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ここまできている! 建材のエコ・サステナブルな取り組み

[Report]JAPAN SHOP / 建築・建材展

建築・建材分野で、多くの企業が環境問題に取り組んでいます。最近では、建材選定に欠かせない見本帳やカタログのデジタル化も進み、廃棄物削減への取り組みがより多く見られるように。「捨てない」「活かす」といったアップサイクルや水平リサイクルの事例も増えています。また、製造時だけでなく梱包・配送・自社製品廃棄物の回収といったロジスティクスなども含めたCO2排出量削減への取り組みにも注目が集まります。

2024年3月12日~15日、東京・有明の東京ビッグサイトで、街づくり・店づくり総合展「日経メッセ」が開催され、JAPAN SHOP2024(出展社数203社)、建築・建材展2024(同240社)、ライティング・フェア2024(同75社)などへ多くの建築関係者が訪れました。ここでは編集部が注目したさまざまなサステナブル、アップサイクルなどに取り組む企業をレポートします。

リサイクルを前提に開発された建材たち!

商品の開発段階から、使用後のリサイクルのしやすさを考慮して開発された建材が生まれています。
これまでもバージン材料の使用量やCO2排出量を減らす目的で「リサイクル材料を使用」「再生材料〇%含む」といった製品はありましたが、その先の取り組みとして、繰り返し再生しやすいものとして商品設計、生産された建材や、循環するリサイクルへの取り組みが見られました。

制作過程でおよそ半数が端材となっていた突板(写真提供:大和ツキ板産業)

リリカラ(東京都新宿区)は欧州大手の床材メーカー・Tarkett(ターケット)社のタイルカーペット「DESSO(デッソ)」を展示。表面の繊維部分は廃棄された漁網や使用済みのカーペットを100%リサイクルしたナイロン糸「ECONYL(エコニール)」で、バッキングは回収されたタイルカーペットのバッキングとオランダの水道会社の浄水過程で使用された炭酸カルシウムとでつくられた「EcoBase」によって構成されています。

さらに使用後には回収され、Tarkett 社が立ち上げたリサイクルセンターで繊維部分とバッキングを分離。その後、再び「ECONYL」、「EcoBase」として再生され、再度「DESSO」が製造されるサイクルが確立されています。

デザイン性が高く、ヨーロッパらしい鮮やかな色合いが揃う「DESSO」(写真提供:リリカラ)

 

イシカワ(東京都渋谷区)は、ドイツ製のエコ床材「Modular One(モジュラーワン)」を紹介。通常、シートフローリングは複数素材で構成されていますが、同製品は表面シート、基材、バッキング層のすべてを再生可能な同一のポリオレフィン樹脂で構成しています。

また、5.5㎜と薄く、既存床の上にも接着剤を使用せずはめ込んでいくクリック式で施工でき、リニューアルの現場でも廃材を出さず省施工にもつながります。製造時、施工時、リサイクルの段階においても環境へ配慮された床材といえるでしょう。

「Modular One(Oak Pure natural)」の施工例。材料のオレフィンは牛乳パックにも採用されている素材で、リサイクルしやすいのが特徴

廃棄物を建材に! ゴミを出さない、捨てない取り組み

建材にはさまざまなサイズ・規格があり、製造過程で端材が発生したり、欠け、割れなどの規格外品が生じたりしてしまいます。仕上げ用では廃番・リニューアルなどで発生する在庫も大きな問題でした。

これまでそうした端材などは主にサーマルリサイクルで製造時の燃料などへ利用されていましたが、CO2排出量削減、廃棄物の削減、バージン材料の保護という観点からマテリアルリサイクルが進み、デザイン面でも選択肢を増やしています。

リリカラは、コーヒーかすや廃棄される地図、ペーパータオル、ファブリック製品製造時に出るオーガンジーの端材などを再利用した素材系壁紙「リリカラマテリアルズ」を展示。リサイクルパルプ、銀箔、アルミ箔くずなど、リサイクルとクロスとしてのデザインの両立に取り組んだ製品群です。

「リリカラマテリアルズ」は使用した再生材料の風合いが分かるものもあり、利用者の環境意識向上にもつながりそうだ

 

大和ツキ板産業(広島県福山市)は、天然木を0.2㎜の薄さにスライスする突板の製造過程で、極薄のために生じてしまう端材や未利用材を有効活用した新しいプロダクトを商品化。アップサイクルブランド「FORESTERIOR」として立ち上げました。木目の出方や色味の美しさを生かして重ね合わせたものや、カットした突板端材を1枚1枚重ならないようランダムに散りばめたパネルなど、デザインも重視したアップリサイクルに取り組んでいます。

テラゾー風のボード「Wood Terazo」(写真奥)は、カットした突板が重ならないよう配置して制作されている

小売店舗の内装を手がける台湾のWYNIST(ウィニスト)は、アパレル業界の余剰在庫や古着など、廃棄される衣料廃棄物をアップサイクルしたテキスタイルボードを展示。台湾では街じゅうに衣料を廃棄するためのボックスが置かれ、行政が回収する取り組みが進んでいるそうで、回収された衣料廃棄物を粉砕、成型、熱圧縮した製品です。

ファスナーやボタンなど付属品や装飾があり、繊維の種類が多岐にわたるため衣料品のリサイクルは難しいとされていますが、同社では丁寧に付属品を取り除き、天然繊維や化学繊維、ナイロンの細かい種類といった素材を問わずリサイクルできるのが特徴で、今後は台湾で回収されたものだけでなく、日本国内で出る繊維廃材を使用した日本での製品化が予定されています。

混ざるとグレーになりがちな繊維廃材だが、鮮やかな色を残して再生できる技術をもつWYNIST

空荷のトラックを走らせない! 回収と搬入のサイクルが考えられたロジスティクス

建築現場では構造材や仕上げ材など、さまざまな廃棄物が常に発生します。国内外とも、多くの建材メーカーがその廃棄物を再資源化し、原料とした製品の開発に取り組んでいますが、施工後に現場で廃棄となる自社製品を回収・再利用する取り組みはまだまだ難しく、効率的に行えなければ運搬にかかるエネルギーも問題となります。

パーティクルボードメーカーである東京ボード工業(東京都江東区)は、「製品帰り便」を有効利用して徹底した資源循環に取り組んでいます。木質廃棄物を100%原料として製造された製品を現場へ配送し、その現場からさらにパーティクルボードの原料としてあらゆる木質廃棄物を回収。工場へ持ち帰り、破砕、再度製品の原料として再利用しています。

製品を建築現場へ配送したトラックが木質廃棄物を自社工場へ積んで帰ることで、空荷輸送の削減を実施し、さらに製品へ再生する(写真:東京ボード工業ホームページより)

「パーティクルボードを建築現場に配送し、その現場から原材料となる木質廃棄物を回収することで、1台で2台分の作業が行え、運搬効率の向上、ならびにCO2排出抑制の面から環境への負荷低減につながり、トータル運搬コストも抑えられます。一般貨物運送と産業廃棄物運搬・処理の許可を取得している東京ボードグループだからこそできる取り組みです」(東京ボード工業ホームページより)。

この取り組みでは工場へ戻ったのち、2週間ほどでパーティクルボードとして再生、出荷していくため、現場で出た木質廃棄物を再生した建材を同じ現場で再び利用する資源循環システムをパートナー企業とともに構築しているそうです。

近日開催! 気になる建築関連イベント情報

2024年街づくり・店づくり総合展「日経メッセ」開催の様子(写真提供:日本経済新聞社)

オルガテック東京2024
第3回となる今回は国内外約150のブランドが参加。主催者企画エリア「CIRCULAR MIRAI」では、サステナブル素材など最新の取り組みを紹介。
開催日程:2024年5月29~31日
会場:東京ビッグサイト 東ホール

住まい・建築・不動産の総合展
「住宅ビジネスフェア」「非住宅 木造建築フェア」「マンション総合EXPO」など計5展と、特別企画「マンション防災」で構成。
開催日程:2024年5月30・31日
会場:東京ビッグサイト 西ホール

理想の住まいと建築フェア2024
西日本最大級の建築材料・住宅設備の専門見本市。
開催日程:2024年5月30・31日
会場:インテックス大阪

TECTURE MAGでは、年間数多く開催される建築関連展示会、イベントを取材し、メーカーのさまざまな取り組みについて取り上げていきます。

街づくり・店づくり総合展「日経メッセ」 2024年3月12~15日開催
主催:日本経済新聞社
(2024年10月17・18日、インテックス大阪にて「JAPAN SHOP大阪」が開催予定)

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