都市の余白に生み出す公衆浴場

環状交差点により生まれた円形空間を一時的にハックする〈ラウンドアバウト・バス〉

CULTURE 2025.08.04

〈ラウンドアバウト・バス（Round About Baths）〉設計：レオポルド・バンチーニ（Leopold Banchini）

スペインの都市ログローニョに設計された〈ラウンドアバウト・バス（Round About Baths）〉は、さまざまな都市に点在する環状交差点「ラウンドアバウト」を一時的に活用した、更衣室、蒸気室、冷水噴水池を組み合わせた入浴施設です。

スイス・ジュネーヴを拠点に活動するスイス人建築家レオポルド・バンチーニ（Leopold Banchini）が設計しました。

注目ポイント

アクセス不能な都市空間「ラウンドアバウト」

立ち寄りがたい噴水空間を活用した、親密で共同的な場

会期後には再利用される木材を用いた構造体

再び都市の余白へと戻り、かすかなビジョンだけを残すラウンドアバウト

（以下、レオポルド・バンチーニから提供されたプレスキットのテキストの抄訳）

都市に点在するアクセス不能な円形空間の再解釈

車両が果てしなく回り続ける環状交差点「ラウンドアバウト」は、都市におけるアクセス不能な円形の空間として点在している。〈ラウンドアバウト・バス〉は、この円形の空間を描き出し、意味を探し求めるプロジェクトである。

〈ラウンドアバウト・バス〉は、車の流れに囲まれた無機質で近寄りがたい噴水を、裸の人同士が水の中で出会い、親密で共同的な体験へと変容させる、一時的な公共空間である。

都市の中心でプライバシーを提供する一時的な建築

19世紀の社会運動により、労働者階級の公衆衛生の促進を目的として築かれた都市の公衆浴場は、時代の変化とともに次第に閉鎖され、今や私的かつ商業的な「ウェルネスセンター」へと置き換えられてきた。

更衣室、蒸気室、冷水噴水池を組み合わせたこの入浴施設は、都市の中心に位置しながらも、利用者にプライバシーを提供する。

この一時的な公共プログラムは、車中心の都市環境に潜む隠れた可能性をあらわにし、まちのインフラをハックすることで、忘れ去られた空間に対する認識を変革することを試みている。

記憶と幻影として残る公共空間の可能性

この入浴施設の壁は、未加工の木材パネルで覆われた規則的な木造構造で構成されており、会期後には再利用することができる。

一方で、噴水そのものは再び役割を失い、無用の存在へと戻っていく。そこには、公共空間の可能性を示唆する記憶と、かすかなビジョンだけが残される。

絶え間ない交通の円環の中心、「不在」によって形づくられたこの場所は、やがて再び忘却の彼方へと消えていくのである。

Drawing

以下、レオポルド・バンチーニのリリース（英文）です。

Project: Round About Baths
Architect: Leopold Banchini (https://leopoldbanchini.com, insta @leopoldbanchini)
Location: Concentrico 2025, Logroño, Spain (h;ps://concentrico.es )

Text:
Cars dancing endlessly round and around, drawing inaccessible circular spaces punctuating our cities, looking for meaning.
What about roundabout what?
Round About Baths is a temporary public building transforming an impersonal and inaccessible fountain trapped at the centre of relentless traffic into an intimate and communal experience where undressed bodies meet in water. Pride of 19th century’s social movements promoting public hygiene for the working class, urban public baths have slowly closed their doors to be unsurprisingly replaces by private and commercial “wellness centres”, mirrors of our times.
Combining changing rooms, steam rooms and cold-water fountain basins, Round About Baths offers privacy while occupying a central point in the city. Revealing hidden potentials in a car dominated urban environment, the temporary public program hacks the street equipment and transforms our perception of this forgo;en space.
The high walls of the bathing facility are made of a regular timber structure cladded with uncut wooden panels temporarily used for the installation. If the panels will find a second life a\er the festival, the fountain itself will go back to its uselessness, leaving behind only memories and new vision of what public space could be.
The heart of the restless circle of motion, shaped by absence, will go back to oblivion.

レオポルド・バンチーニ公式サイト
https://www.leopoldbanchini.com/

都市の余白に生み出す公衆浴場