていたダンディーの都市とウォーターフロントを再接続し、都市のアクティビティをウォーターフロントにまで引き込んでいます。
(以下、隈研吾建築都市設計事務所から提供されたプレスキットのテキストの抄訳)
〈V&Aダンディー〉は、スコットランド北部の都市ダンディーのウォーターフロントに建つ、ロンドンの〈ヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアム〉の分館である。
スコットランドでは初のデザインミュージアムであり、スコットランドの新しい文化の発信拠点となることを期待されている。
敷地はダンディー川の南側を流れるテイ川に面し、建築の一部を川の中にはり出すように建てることで、川と建築が1つに融合した新しい環境調和型建築、地形的建築のあり方を提案している。
スコットランド北部のオークニー諸島の美しい崖からヒントを得て、プレキャストコンクリートのバーを、角度を変化させながら水平に積み重ね、陰影と変化のあるファサードをつくり出しており、パラメトリックデザインを駆使することで、自然のもつランダム性を、建築に導入している。
建物の中央には、水平に貫通する洞窟のような大きな孔をあけた。ダンディー市の中心軸であるユニオン・ストリートと、テイ川の美しい自然とを、この「孔」を媒介としてつなげている。
スコットランドを代表する港湾都市として栄えたダンディーは、20世紀には倉庫群によってウォーターフロントと都市とが分断されてしまった。
その倉庫群を一掃し、まちとウォーターフロント、都市と自然とをつなぎ直そうという、野心的なアーバンデザインの核として、このミュージアムは構想された。
建物に孔をあけることで、都市のアクティビティが、ウォーターフロントにまで伸び、都市と自然との再接続が実現し、ウォーターフロントが、歩行者のための回遊空間として復活した。都市と自然をつなぐ孔のアイデアは、日本の神社の鳥居からヒントを得た。
パネルをランダムに取り付けることで、室内にも地形のように、おおらかであたたかい空間を創造した。上に向かって広がっていくユニークな断面形状と相まって、この空間は、通常の美術館のホワイエとはまた違った拡がりと開放感を獲得した。
このホワイエは、アートのためだけの空間ではなくさまざまなコンサートやパフォーマンスにも使われ、市民の交流の中心となる、コミュニティのリビング・ルームとして使われている。
「V&A Dundee」隈研吾建築都市設計事務所 公式サイト
https://kkaa.co.jp/project/va-dundee/