[Interview]iF Design代表のウヴェ氏に聞く、建築と都市の2026年メガトレンド - TECTURE MAG(テクチャーマガジン) | 空間デザイン・建築メディア
[Interview]iF Design代表のウヴェ氏に聞く、建築と都市の2026年メガトレンド

[Interview]iF Design代表のウヴェ氏に聞く、建築と都市の2026年メガトレンド

世界で最も権威あるデザイン賞の1つ「iF Design Award」。2026年も厳正な審査を経て、最高賞である「ゴールドアワード」74組が発表されました。今回、TECTURE MAGは、iF Design代表のウヴェ・クレメリング(Uwe Cremering)氏にお話を伺いました。空間デザインのトレンドや審査基準、そして日本の建築家が世界で躍進するためのヒントを探ります。


ー 今年は74組がゴールドアワードに選ばれました。その選定プロセスや、iF Design Awardについて教えてください。

ウヴェ氏(以下、Uwe)ゴールドアワードの選定は、審査の中でも非常に濃密なプロセスです。実は「一番良い」プロジェクトというものは、厳密には存在しません。まず個々の受賞者が決まり、その後、異なる構成のグループに分かれた審査員たちが「誰がゴールドアワードになり得るか」を徹底的に議論して決定します。

ゴールドアワード選定が特別なのは、全93カテゴリーにわたる俯瞰的な視点が得られる点です。大手グローバル企業から小規模な個人デザイナーまで、国も企業規模も異なる多様な受賞者が並びます。この圧倒的な多様性こそが、iF Design Awardの本質です。

空間デザインにおける「サステナビリティ」

ー 建築メディアの視点でお尋ねします。空間デザインの分野において重要なトレンドや評価基準は何でしょうか?

Uwe:空間デザインにおいては、素材の選択が極めて重要な役割を果たしています。また、家具がテクノロジーと結びつくケースが増えるなど、テクノロジーとの接点もますます増えています。そして、このカテゴリーにおいて依然として最大の推進要因となっているのが「サステナビリティ」です。

ー iFでは、インテリアや建築のプロジェクトにおいてサステナビリティをどのように評価していますか?

Uwe:私たちは、すべての応募作を「アイデア」「フォルム(造形)」「機能」「差別化」「サステナビリティ」という5つの主要基準で審査しており、「サステナビリティ」は全体の約20%の重みを占めています。2年前からは独立した評価基準として設け、今日の空間デザインにおけるプロジェクト同士の差別化は、このサステナビリティの部分にかかっています。

今日のサステナビリティは、素材やサプライチェーンを含め非常に複雑です。そのため、iFには専任のサステナビリティ専門家グループがあり、審査員が素材やプロセスに疑問を持った際は、彼らに直接相談できる体制を整えています。

私たちはサステナビリティを一時的な「トレンド」ではなく、製品や建築にとって一貫した本質的要素、つまり環境面だけでなく社会的責任も含めたものと捉えています。空間デザイナーは今後、サプライチェーン、素材選定、代替可能性、そして耐久性といった多角的な観点から設計を考慮する必要があると考えています。

2026年のメガトレンド:建築と都市の未来

ー iFは毎年トレンド予測を発表していますが、今年のトレンドの中で特に建築や空間に関わりの深いものを教えてください。

Uwe:私たちはトレンドをあらかじめ決めているわけではなく、社会のメガトレンドとアワードへの応募作品から得られる知見を照合し、国際機関やトレンド研究機関と共に協議しています。今年は初めて「トレンドと対抗トレンド」という対になる形で4つのトレンドを提示しました。その中でも建築に深く関係するのが、Next Natureと、Unfolding Citiesの2つです。

ー それぞれについて教えていただけますか?

Next Natureについては、建築とも非常に関係の深いものです。いま、色や素材、さらには造形においても、自然によりいっそう統合された建築物が増えています。過去は自然環境の中に独立した対象物として住宅を建てる発想が主流でしたが、現代の建築家たちは、周囲の山や森の形状に建物を合わせるなど、自然の中に溶け込み、ほとんど「見えなくなる」ほどに統合させる方法を見出しています。

対して、Unfolding Citiesは、日本の建築家にとっても非常に関連性の高いトピックです。主要都市が年々規模を拡大する中で、現代の都市計画では、公共交通機関の整備や、気候変動への耐性(雨水が的確に排水できることなど)を考慮する必要があります。同時に、人々が自分たちの文化に沿って暮らせるよう、共通の背景を持つ人々が集まる地区の形成なども見られます。歴史あるヨーロッパの都市でも都市計画への投資はますます重要になっていますが、日本でも同様だと考えています。

特に建築分野の大きな動向として、寒さ、大雨、強い日差しなど、あらゆる種類の気候変動に対して住宅をレジリエント(耐性を持つ状態)にする設計が増えているように思います。

日本のデザインが持つ強みと、世界へ挑むデザイナーへのメッセージ

ー 日本の受賞者や、日本のデザイン全体の印象についてはいかがですか?

Uwe: 私は日本発のデザインの力強さの大ファンです。毎年ゴールドアワードだけでなく、通常の受賞者数も日本は突出して多く、iF Design Awardにおいて最も成功している国の1つです。日本のデザインの際立った強みは、「伝統・人間中心・テクノロジー」の組み合わせにあります。コミュニケーションデザインから建築、プロダクトにいたるまで、非常に人間中心的であり、そこにグローバルなテクノロジー企業の力や伝統の精神が融合しています。また、近年は「iF Design Student Award」に参加する優秀な日本人学生が増えていることも非常に嬉しく思っています。

ー 最後に、日本のデザイナーや建築家がグローバル市場を目指す上で、心に留めておくべきアドバイスをお願いします。

Uwe: 1つは「本物であること(オーセンティシティ)」。そしてもう1つは、今の時代において極めて重要な「パーパス(存在意義・目的)」を持つことです。「新しいものが必要だからとりあえず作る」のではなく、その建築やプロダクトがなぜ存在するのかという確固たる存在意義が必要です。日本には伝統があり、それが作品に深い存在意義を与えることができますし、人間中心のテクノロジーもあります。この素晴らしい能力を活かし、ぜひ世界へ挑戦していただきたいですね。


iF DESIGN AWARD 2026「iFゴールドアワード」受賞作品:奄美大島の家(AMAMI HOUSE)

今年のiF Design Award 2026の建築部門ゴールド受賞作〈奄美大島の家(AMAMI HOUSE)〉(設計:酒井建築事務所/酒井一徳)は、ウヴェ氏の語る「伝統・地域性・気候への適応」を見事に落とし込んだ試みとなっています。

If Design Award 2026 Fotos: Marlena Waldhausen, Liesa Johannssen, Sophie Kirchner

〈奄美大島の家〉は、設計者である酒井氏の自邸でもあり、亜熱帯の過酷な気候にエアコンなしで挑む実験的住宅としてつくられました。「気候レジリエンス」とエネルギーの「完全オフグリッド」を両立させた住宅で、敷地内は機能ごとに棟を分けた「分棟型」の配置を採用。奄美大島の伝統建築である高床式倉庫「高倉」の知恵を現代的に再解釈し、建物全体を覆う巨大な大屋根を架けることで、直射日光を遮りながら豊かな風を内部へと導く構造を実現しています。エアコンに依存しないパッシブデザインを徹底しつつ、創り出された半屋外空間を地域住民へも開くことで、古くから島に伝わる相互扶助の精神「結い(ゆい)」を現代の建築空間として再生させている点が高く評価されました。

〈奄美大島の家〉Photo: toshihisaishii

〈奄美大島の家〉Photo: toshihisaishii

〈奄美大島の家〉Photo: toshihisaishii

トップ写真:If Design Award 2026 Fotos: Marlena Waldhausen, Liesa Johannssen, Sophie Kirchner

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