bathtopeから考える、これからの浴室空間

“お風呂はもっと、自由でいい。”というコンセプトのもと、これまでにないファブリック製の浴槽をたずさえ、極限までシンプルを追求した浴室空間を提案するLIXILのブランド「bathtope（バストープ）」。その魅力を引き出すべく、実際の使い心地を体験した2人のクリエイターを招いた対談企画が実現。bathtopeを起点に、入浴することやユニットバスという浴室空間には、どんな可能性が潜んでいるのだろう？建築家とアーティストとしてはもちろん、いちユーザーとしての視点も加わって、2人から次々と新たな発想が沸き、終始会話が弾みました。前編は、それぞれのbathtope体験、そして「入浴すること」にまつわるトークをお届けします。

photo: kenya abe

浜田 晶則
1984年富山県生まれ。2012年東京大学大学院修士課程修了。2014年AHA浜田晶則建築設計事務所設立。同年よりteamLab Architectsパートナーとして活躍。コンピュテーショナルデザインを用いた設計手法により建築とデジタルアートの設計を行い、人と自然と機械が共生する社会構築をめざしている。

photo: kenya abe

KAZUKI
東京生まれ。クリエイターに囲まれて育ち、ニューヨークなどへの留学経験を経て独学でアートを学ぶ。独特で豊かな色彩感覚と、人と暮らしに寄り添いながらも、自由で大胆かつボーダレスな表現で、音楽・ファッション・ビューティー等でアートワークを手がける他、カフェやホテルなどの空間にも作品を提供している。 2024年はニューヨーク、2025年はパリで個展を開催し、海外での活動にも力を入れている。

「高級感」の概念を刷新する、軽やかなのに心地よいバスルーム

ー浜田さんは、2024年のDESIGNARTで実施したbathtopeのトークイベントにゲストスピーカーとして参加、KAZUKIさんは、イメージビジュアルに出演したことをきっかけに、2人ともすでにbathtopeを入浴体験済みですが、改めてbathtopeの印象と、実際に入浴してみて感じたことを教えてください。

KAZUKI（以降K）：bathtopeに入ったとき、小さい頃家にあったハンモックの記憶が蘇ったんです。ハンモックに入った時に包み込まれる安心感と、お湯に浸かる気持ちよさが同居して、すごく心地よくて。最初に体験したのは撮影の時だったので現場にはたくさんの人がいたのに、それも気にならないくらいプライベート空間が保たれているという記憶があります。このファブリックと肌のなじみもよくて、普段の浴槽では得られない柔らかさを感じて、とても落ち着きました。

浜田晶則（以降H）：あのプルンとした、水のかたまりに包まれる心地よい感覚が他にはなく、癖になりそうです。水を張る前は、もっとフワフワしているのかなと思っていたのですが、水を張ることで生まれるどしっとした安定感がいいですね。首にあたる部分も柔らかいのがbathtopeならではの気持ちよさで、特に気に入っています。

K：あとは、やっぱりルックスがいいですね。取り外しができるものってちょっと簡易的になりがちですが、クールなデザインだし、すごく高級感も感じられます。

H：そうなんですよね。昔から、高級感=石や金といった“重厚なもの”、という価値観があると思うのですが、このbathtopeのチープではない軽やかさが、現代的な高級感を表現しているようで、新しさを感じました。

ーこのファブリックバスのカラー展開も魅力のひとつです。5色のうち、お二人が自宅に取り入れるならどれを選びますか？

K：私はこの「クラウドホワイト」ですね。ネーミングもすごく素敵。あとは「アクアブルー」かな。

H：僕は「ブリックレッド」が好きですね。通常の固定された浴槽だったら選ばないかもしれないのですが、bathtopeのように付け替えられるものだったら、こんな華やかな色もちょっと選んでみたくなりますね。もう1枚選ぶとしたら「フォレストブラック」も好みです。

K：その日の気分で浴槽が変えられるのってすごいですよね！手で持ってみたら、厚手でしっかりしているのに、本当に軽くてびっくりしました。取り付けステップも、もっと手間がかかりそうなのかなと思っていたのですが、思った以上に簡単で、これだったら取り入れやすいですね。

思いのままの自由な入浴スタイルが、感覚を研ぎ澄ます

ーお二人とも、お風呂好きということですが、普段の入浴習慣について教えてください。

K：私は毎日湯船に浸かります。休日は朝と夜2回入りますし、温泉や銭湯にもよく行く“お風呂ラバー”です！

H：僕は平日は時間がなくてシャワーだけが多いのですが、近所の銭湯にも行きますし、休日はちょっと離れた温泉や銭湯にも行きます。「日本秘湯を守る会」の温泉を紹介する動画などもよくチェックしていて、いわゆる秘湯と言われる辺鄙な温泉や、古い温泉に行くのも好きなんです。入浴で、より身体的な感覚を研ぎ澄ませたいという感覚があります。そういったことを意識するようになったのは、サウナを設計したことがきっかけなのですが、お風呂やサウナのように、裸の状態で何かに触れて感じることを大切にしたいと思っているんです。

K：わかります！私も、お風呂やサウナであたらしいアイデアがひらめくことが多いんです。

H：そうなんです。いわゆる「ととのう」と呼ばれていますが、お風呂やサウナに入ると熱さで交感神経が働き、外気浴などで落ち着くと副交感神経が働くので、それを繰り返すことによって身体はリラックスしているのに、頭は冴えているという状態になり、脳がバグるんです。その時に何かをひらめくんじゃないかと。それを味わいたくて、お風呂やサウナに入るというのもありますね（笑）。あと、入浴時は絶対スマホを持たないので、そのオフラインな状況でいることも、ひらめきに関係しているのかもしれません。

K：私は、海外でもバスタブのあるホテルを探します。先日コペンハーゲンとパリに行ったのですが、部屋は広いのに、バスル ームは電話ボックスくらいでシャワーのみという部屋が多くて。浴室に広い空間を求める感覚って、とても日本的なのかなと 思いました。

H：西洋にも公衆浴場だったり、お風呂の文化は昔からあるのですが、お風呂がある生活って、すごく限られた貴族の遊びみたいな時代があったんです。絵や文献にも残っていますが、フランスの貴族がみんなでお風呂に入りながら、寝たり、ごはんを食べたりしている。もう、パーティーですよね。でもそれって快楽の追求だと思うし、そのくらい、お風呂は自由でもいいんじゃないかなと思うんです。僕らはお行儀よく食べたり座ったりすることを教育されてきたけれど、そういった既成概念や常識から一回離れてみると、もっと感覚が研ぎ澄まされるんじゃないかなと。親には怒られるかもしれないけれど……（笑）、そういうスタイルを提唱したいと密かに思っています。

K：なるほど！おもしろいですね。最近、ある人がお風呂で唐揚げを食べていたという話を聞いて、「それはありえない！」と、友達と盛り上がったのですが、そういうことも既成概念でしょうか。

H：昔、温泉にお盆を浮かべて、そこに日本酒を置いて飲みながら湯に浸かるという風景がよくありましたが、今思うとすごく贅沢に感じます。もしかしたら、唐揚げはその延長上にあるのかも？

K：そんなスタイルが、今後は普通になる可能性もあるかもしれないですね。

どんどん広がるイマジネーション。自分流bathtopeの取り入れ方

ーbathtopeをきっかけに、新しい価値観を見出しながら、かつてのお風呂の文化や習慣を取り戻すような感覚も得たように思います。お二人が実際にbathtopeを導入するとしたら、どんな使い方をしたいですか？

K：私は、アトリエ自体を浴室にしたいです。お風呂の時間以外は、ファブリックバスを取り外したスペースで制作して、シャワーがあるから絵の具もすぐ洗えそうだし、浴室乾燥機でアートがすぐ乾くから、絵を描く空間としていいことしかないんじゃないかと思うんです。

H：それはぜひ一回やってみてほしいですね。僕もやはりスケッチをしたり、仕事場の延長として使ってみたいですね。

K：お風呂に入りながらアイデアがひらめいて、そのまますぐスケッチするということもあったりして？

H：それは圧倒的にプライベートな仕事場ですね！ちょっと見られたくない姿ですが……、いいですね。ずっと入っているかもしれないです（笑）。

K：「大人の子ども部屋」みたいな感じで、絵を描いたり、ギターを弾いたり、映画を観たり、そういうことをできる場所としても使ってみたいです。日中やお休みの日は趣味を楽しんで、夜は浴室になる、みたいな。

H：それも楽しそうですね。そうなると、音響設備や照明を浴室に持ち込んでみたくなりそう（笑）。

自身の経験や知見を交えながら、次々と生まれる新しくてたのしい発想。お風呂が好きで、bathtopeの心地よさを知った二人ならではの言葉であり、まさにbathtopeのコンセプト“お風呂はもっと、自由でいい。”を体現しています。後編は、浴室空間のさらなる可能性を探ります。

photo: kenya abe、text: mana soda

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