LED照明の進化は、光の強さや省エネ性能を高めるだけにとどまらず、空間のあり方そのものへ影響を及ぼし始めています。
ウシオライティングが開発した新製品「インサイドデルタ(inside δ)」は、交換式でありながら高照度・高演色を実現した、全く新しい概念のLEDランプです。従来のランプ形状に縛られず、器具内部の“デッドスペース”を熱設計に活かす独自構造によって、一体型器具に匹敵するハイパワーを獲得。建築空間における光の表現力と、メンテナンス性の両面を更新するプロダクトとして誕生しました。

LED照明が普及して十数年が経ち、多くの施設で既存器具の更新時期を迎えています。従来の交換式LEDランプは、施工を伴わず誰でも取り替えられる利点がある一方で、十分な明るさを出しにくい、配光の選択肢が限られるといった弱点を抱えてきました。
「インサイドデルタ(inside δ)」は、これらの課題を解決するために開発されたモデルです。交換式でありながら、一体型器具に迫る高照度と演色性を両立し、さらに複数の配光バリエーションを備えることで「光を選び、空間を構築する」照明環境を実現しています。製品名に含まれる“δ(デルタ)”はギリシャ文字で「変化・進化」を意味し、LED照明の課題を乗り越え、光の質と使いやすさを次の段階へと進化させるという姿勢が反映されています。
開発の起点となったのは、光源そのものではなく器具の構造でした。従来のLEDランプは、既存ランプの形状を前提に設計されてきましたが、ウシオライティングはあえて器具内部の“空いている空間=デッドスペース”に着目し、その容積を放熱に役立つ空間として捉え直し、新たな構造へ再構築しました。
筐体下部を延伸し、空気の対流を生み出すフィン構造を採用することで、同サイズのまま高出力を安定的に維持できる放熱効率を確保。その結果、LDR φ50という限られた筐体の中で、かつては実現が困難とされたハイパワー化が可能となり、放熱効率の大幅な向上へとつながりました。「器具内のデッドスペースを光のパフォーマンスへ変換する」という構造的アプローチにより、高出力と安定性を両立するLEDランプの新しい構造が生み出されました。

インサイドデルタ((inside δ))外径寸法
「インサイドデルタ(inside δ)」は、照らす対象や空間の用途に合わせて6種類の配光をラインアップしています。従来のハロゲンランプ代替LEDランプの配光で一般的だった「狭角・中角・広角」に加え、新たに「超狭角」「拡散」「準全般」を展開。レンズ形状やLEDチップの配置、反射面の角度などの微細な調整がおこなわれ、配光ごとに最適な光学設計が施されています。光を「広げる」「集める」という単調な設計ではなく、目的に応じた「光の質」そのもののデザインが可能な照度と演色性を高いレベルで両立し、多彩な配光バリエーションを可能にしています。
ピンスポットのように質感を際立たせる「超狭角」はギャラリーやバーカウンターの演出照明に適し、空間全体をやわらかく包む「拡散」「準全般」はホテルロビーやオフィスのベースライトに広く対応。光のムラを抑えながら用途に即した照度と演色性を提供することで、高天井の店舗やホテルなど、従来のレトロフィット器具では明るさが不足しがちだった空間にも、新しい光の可能性を広げています。

Blue Bottle Coffee Daikanyama Cafe / 設計:SUPPOSE DESIGN OFFICE / Photo:Kenta Hasegawa
照明器具の更新では、メンテナンス性も重要な要素となります。一体型器具は光源交換に工事を伴うため、店舗やホテルでは一時的に営業を止めざるをえないケースもありますが、「インサイドデルタ(inside δ)」は工事不要で交換できるため、専門資格を持たない現場スタッフでも扱うことができます。
日常の運用を止めずに照明を更新できることは、とくにホテルなどの業務中断が難しい施設にとって大きな利点であり、時間・手間・コストの削減による付加価値の向上にもつながります。
「インサイドデルタ(inside δ)」のフォルムは、意匠のための造形ではなくハイパワーを安定的に発揮するための“性能起点のデザイン”として生みだされました。
筐体下部に延伸したフィン形状は、対流による温度低減効果を高めるために、空気の流れを効率よく生み出すためのものです。内部にこもる熱を抑えることで、長時間の高出力照射でも安定した明るさを維持できる構造を実現しています。光を整えるために形を最適化する、光の印象を保ちながら性能を極限まで引き上げるという設計思想には、ウシオライティングのブランド美学が表れています。

照明器具はいずれ交換の時期を迎えます。交換部分が小さく、扱いやすく、コストを抑えられることは、使用者にも環境にもやさしい選択です。必要な部品を手軽に取り替えるだけで、空間が再び生き生きとした光を取り戻せる仕組みは、利便性にとどまらず、光を長期的に使い続けるためのひとつの姿勢でもあります。
「インサイドデルタ(inside δ)」は、持続可能な社会に寄り添いながら、空間と時代にふさわしい光のあり方を提示する製品です。