パナソニックが公共施設やオフィスに向けて開発する、パブリック建材。
新製品を中心に製品が展示される「HOUSING SOLUTIONS FAIR」が、パナソニックセンター東京で2023年2月7日〜10日にわたって開催された。
先進的なオフィスや施設の設計で注目を集め、現在も幅広いプロジェクトを進める小堀哲夫氏が、この会場に来訪。パナソニック ハウジングソリューションズの担当者の案内のもと、小堀氏に実際の製品に触れてもらいながら意見を伺った。
「急速に変化するニーズに応えるには“家”の要素をもつ“ホームユース”が鍵になる」という小堀氏は、次世代のオフィスや公共施設にパナソニックのパブリック建材をどのように役立てることができるとみただろうか。
小堀哲夫 | Tetsuo Kobori
1971年 岐阜県生まれ。2008年 株式会社小堀哲夫建築設計事務所設立。日本建築学会賞、JIA日本建築大賞、Dedalo Minosse国際建築賞特別賞など国内外において受賞多数。代表作品に〈ROKI Global Innovation Center –ROGIC–〉〈NICCA INNOVATION CENTER〉〈梅光学院大学 The Learning Station CROSSLIGHT〉〈光風湯圃べにや〉など。その場所の歴史や自然環境と人間のつながりを生む、新しい建築や場の創出に取り組む。
前編INDEX
・質感が高く 貼り剥がしが容易な天然木仕上材
・サイズ・面材・機構などをオーダーできる建具と壁
・特定天井の該当個所で設計の自由度を高める軽量天井材後編INDEX
・オフィスにはホームユースが求められている
・ホームユース化するオフィスにフィットする製品
・天然木床材や軽量天井材はここで使えば効果的
・リサイクルを前提としたものづくりでオフィス設計の慣習を変える
小堀氏がまず注目したのは、OAフロア用木質仕上材の「ボアシス(BOISSIX)」だ。
「現在進めている大規模なオフィスのプロジェクトでも、OAフロアにフローリングを貼りたいという需要は高いので、本当に使ってみたい」と小堀氏は関心を寄せる。
「ボアシス」は天然木の突板が基材に貼られた製品で、タイルカーペットを貼る場合と同様に「ピールアップボンド」を用いて、オフィスのOAフロアにも直に貼ることができる。
「ボアシス」の6mmという厚さはタイルカーペットと同じなので、「ボアシス」と合わせてほかのタイルカーペットを、目地を設けずに突き付けで貼り分けることも可能。また、1枚単位で貼り剥がしできるので原状復帰のほか、オフィスのレイアウト変更でOAタップを移設する際にも周辺だけを剥がすことで対応しやすいというメリットがある。
説明を受けた小堀氏は「部分的に導入する場合にも有効ですね」と評価し、「実際に見ると質感が高いし、これだけのバリエーションがあるのはいい」と表面のテクスチュアと種類に着目する。
天然木特有の表情や質感の高さが特長で、表面はパナソニック独自の技術を施し木目と表情を引き出す、クリアの「ナチュラルシリーズ」と着色仕上げ「カラードシリーズ」の2種類。それぞれに色柄と樹種がラインアップされている。
突板の厚みは0.2〜0.3mmであることを聞き、「土足で歩いて汚れが付いたり、突板が摩耗したりしないかは気になるところです。コーティングで性能を担保できるのはすごいですね」と、今度は性能を担保するコーティングについて詳しく尋ねた小堀氏。
コーティングはウレタン系のUVで硬化させる技術で、VOC(※)を含まない無溶剤型の塗料が用いられている。これは、住宅用建材を手掛けるパナソニックが、有機溶剤を使わずに製品を開発してきたことが背景にあり、「ボアシス」はその延長線上にあるという。
「開発した人が、すごくこだわりがあることが感じられます。エイジング処理で木材の“テリ感”が増すことや、木を効率よく使い歩留まりを高めることがよく考えられていることがわかりました」と小堀氏は話す。
次に「ベリティスパブリック(VERITIS PUBLIC)」建具や周辺の壁材の使用例を示したブースを小堀氏は見学。ここでは、福祉医療施設や教育施設をイメージして建具と不燃壁材の柄や色味を合わせた空間が展示されていた。15柄の豊富な色柄が用意され、扉をペイントで塗ったようなカラーリングにして目立たせることもできる。また、ハンドルや錠もカスタムオーダーできる。
「建具の面材は何からできていますか?」と確認する小堀氏。「ベリティスパブリック」はポリエチレンテレフタレートという樹脂化粧シートを扉の小口にまで巻き込んで貼っているため、こすれてもキズが付いたり剥がれたりしにくく、油性ペンのインクも載らないほど耐汚染性がある。
開口のサイズに合わせて、建具はミリ単位でオーダーできることを聞き、小堀氏は建具に採光窓を付ける場合の対応についても確認した。
小堀氏は「丸窓や細長窓など、ある程度決まったデザインパターンがあり、その中から選ぶかたちですね。選択肢は十分にあると思います。短期間でオーダーに対応してくれるのは心強いです」と語る。
また、小堀氏が実際に目にして驚いたのは、引戸に設置された「タイムラグ自閉機構」である。これは引戸が開いた位置でいったん止まり、約15秒後に自動で閉まる機能で、車いすの利用者などが通り抜ける時間を確保するというもの。引戸のレール部分に、ゼンマイを巻くための歯が仕込まれている様子を見て、小堀氏は「すごい」とひとこと発する。
「タイムラグ自閉機構」には、ドア本体にゼンマイをまくための歯車が付いており、引戸を開けるときの力がゼンマイに溜められながらダンパーが減衰。ストッパーが外れると、再び閉まっていく。ミリ単位で幅が変えられるサイズオーダーの特長を活かし、戸の幅が変わっても歯車を巻くことができるように開発された。
小堀氏は、非接触で手をかざして作動するタッチレス自動ドア「e-Kindoor(イーカインド)」の開閉も体験。裏側にも回り込んで点検口を見て、上枠の幕板に入る機構がコンパクトに納められている様子も確認した。扉内での配線をせずに赤外線で作動させる方式をとったこともコンパクト化に寄与し、壁の厚みが限られた施設でも採用しやすい。
「ニーズの捉え方が、きめ細かいですよね。オフィスや一般公共建築向けの製品にはこれまでになかった発想だと思います。住宅向けの製品を長年にわたって開発してきたパナソニックだからこそ、生まれた製品ではないでしょうか」と小堀氏は語る。
続いて小堀氏は不燃軽量天井材の「Airylight(エアリライト)」のブースに移動。
これは「特定天井」(※)に該当するJIS規格の天井鋼製下地材を含め、2kg/m²以下を実現するというものだ。「エアリライト」を採用することで、天井下地の耐震ブレース設置などの、天井脱落対策技術基準への適合が義務付けられることがなくなる。
実際のパネルを手に取り、小堀氏は「本当だ、軽い」と驚きの声を上げる。「エアリライト」のパネルの厚みは4mmで1m²あたり560gと、従来の化粧石膏ボードや岩綿吸音板よりも圧倒的に軽い。
一般の鋼製下地で施工ができ、マグネットで仮固定しながら4mmの底目地を合わせて固定していくことができる。既存の吊りボルトや野縁受けが流用できるので、リニューアル工事もスムーズに行える特長がある。
色柄は8つの柄が用意され、木目柄とモノトーンの無機素材柄は化粧シート仕上げ、単色ホワイトのガラス繊維シート仕上げ、エアリライト用不燃塗料で現場塗装できる現場塗料仕上げがある。
木目柄の表情とマグネットの働きを確認しながら、「エアリライト」を取り付けていた小堀氏は、あることに気づいた。
「小口も何かしていますね!? シートをパネルに巻き付けているのですか。これはすごい。ディテールの積み重ねで、いい商品になっていることがわかります」。
「曲げて貼ることはできないのでしょうか?」と尋ねる小堀氏だが、現在は折り上げ天井はできるものの、湾曲はさせられないという。「ぜひ開発ポイントとしてご検討ください。ちょっとしたRを付けたい場面がけっこうあるのですね。フレキシビリティがあると、より強い商品になると思います」と投げかける。
常に自身が設計する案件に照らし合わせながら、実際的な意見を出す小堀氏。
施設用の建材をひととおり見た小堀氏が抱いた感想と、製品を導入する具体的な場面、また製品開発に向けたさらなる意見は!?
(後編に続く)
Interview & text by Jun Kato
Photograph & by toha
■パナソニック関連プロダクト ページ
パナソニックのオフィス・公共・商業施設向け床材
https://sumai.panasonic.jp/public/products/floor/#officeパナソニックの施設・店舗用建材 ベリティス パブリック
https://www2.panasonic.biz/jp/sumai/facilities/interior/不燃軽量天井材エアリライト
https://sumai.panasonic.jp/public/products/airylight/index.html
パナソニック ハウジングソリューションズは、東京ビッグサイトで2023年2月28日(火)〜3月3日(金)開催中の「建築・建材展」に出展。「不燃軽量天井材 エアリライト」「OAフロア用木質仕上材 ボアシス」「自動ドア イーカインド」などを展示する。
そして今なら「カタログ・サンプルセット」をお送りいたします。2023年3月31日までの期間限定。
下記リンクよりお申し込み、お問い合わせ欄に「TECTURE MAGを見た」と記載ください。
https://panasonic.co.jp/ssform/cgi-bin/inq.cgi?ID=JP001_06312_a