CULTURE

国際空港に9km超のラタンで編むポッド群

インドの〈ベンガルール・ケンペゴウダ国際空港 第2ターミナル〉に自然素材でつくり出す店舗エリア

CULTURE2024.05.23

© Hufton + Crow

SOMがインドに設計した、竹が重なる天井が特徴的な〈ベンガルール・ケンペゴウダ国際空港 第2ターミナル(Kempegowda International Airport Bengaluru – Terminal 2)〉の出発エリアに、「タイで最もサステナブルな建築事務所」に選出されたエンター・プロジェクト・アジア(Enter Projects Asia)により、750m²の内部床面積を誇るラタンで編まれた巨大なポッド群が設計されました。

 

内外に連続する庭園が旅行者と自然をつなぐ空港〈ベンガルール・ケンペゴウダ国際空港 第2ターミナル〉SOM、インド

さまざまなレストランや店舗が入居する空間であり、裏方スペース等では編み目の密度を高めることで視線を遮るなど、自然素材である藤の特性を活かしてデザインされています。

植物由来の素材をこれまでにない大きな規模で使用することで、国際空港という商業的な環境にありながら東南アジアのウェルネス・リトリートのような空間をつくり出し、持続可能性やバイオフィリック・デザインの可能性と必要性を示すプロジェクトです。

 

都市の中に自然を持ち込む3Dテクノロジー×自然素材の空間、エンター・プロジェクト・アジアが手掛けた、うねる 藤細工が空間をつなぐウェルネス施設〈Vikasa本社〉タイ

内外を通り抜け一体化する流線形の藤細工、エンター・プロジェクト・アジアが設計した 自然素材により中立的なギャラリー空間に命を吹き込む〈チェンマイ・アートギャラリー〉タイ

© Hufton + Crow

(以下、Enter Projects Asiaから提供されたプレスキットのテキストの抄訳)

エンター・プロジェクト・アジアは、ベンガルール・ケンペゴウダ国際空港の12,000m²の保安検査後の出発エリアのインテリアの設計、納入、施工を行った。店舗、ホスピタリティ、リラクゼーション・エリアを含むこの空間は、9kmを超えるラタンを使ってデザインされており、手仕事によるこれまでにないスケールの空間を特徴としている。

このプロジェクトは、ベンガルール・ケンペゴウダ国際空港の内装改修の一環として、BIAL社(Bangalore International Airport Limited)から設計を依頼された。

ベンガルール市における20世紀のガーデンシティ都市計画運動からインスピレーションを受け、BIAL社は、都市が実現する未来を改めて構想し、空港を訪れる年間2,000万人の観光客のために、都市と田園地帯の長所が共存するユートピア的な今を創造することを望んでいた。

© Hufton + Crow

国際空港という企業的で商業的な環境につくり出す自然素材の空間

エンター・プロジェクト・アジアの代表であるパトリック・キーン(Patrick Keane)と彼のチームは、よりソフトで自然をベースとした素材群を使用することで、プライバシーなどの観点から求められる囲われた空間という、従来の建築に求められる機能的な要件を別の手段で実現することができると理解していた。

ここ数十年のスーパーエアポートを研究してきたキーンはこのプロジェクトにおいて、美しくも実用的で、企業的で、持続不可能なパネル素材を優先したハードな空間へのアンチテーゼとして、次世代のデザインを構想することに挑戦した。

葦や籐、竹といった植物由来の素材を、東南アジアのウェルネス・リトリートやブティックではなく、国際空港という明かに都会的で商業的な環境、そしてこれまでにない大きな規模で使用することで、キーンは持続可能性やバイオフィリック・デザインの可能性と必要性について大胆な声明を出したいと考えたのである。

© Hufton + Crow

エンター・プロジェクト・アジアは、その特徴的なデザイン言語を開発し、独自のハンドメイド・アプローチを駆使して、曲線的で彫刻的なラタンのポッドを、これまでの想像をはるかに超える大規模なスケールでシリーズ化した。

最大のポッドは高さ8m近くあり、プロジェクト全体では、コンクリートやスチールといった鉱物の代わりに9km以上の籐が使用された。

© Hufton + Crow

編み目の密度差で機能ごとの要件に対応するディテールデザイン

このインテリアデザインは、5つの巨大なポッドの構造体と、すべて籐でつくられた巨大な柱で構成されている。

最大のポッドにはウルフギャング・パックのレストランが入る予定であり、750m²の内部床面積と巨大な内部階段、小さなガゼボ(西洋風の東屋)や専用庭を備えている。また、他のポッドには世界的に有名なブランドの入居を予定している。

© Hufton + Crow

エンター・プロジェクト・アジアはタイの伝統工芸職人と協力することで、伝統工芸のコミュニティに新たなライフラインを提供している。

エンター・プロジェクト・アジアのバンコク工場では、最も効率的で経済的、かつ持続可能な輸送ソリューションを実現するために、特注のロジスティクス・ソフトウェアに沿って、このデザインにおけるそれぞれの大きなパーツが手織りされた。

このハイテク・ソフトウェアと手づくりの手工芸という斬新な融合は、天然素材の使用を最優先とするとともに、革新と持続可能性に対するエンター・プロジェクト・アジアのアプローチを定義づけている。

© Hufton + Crow

これらのポッドは、藤の編み目の密度の違いにより細やかにデザインされている。

キッチンとバックヤードといった機能的な部分は密度を高めることで隠し、その他の部分では編み目は非常にオープンなスタイルへと劇的に変化していく。これによりデザインそのものが有機的な要素のように感じられ、成長と躍動感が加わっている。

© Hufton + Crow

素材のもつ自然な温かみを強調することを最優先とした照明デザインは、これらの効果を高めつつ、空間の体感的でバイオフィリックな性質をさらに高めている。樹齢700年のオリーブの木や空中庭園、生い茂るブドウの木など、植栽はすべてガーデンシティのコンセプトに貢献している。

エンター・プロジェクト・アジアのデザインは、過去の象徴的でありながら企業的なスーパーエアポートとは対照的であり、ウェルビーイング・デザインに関連する原理や素材を工業的規模で使用する新たなモデルとなっている。

Axonometric

パトリック・キーンは次のように語る。

「藤の構造、竹の骨組み、手づくりの要素や木材を見ると、『どこか人里離れたところに建つウェルネス・リトリート』のように感じるだろう。しかし今、年間2,000万人の観光客を迎える空港でそれを目にすることができるのである。」

「現在、ウェルネスは世界的なメインストリームとなっている。ポッドに触れると、壁ではなく、まるで樹木のように感じる。エンター・プロジェクト・アジアはこれらの素材とその用途を再定義しているのである。」

Session at Factory © Enter Projects Asia

Session at Factory © Enter Projects Asia

Session at Factory © Enter Projects Asia

Session at Factory © Enter Projects Asia

Session at Factory © Enter Projects Asia

Session at Factory © Enter Projects Asia

Plan

Elevation

以下、Enter Projects Asiaのリリース(英文)です。

ENTER PROJECTS ASIA HERALDS A NEW ERA OF SUPER AIRPORTS WITH THEIR WELLNESS-INSPIRED APPROACH TO INDUSTRIAL-SCALE PUBLIC SPACE AT KEMPEGOWDA INTERNATIONAL AIRPORT

LOCATION: Kempegowda International Airport, Terminal 2 Departures.
CLIENT: BIAL – Bangalore Airport International Ltd
SIZE: 12,000sqm
ARCHITECTS: Interiors by Enter Projects Asia. Exterior Structure by SOM
CONSTRUCTION & INSTALLATION: Project Rattan
PHOTOGRAPHY: Hufton + Crow
PHASE 1 COMPLETION: May 2024

PROJECT SUMMARY: Enter Projects Asia has designed, delivered, and constructed the interiors of the 12,000sqm post-security departures area of Bengaluru International Airport. The space which contains retail, hospitality and relaxation areas was designed using over 9km of rattan and features hand-wrought techniques at a previously unimagined scale.

Enter Projects Asia was approached by BIAL Ltd. to design 12,000 sqm of retail, hospitality, and relaxation space within Kempegowda International Airport’s departures area as part of its interiors upgrade. Taking inspiration from the 20th-century Garden City urban planning movement, upon which Bangalore city is based, BIAL Ltd. wished to reimagine a future in which the best of the city and the countryside could coexist to create a utopian present for the airport’s 20 million annual visitors.

Keane and his team understood that there was another way to achieve the functions of enclosure, shelter, segregation, privacy, and conventional building requirements by using a suite of softer, more nature-based materials. Having studied the super airports of the last few decades Keane challenged himself to conceive a next-generation design as an antithesis to the often beautiful, yet utilitarian, corporate, and ultimately hard spaces that prioritize unsustainable panel materials. By taking plant-based materials like reeds, rattan, and bamboo out of context, away from the boutique wellness retreats of Southeast Asia, for use in such an overtly urban and commercial environment, and at such a scale, Keane wished to make a bold statement regarding the possibility and necessity of tactility, sustainability, and biophilic design for the future.

EPA developed its signature design language and harnessed its unique handmade approach to create a series of curvaceous, sculptural rattan pods at an exponentially larger scale than previously imagined. The largest of the pods stands at nearly 8m high and the project overall used over 9km of rattan in replacement of mineral materials such as concrete and steel. The design itself incorporates 5 colossal pod structures along with vast column claddings all fabricated in rattan. The largest of the pods, which will house a Wolfgang Puck eatery, features 750 sqm of internal floor space, a huge internal staircase, a small gazebo, and its own garden. The remaining pods will be occupied by other world-renowned brands.

EPA works with traditional Thai craftspeople, providing a new lifeline for these heritage craft communities. Each section of the vast design was handwoven at EPA’s Bangkok factory in line with the practice’s bespoke logistics software for the most efficient, economical, and sustainable shipping solutions. This merging of novel high-tech software and handmade craft, along with the prioritizing of natural materials defines the practice’s award-winning approach to innovation and sustainability.

Design details play with the density of rattan weaving, at once full density, hiding functional kitchen and back of house, the weaving then morphs dramatically into a very open style adding a sense of growth and dynamism in which the design itself feels like an organic element. Lighting design enhances this effect and adds to the experiential and biophilic nature of the space. The priority is the enhancement of the natural warmth of the materials. Planting adds the finishing touches to the scheme with 700-year-old olive trees, hanging gardens and thriving vines all contributing to the Garden City concept.

EPA’s ground-breaking design has succeeded in providing a stark contrast to the iconic yet corporate super airports of the past and serves as a new model for the use of the principles and materials associated with well-being design at an industrial scale. ‘If you think of rattan structures, bamboo framing, handmade elements, wood, you think ‘Oh wellness retreat, somewhere remote.’ But now you’re seeing it in an airport where they’re welcoming 20 million visitors a year, like what the hell? Wellness has become mainstream. If you touch a pod, it feels like a tree. It doesn’t feel like a wall. EPA is redefining these materials and their applications.’ Patrick Keane, Principal, EPA.

「T2 Kempegowda International Airport」Enter Projects Asia 公式サイト

https://www.enterprojects.net/project/kempegowda-international-airport#0

 

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