CULTURE

能登半島地震被災地に"みんなの家" 計6棟を建設へ

伊東豊雄、KDa、o+h、EIKA studio、近藤哲雄、工藤浩平、妹島和世らが参画、珠洲市・輪島市・能登町にてプロジェクトが進行中

CULTURE2024.11.30

2024年1月1日に発生した能登半島地震。被災した人々の拠り所となる「みんなの家」プロジェクトが、珠洲市、輪島市、能登町の3市町で始まりました。
建築家の伊東豊雄氏が理事長を務める、特定非営利活動法人HOME-FOR-ALLが発表したもので、(2024年11月20日プレスリリース)、建設数は6棟。そのうちの1つ、珠洲市狼煙町の「狼煙のみんなの家」は、被災地支援のために日本財団が立ち上げた「みんなの憩いの場プロジェクト」に採択されており、年内の着工を予定しています。
そのほかの5棟も今後次々と建設のための手続きを進め、2026年春以降の順次オープンを目指すとのこと。

建物の設計者は、2011年の東日本大震災で被災した地域・東北での「みんなの家」プロジェクトにも参加した、クライン ダイサム アーキテクツ(Klein Dytham architecture: KDa)、大西麻貴と百田有希の両氏が率いるo+h(オープラスエイチ)らが名を連ね、地元の団体や自治会とともに、サステナビリティを念頭に、地域の人々の想いや文化を尊重した建築のありかたを目指すとのこと。

能登風景

入り組んだ地形が形成する能登の海岸線の風景、黒瓦や下見板貼りの建物が溶け込み、美しい(提供:HOME-FOR-ALL)


能登半島「みんなの家」プロジェクト 6棟の概要

狼煙のみんなの家

能登半島被災支援「みんなの家」イメージ

「狼煙のみんなの家」イメージ(設計:クライン ダイサム アーキテクツ)

概要:能登半島の最奥地の1つ・狼煙(のろし)、道の駅と仮設住宅に隣接する。地元で愛される2本の桜の傍に計画中。
概要:屋根は地元の能登瓦をリサイクル、外壁は下見板貼りとし、能登で親しまれてきた建築の諸要素を継承しながら、未来に向けた「みんなの家」らしい姿を目指している。震災以前に地元の人々が集っていた神社の仮宮や、集会所の機能も集約し、祭事や地域活動の拠点とするほか、食堂や飲み屋にもなる。地元の人およびこの地を訪れる人が未来について語りあえるような心地よい場所を目指す。
建設地:石川県狼煙町
設計:クライン ダイサム アーキテクツ
運営:NPO法人奥能登日置らい

鉢ヶ崎のみんなの家

能登半島被災支援「みんなの家」イメージ

「鉢ヶ崎のみんなの家」イメージ(設計:IKA studio+o+h+伊東豊雄建築設計事務所)

概要:能登半島の先端部分の南側、海水浴場などレジャー施設が集まる地域で、現在は数多くの仮設住宅が建設中。その一角にある珠洲ホースパークの敷地内に、馬を通じて互いに心身をケアする空間とした、人々が集まるきっかけとなる居場所として計画中。
仮設住宅の住民や地域住民、復興支援者や復旧工事に携わる方々などが立ち寄れる食堂や、馬の様子を眺めながら学びに集中できるワーキングスペース、こどもの遊び場にもなる小上がり、屋外のシェアキッチンが点在し、その間を屋根のある半屋外空間がつなぐ。施設運営は、オフグリッドを推進する一般社団法人が担当。
建設予定地:石川県珠洲市蛸島町
設計:EIKA studio(榮家志保) + o+h(大西麻貴+百田有希) + 伊東豊雄建築設計事務所
運営:一般社団法人みんなの馬

大谷のみんなの家

能登半島被災支援「みんなの家」イメージ

「大谷のみんなの家」平面計画(設計:近藤哲雄建築設計事務所)

概要:石川県大谷町は外浦に面した能登半島のなかほどに位置する、黒瓦のおだやかな町並みが印象的な海沿いの町である。目的がなくてもみんながふらっと立ち寄れるような場所、そして隣接する小中学校との連携も考え、様々な催しや野菜の即売所等ができるような充実した半外部空間が求められているます。この地域に長く続いてきた歴史や文化を次世代に継承し、さらに豊かなものにできるようなみんなの家にしたいと考えている。
建設予定地:石川県珠洲市大谷町
設計:近藤哲雄建築設計事務所
運営:NPO法人外浦の未来をつくる会(※法人設立準備中)

飯田のみんなの家

能登半島被災支援「みんなの家」イメージ

「飯田のみんなの家」イメージ(設計:PERSIMMON HILLS architects)

概要:商店街の中心部に計画。寺子屋や銭湯を運営する若手移住者が主体となり、学びやまちづくりに取り組む団体が運営する。周辺のプレイヤーと連携しながら、「公園のようなまち」としての復興を目指す拠点となる予定。
建築の仕上げはラフなデザインとし、運営を並行してDIYなどで発展させていく計画。建物の内部照明が点灯する夜間には、ぼんぼりのように周囲を照らし、まちのシンボルとなる。
建設予定地:石川県珠洲市飯田町
設計:PERSIMMON HILLS architects(パーシモンヒルズ・アーキテクツ)
運営:NPO法人ガクソー

深見のみんなの家

能登半島被災支援「みんなの家」イメージ

「深見のみんなの家」イメージ(設計:式地香織建築設計事務所+松田彩加建築設計事務所)

概要:石川県輪島市の中心部から、白米千枚田に続く国道249号沿いに7つの集落が広がる深見町は、農業・漁業・林業といった人々の生業と自然の均衡が生み出す、里山里海(さとやまさとうみ)の風景が美しい地域。地震やその後の集中豪雨によって失われた風景を再生するため、人々の生業を創出し、豊かな生活文化を継承する「竈(かまど)と囲炉裏のある食堂」と「地域をケアする浴場」を計画中。欅(けやき)や橡(とち)の林業で栄えた集落の記憶を留め、次世代に伝えるため、建物の設計では解体家屋の古材の活用を検討している。
建設予定地:石川県輪島市深見町
設計:式地香織建築設計事務所+松田彩加建築設計事務所
運営:NPO法人紡ぎ組

鵜川 みんなの番屋

能登半島被災支援「みんなの番屋」イメージ

「鵜川のみんなの番屋」イメージ(設計:工藤浩平建築設計事務所)

概要:石川県能登町南部、漁業で栄えてきた鵜川町のまちの中心部で計画中。鵜川町には約300世帯の人々が住んでいたが、震災発生後は70〜80世帯が仮設住宅に移ることを余儀なくされた。鵜川のみんなの家は、漁業というまちの生業に着目し、鵜川町ならではのみんなの家とすべく、魚をテーマした食堂を通して再びみんなに開かれたコミュニティの場をつくっていきたいと考えている。震災を機に立ち上げた「まちづくり推進委員会」と建築家が一緒になって復興のシンボルをつくる。
建設予定地:石川県鳳珠郡能登町鵜川
設計:工藤浩平建築設計事務所
アドバイザー:妹島和世
運営:一般社団法人能登を紡ぐ(※法人設立準備中)

能登半島被災支援「みんなの家」プロジェクト

地元住民とのディスカッションの様子(提供:HOME-FOR-ALL)

能登半島被災支援「みんなの家」プロジェクト

珠洲市・地元住民が被災直後から無償で提供している、薪や井戸水を利用した仮設風呂や洗濯場をプロジェクトメンバーが視察する様子(提供:HOME-FOR-ALL)

プロジェクトメンバー
設計:上記の通り
プロジェクトコーディネーター:吉川優子(クライン ダイサム アーキテクツ)
運営コンサルタント:松村拓也
連携自治体:珠洲市、輪島市、能登町
連携団体:瓦バンク、能登復興建築人会議

スケジュール
・2024年8月 基本設計、実施設計、運営法人設立準備
・2024年12月 狼煙町のみんなの家着工(そのほかの5棟も順次着工予定)
・2025年4月 運営準備、ワークショップ実施
・2026年春頃 順次オープン

特定非営利活動法人HOME-FOR-ALL ウェブサイト
https://www.home-for-all.org/


「みんなの家」とは

「みんなの家」は、2011年3月11日の東日本大震災発生後に開始されたプロジェクト。被災地で家を失った人々のために、建築家と住民が対話を重ね、人々が集まり、ともに居心地よく過ごせる「もうひとつの家」を目指して設計・建設された。その活動は自治体や全国の企業、団体の支援によって拡がり、東北では16棟、地震や水害に見舞われた九州・熊本では、規格型を含む約130棟以上が建設されている。

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