建築分野を中心としたさまざまな分野のクリエイティブディレクションと、
クリエイターが集うコワーキングスペース「co-lab(コーラボ)」の企画運営を行う、春蒔プロジェクト。
未知の領域を開拓し、広げてきた活動は〈SHIBUYA CAST.〉で体現しているが、
大規模で長期的なプロジェクトに関わることが増えてきたことに伴い、
マネージャーまたディレクターとして参加できる人材を求めているという。
代表の田中陽明氏と、入社2年目となるスタッフの生田目一馬氏に、
これからのプロジェクトに求められる職能と資質について、話を聞いた。
(Photographs: toha)
── 今回、プロジェクトマネージャーを募集されていますね。
田中:春蒔プロジェクトは、建築やデザインのプロジェクトで全体のディレクションやコーディネート、マネジメントをしています。経営コンサルタントのように、プロジェクトをまとめる職域といえるでしょう。
小さなものづくりのプロジェクトから始まりましたが、だんだんと規模が大きくなり、最近では再開発の建物のデザインやコンセプト、ブランディングのディレクションまで引き受けることが増えてきました。企画段階から開発、運営まで、一気通貫で行っていることが特徴です。
最近の大規模な開発では特に、「建物をつくっても終わりではない」という意識が事業者側でも強くなっています。そのとき、一緒にコンセプトを体現する、私たちのような運営者が必要とされているのです。
2003年から運営しているクリエイターのコワーキングスペース「co-lab(コーラボ)」は、これまで都市の再開発物件に運営委託者として、期間限定で建物に入居してきました。
現在は渋谷や代官山、二子玉川などに拠点がありますが、今後の拠点として虎ノ門や京橋でのプロジェクトに私たちは関わっています。
こうしたケースでは開発段階のコンセプトづくりやデザイン開発から入り、コワーキングで集まるクリエイターと一緒にエリアマネジメントを行うようなこともします。
2020年に春蒔プロジェクトに入社した生田目さんには、虎ノ門の再開発プロジェクトを担当してもらっています。
そこでは「プレ施設」というかたちで官民連携のコワーキングスペースを設け、co-labが入って運用する予定です。
現在は、プレ施設自体のディレクションをしたり、どのような管理をするかといった運営上のプログラムづくりやマネジメント業務をしています。
内外装やランドスケープ自体は専門家を選定して入ってもらうので、事業者との間でアシスタントもしていきます。このような“間を繋ぐ”役割は、今後さらに求められていくことを実感しています。
── コワーキングのco-labが、施設の運営面で鍵となっている、ということですね。
田中:そうです。それで、入社していただく方には、コワーキングを通して施設の価値を高める運用業務もしてほしいと考えています。例えば〈渋谷キャスト〉では「周年祭」として、オープン以降、毎年イベントを開催しています。
トークイベントでは企画からキャスティング、撮影などの手配、会場のセッティングや進行など、細かいところまで行います。
春蒔プロジェクトではもともとコワーキングの運営だけではなく、イノベーションセンターやリビングラボのように、人が集まっていろんな考えを発信する場所づくりをしています。
そうした機能がないと、単なる管理事務所やエリマネ事務所になってしまう。人が集まって、“館”としての思想を発信することが重要だと思っています。
コワーキングという形式で場の維持をし、一方では新しいことを生み出す環境をつくり、建物のブランディングにつなげたいと考えています。
自分は新卒で大手ゼネコンの設計部に就職しましたが、建物のハードだけのデザインをすることに違和感があり、大学院に入り直してコミュニケーション(メディア)アートを専攻しました。そこでコミュニティデザインや場の運営に、興味が移っていきました。立派なハードをつくっても、ソフトの運営がうまくいかないと、サスティナブルな“生きた建築”にはなりません。今は「バイオフィリックデザイン」などと言われることもありますが、建物のエンジン的な役割として機能させる場所として、コワーキングを捉えています。
── 生田目さんは、入社してすぐに大きなプロジェクトに関わってきたのですね。
生田目:私は以前、アトリエ系の建築事務所で店舗などの設計をしていました。
co-labのことは知っていたのですが、春蒔プロジェクトが開催していた地域のイベントに触れて、建築だけでなく多岐にわたる経験ができそうだと感じ、社員募集時に応募して入社しました。
建築系のプロジェクトに関わるほか、イベントの企画運営もしています。最近では教育系のイベントにも参加していますが、分野を超えて学び、考えられるいい機会になっています。
自分のように、コミュニケーションが好きな人、さまざまなことを吸収したい人、マルチに物事をみたい人にとっては、うってつけではないでしょうか。田中さんに付いていろんな仕事をしていると、「将来なんでもできる」くらいに思えてきます。
田中:プロジェクトでは専門家に入ってもらいながら進めるので、大学院に行くよりも学べるかもしれません。
建築系の学科で学んできても、形のデザインというよりはソフトやオペレーションに興味がある方、人や地域に還元していきたいと思っている人にとっては、しっくりとくる仕事場ではないかと思います。
設計をしてきた人が視野を広げるために来ていただいてもいいですし、広告代理店のプロジェクトマネージャー、ソーシャル系の企業のプロジェクトマネージャーなども、合っているかもしれません。
建物のブランディングと運営という、新しい領域を一緒につくっていけたらと思います。
── そして春蒔プロジェクトは、クリエイティブの役割をずっと重視してきましたよね。
田中:クリエイティブの力は大きいと思います。特に、個人で活動するクリエイターはニュートラルな立ち位置で、さまざまなことを結び付けられます。
例えば渋谷キャストで開催している「アーバンビジョナリー」というトークイベントでは、パノラマティクスの齋藤精一さんやノイズの豊田啓介さんにファシリテーターとして加わっていただいたことがきっかけで、普段は競合する大手デベロッパーが集まって都市全体を話し合う場をつくることができました。
再開発でも、クリエイターのプラットフォームであるco-labのメンバーが、地元住民とデベロッパー側の潤滑油的な役割や機能を担うことがあります。
「スイミー」の話のように、個の集合体であることで活きてくる価値があり、大きな組織と並走することができる。これからも、私たちはクリエイティブの力を最大限に引き出す動き方をしたいと考えています。
(2021.03.25 渋谷CASTのco-lab にて)