2023年12月16日初掲、12月18日会場写真追加
塚本由晴、千葉 学、セン・クアン、田根 剛の4氏が展覧会キュレーターを務め、東京・乃木坂にあるTOTOギャラリー・間にて2022年10月から2023年3月まで開催された企画展「How is Life?——地球と生きるためのデザイン」が九州に巡回しています。
タイトルに掲げた「How is Life?」という問いに対し、建築やデザインを介して気候変動や社会格差など私たちを取り巻く障壁に風穴を開け、成長を前提としない繁栄のあり方を示している、古今東西のプロジェクトを紹介するものです。
展覧会コンセプト「How is Life?」
産業革命以降手に入れた生産力を背景に、成長を是としてきた人類の活動は、プラネタリー・バウンダリー[*1]を超え、気候変動や南北格差をもたらし、声をあげることのできない生物や将来世代を搾取し続けている。その対応策として、成長の原動力となった産業や便利な暮らしを維持しつつ環境負荷を低減させる行動がSDGsとして推奨されているが、事態はより深刻で、持続的成長ではなく成長なき繁栄[*2]を本気で検討しなければならないところまで来ている。そのためには産業分野だけでなく、暮らし自体を見直し、その構成要素の1つひとつを、地球に負荷をかけない方向に転換していかなければならない。
しかし、産業からサービスを買うことに慣れてしまった我々は、自らの手で衣食住やエネルギーを獲得するスキルをもたず、また産業社会的連関による包囲網はそこからの逸脱を容易には許さない。20世紀後半につくられた生産―消費―廃棄の想定を定着し続けてきた構築環境の中に暮らしていると、その想定を疑うことも容易ではない。そこで培われた自画像は、同じ想定に基づく構築環境や暮らしを再生産してしまう。その反復から抜け出して、成長なき繁栄を選ぶのならば、我々はどう生きるか?建築が人々の暮らしをよりよくすることに奉仕するものであるならば、そうした包囲網を障壁として発見し、挑んでいくことから、建築的営為を始めるべきだろう。その時話し合いのテーブルにつくのは、今ここにいる自分達だけでなく、立場の弱い人、地球の別の場所にいる人、未来の人、そしてヒト以外の生物かもしれない。
「How is Life?」という、彼ら、そして私達自身への問いかけを、建築展という形にする試みに、ご期待あれ。(TOTOギャラリー・間 企画展 How is Life? キュレーター 塚本由晴、千葉 学、セン・クアン、田根 剛)*1.プラネタリー・バウンダリー
Rockström, Johan, et al. “A safe operating space for humanity.” Nature, vol. 461, no. 7263, 24 Sept. 2009, pp. 472+.
*2.成長なき繁栄
Tim Jackson (2009). Prosperity without Growth. Earthcan.(ティム・ジャクソン 田沢恭子訳『成長なき繁栄 ―地球生態系内での持続的繁栄のために―』一灯舎、2012年)キュレーター:塚本由晴、千葉 学、セン・クアン、田根 剛
巡回展監修:塚本由晴(アトリエ・ワン、東京工業大学大学院教授)
監修アシスタント:平尾しえな(東京工業大学大学院塚本由晴研究室)
会場構成:アリソン理恵(一級建築士事務所ARA)
会期:2023年11月21日(火)~2024年3月10日(日)
開館時間:10:00-17:00(最終入場は16:30まで)
休館日:日曜、年末年始休業期間(12月29日[金]~2024年1月4日[木])
入場料:無料
会場:TOTOミュージアム 特別展示室
所在地:福岡県北九州市小倉北区中島2丁目1-1(Google Map)
問合せ:TEL.03-3402-1010
主催:TOTOギャラリー・間、TOTOミュージアム
企画:TOTOギャラリー・間運営委員会(特別顧問:安藤忠雄 / 委員:千葉 学、塚本由晴、セン・クアン、田根 剛)
後援:一般社団法人日本建築学会九州支部、公益社団法人日本建築家協会九州支部、公益社団法人福岡県建築士会、一般社団法人福岡県建築士事務所協会