稼働中の工場や産廃処分場でアートを展開する「瀬戸内産業芸術祭2026」開幕 - TECTURE MAG(テクチャーマガジン) | 空間デザイン・建築メディア
稼働中の工場や産廃処分場でアートを展開する「瀬戸内産業芸術祭2026」開幕

稼働中の工場や産廃処分場でアートを展開する「瀬戸内産業芸術祭2026」開幕

岡山県と愛媛県の稼働中の工場・産業現場などを舞台に「瀬戸内産業芸術祭2026」が10月3日に開幕しました。今回が初の本格開催で、会期は10月31日まで。

「産業芸術」とは、工場や産業現場に蓄積された技術、人の営み、地域の歴史を、アーティストの視点から再解釈する試みです。この趣旨に賛同した地域の企業・団体7社が参画、通常は一般の立ち入りが許されない工場や処分場など、産業の現場そのものが会場となっているのが大きな特徴です。

「瀬戸内産業芸術祭2026」開催概要

英語表記:Setouchi Art and Industry 2026
会期:2026年10月3日(土)~10月31日(土)
注.作品ごとに公開日時および鑑賞方法が異なる
鑑賞方法:全作品予約制(個別入場チケットまたは複数会場を巡るオフィシャルバスツアーでの鑑賞)
会場:参画企業の工場・産業現場など7会場(岡山県岡山市・玉野市・倉敷市、愛媛県東温市)
参画企業・団体:藤クリーン、児島ジーンズストリート協同組合、ナイカイ塩業、トンボ、パワーエックス、三国工業、オオノ開發
監修:妹島和世(建築家)、長谷川祐子(キュレーター)、佐竹正基(クリエイティブ・ディレクター)ほか
出展作家:後述
主催:一般財団法人日本産業芸術財団[*概要後述]
※鑑賞方法、プレミアムオフィシャルパートナー・協賛・後援の各企業・団体など詳細は公式ウェブサイトを参照

瀬戸内産業芸術祭2026 バナー

開催の背景

日本の経済を長く支えてきた製造業は、いま、担い手不足や技能継承、地域産業の発信力の低下といった課題に直面しています。地方のものづくりの現場には、高い技術と豊かな歴史がありながら、その魅力が十分に伝わっていないことも少なくありません。瀬戸内産業芸術祭は、そうした産業の価値をアートの視点から再発見し、地域の内と外へひらいていく試みです。
本芸術祭では、工場やプラントを単なる生産拠点としてではなく、地域の歴史・技術・人の営みが息づく文化的資産として捉え直します。若い世代をはじめとする幅広い人々が地域産業に触れる入口をつくり、産業への新たな関心と文化的価値の創出を目指します。

なお、本芸術祭の構想は、国土交通省「地域・日本の新たなレガシー形成事業」に令和5年度・令和6年度の2年度にわたり採択され、実現可能性調査を重ねてきました。その一環として、初開催に先駆け、2025年1月には岡山県玉野市の地元企業3社の工場を会場に、アーティストによる作品を展示する「モニターツアー」を実施。3日間で計183名が参加し、参加者アンケートでも高い評価を得ました。これらの成果を踏まえ、2026年秋の初開催に至ります。(主催者・一般財団法人日本産業芸術財団 2026年7月14日プレスリリースより)


見どころ

本芸術祭では、製塩、学生服、デニム、造船関連、蓄電池、資源循環など、瀬戸内の暮らしを支えてきた産業から現代の産業まで、多彩なものづくりの現場を、国内外のアーティスト・建築家・キュレーターが作品として再解釈。1カ月の会期中、産業の現場がアートを通じて開かれ、地域全体がひとつの「分散型美術館」となります。

「瀬戸内産業芸術祭2026」エリアマップ

「瀬戸内産業芸術祭2026」エリアマップ

会場(マップ記載順)
1.三国工業
2.児島ジーンズストリート(旧野崎家住宅)
3.藤クリーン
4.トンボ(トンボ学生服)
5.ナイカイ塩業
6.パワーエックス
7.オオノ開發

各会場の作品は、その企業に受け継がれてきた技術や哲学、働く人々の営みを出発点に、作家、監修者、そして参画企業が対話を重ねながら、共につくりあげたものです。塩や工業製品といった企業の製品そのものを素材にした作品、製造工程を巡るツアーと一体となった作品など、いずれもその場所と切り離しては成立できません。これらが稼働中の現場で展示されます。

 

7会場 作品概要

1.三国工業

所在地:岡山県玉野市
作家:MANTLE(伊阪 柊+中村壮志)
作品名:船・心臓音・鉄
監修:長谷川祐子、大倉佑亮、三宅敦大
展示概要:船舶のエンジン部品などの製造や組み立て、塗装を手がける企業の工場にて、出荷される前の製品を設置するための台座と、それら工業製品の製造風景や3DCGなどを用いた映像作品を展示する

「瀬戸内産業芸術祭2026」

MANTLE(伊阪 柊+中村壮志)〈船・心臓音・鉄〉


2.児島ジーンズストリート(旧野崎家住宅)

所在地:岡山県倉敷市
作家:SYMBOL PLUS
作品名:一粒の布
監修:佐竹正基
展示概要:国指定重要文化財、塩田王の旧豪商邸を舞台に、デニムづくりの原点である綿花から1着のジーンズへと受け継がれる児島デニムのものづくりをテーマに、デザインユニット・SYMBOL PLUSが空間インスタレーションを行う

「瀬戸内産業芸術祭2026」

SYMBOL PLUS〈一粒の布〉


3.藤クリーン

所在地:岡山県岡山市南区
作家:Nile Koetting(Atmospheric Solutions)/ Elliott Etzkorn(Maki Software)
作品名:Re:Cycle
監修:長谷川祐子、大倉佑亮、三宅敝大
展示概要:藤クリーンのリサイクルセンターで実施されてきた見学ツアーと、現在稼働する施設そのものを舞台に、アプリケーション、サウンド、学びの要素を重ね、廃棄・再生・循環を多層的な体験として提示するパフォーマティブ・インスタレーション。観客は、施設内の音やガイドの声、そこで扱われるモノの過去・現在・未来を手がかりに、資源が循環していくプロセスを辿る。

「瀬戸内産業芸術祭2026」

Nile Koetting / Elliott Etzkorn〈Re:Cycle〉


4.トンボ(トンボ学生服)

所在地:岡山県玉野市
脚本:武田雄樹、田中未来、三浦直之
出演:木竜麻生、山脇辰哉、桜井日奈子、安竜うらら、森本 華
作品名:TOMBOW Voice Theater -制服にまつわる3つの物語-
監修:佐竹正基
展示概要:全国の学生服をつくっている老舗アパレルメーカーの工場で、資材倉庫から縫製、検品、アイロンまでの製造工程を巡りながら、3名の作家がそれぞれ制作したオーディオドラマを展開。ものづくりの現場に宿る想いや制服がつないできた時間と出会う

・『心臓に一番近いとこ』(資材倉庫)/ 脚本:武田雄樹 / 声:木竜麻生、山脇辰哉
・『おしゃべりな彼女』(縫製工程)/ 脚本:田中未来 / 声:桜井日奈子、安竜うらら
・『私と日南』(仕上げ工程)/ 脚本:三浦直之 / 声:森本 華

「瀬戸内産業芸術祭2026」

オーディオドラマ〈TOMBOW Voice Theater -制服にまつわる3つの物語-〉鑑賞イメージ


5.ナイカイ塩業

所在地:岡山県玉野市
作家:山本 基
作品名:たゆたう時
空間演出:SYMBOL PLUS
監修:佐竹正基
展示概要:瀬戸内の製塩文化をテーマに、アーティスト・山本 基がナイカイ塩業の塩だけを用いて大規模インスタレーションを制作。工場の風景や歴史を再編集した導入空間とともに、製塩工場の製造ラインを巡るツアーとして構成される

「瀬戸内産業芸術祭2026」

山本 基〈たゆたう時〉


6.パワーエックス

所在地:岡山県玉野市
作家:SAI
作品名:調整力
監修:佐竹正基
展示概要:再生可能エネルギー時代に欠かせない蓄電技術をテーマに、目に見えない「電気」と「調整力」を空間全体で可視化したインスタレーションを、パワーエックスの工場「Power Base」にて、超急速EV充電器や大型蓄電池、生産ラインの見学と一体となったツアーで体験できる。本芸術祭の展示制作のために発足したアノニマスの産業芸術家集団・SAIが手がける。


#瀬戸内産業芸術祭 SAI YouTube: 瀬戸内産業芸術祭 モニターツアー2025 | パワーエックス(2025/03/25)


7.オオノ開發

所在地:愛媛県東温市
作家:西沢立衛、増田信吾+大坪克亘、山田紗子
作品名:最終処分場 -自然と産業、人とつくる風景-
監修:妹島和世
アドバイザー:長谷川祐子、大倉佑亮、三宅敦大
展示概要:会場となる複合リサイクルプラント内の管理型最終処分場は、廃棄物と土が混ざらないよう地面と縁を切られた大きな鉢のような構造をしており、約15年で廃棄物で埋まる。見学者はオオノ開發が用意したウエアを着て、人工的につくられた処分場の”丘”にバスで向かい、頂上付近から処分場の風景を見下ろす。”丘の展望台”を西沢立衛、バス停と広場を増田信吾+大坪克亘、バスとウエアのデザインを山田紗子がそれぞれ担当

「瀬戸内産業芸術祭2026」

西沢立衛 / 増田信吾+大坪克亘 / 山田紗子〈最終処分場 -自然と産業、人とつくる風景-〉

 

本芸術祭参画企業・団体の組織概要など詳細は、「瀬戸内産業芸術祭2026」公式ウェブサイト、または主催者である一般財団法人日本産業芸術財団のプレスリリース(2026年10月3日)に詳しく記載されています。

「瀬戸内産業芸術祭2026」公式ウェブサイト
https://www.sai-art.jp/

Instagram
@setouchi_art_industry

YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/@setouchiartandindustry

「瀬戸内産業芸術祭2026」

10月2日に玉野市役所で行われたオープニングセレモニー出席者(左から、佐⽵正基、⻑⾕川祐⼦、妹島和世、伊藤正裕、伊原木隆太[岡山県知事]、柴田義朗[玉野市長]の6氏フォトセッション)


*.一般財団法人日本産業芸術財団
工場や産業現場を舞台に、アートを通じて日本のものづくりの価値と魅力を再発見・発信する。産業と芸術の融合による新たな体験創出、次世代育成、地域文化と経済の活性化を図り、持続可能な社会と産業文化の発展に寄与することを主な目的に、2026年5月12日設立(所在地:岡山県玉野市宇野1丁目11番1号 宇野港土地ビル|代表理事:伊藤正裕 / 理事:平垣内久隆、長島 聡 / 評議員:妹島和世、和田浩一、岸 勇希 / クリエイティブ・ディレクター:佐竹正基 / クリエイティブ・プロデューサー:嶋 明良|諸氏プロフィールは下記URL記載の「財団情報」を参照)
https://www.sai-art.jp/foundation

※本稿掲載の画像はすべて主催者・日本産業芸術財団提供

  • TOP
  • COMPETITION & EVENT
  • 稼働中の工場や産廃処分場でアートを展開する「瀬戸内産業芸術祭2026」開幕

【購読無料】空間デザインの今がわかるメールマガジン TECTURE NEWS LETTER

今すぐ登録!▶