パビリオンDATA
- 設計
Carlo Calma Consultancy Inc. / cat- エリア
エンパワーリングゾーン- テーマ
WOVEN ウーブン 自然、文化、そして人々-よりよい未来をともに織りなす
フィリピン館の見どころポイント!

Photo: Masaki Komatsu
〈フィリピンパビリオン “WOVEN”〉 は、フィリピン組織委員会(観光省(DOT)・フィリピン観光促進庁(TPB)主導)のもと、Carlo Calma Consultancy と cat による建築設計、エクスペリエンスデザインには Tellart、クリエイティブプロデュースには 1053.co の Chochay Garcia を迎え、淺川組・西尾レントオール特定建設工事共同企業体の施工にて実現しました。ウーブン(織物)をテーマに、自然、文化、人々の営みを織り交ぜたパビリオンとして、2025年4月13日より一般公開されています。

Photo: Masaki Komatsu
〈フィリピンパビリオン “WOVEN” 〉は、7,641の島々から成るフィリピンの自然、文化、そして人々の多様性を象徴する建築です。
パビリオンのテーマである “織る” という概念そのものをインスピレーションに、家具スケールの外装材であるラタンパネルと、フィリピン各地のコミュニティから収集した伝統工芸の手織りファブリックパネルをファサードに用い、これらを織りなすように建築を構成しています。
手仕事によるヒューマンスケールの要素を都市・建築スケールへと拡張していくことを試み、フィリピンの自然、文化、人々を中核に据え、それらをエンパワーする建築のあり方を目指しました。
ファサードを覆う1,000枚を超える手編みのラタンパネルは、フィリピンのクラフトマンシップを象徴し、縦糸と横糸が編み上げられる籠状の構造を建築として表現しています。
また、フィリピン18州を横断して収集された212枚の手織りファブリックパネルは、フィリピン最大規模の手織り職人によるコラボレーションによるものであり、コミュニティが織りなす手仕事の力を建築の核に据えています。

Photo: Masaki Komatsu
展示空間は「WOVEN(織りなす)」を主題とし、フィリピン18州をテーマにしたサステナブルな素材による手織りタペストリーの展示や、フィリピンの自然のエレメントを身に纏う体験ができるインタラクティブスクリーン「Dancing With Nature」、AIフォトブース、ギフトショップ、マッサージが受けられるウェルネスエリア、テイクアウトカウンターなど、多彩な展示・機能を有しています。

Photo: Masaki Komatsu
建築は非常に限られた期間の中での設計・建設を実現するために、またリユースを前提にモジュール式CLTパネルを用いた大スパンの構造体を採用し、外皮としてのラタン・ファブリックパネルのファサードを工作物として鉄骨造で構築しています。また、建設時に利用する足場をパビリオンの仮設建築物の一部(構造体)として利用し、再利用性を最大化することを実現しました。

Photo: TEAM TECTURE MAG
タイトな工期が前提の万博において工期を短縮させるために、CLTと張弦材を用いたハイブリッド工法(西尾レントオール・ATA社)を採用し、またリユースを目的とした工法を採用することで、CLTの構造体を再利用するということをプロジェクト当初から計画しました。

Photo: Masaki Komatsu
CLTの構造体が基本モジュールとして決定し、外装を考える際に、無駄な建材を使い、会期終了後に破棄することを最大限避けるため、CLTの建て方に使用する建設用足場を建築物の構造体として採用することにしました。その結果、建設に用いる足場はCLTの建て方、ファサードのスチールフレームの建設、外装のラタンおよび織物パネル材の取り付け、それぞれに施工上利用できるように設計しました。

Photo: Masaki Komatsu
この、「足場を設計する」という行為により、建設に最適化した構造体そのものが展示としての機能を担う建物と表層のファサードをつなぐ存在となりました。結果生じた空間を可動式のパネルによるファサードによって開放し、ライブパフォーマンスを行う場所として、建築の内外をつなぐ機能を実現しました。展示物や什器などもサーキュラー性を意識し、再利用可能なものとして構築しています。

Photo: TEAM TECTURE MAG

Photo: TEAM TECTURE MAG
展示のための箱としてのCLT構造体と、フィリピンにて製作したラタンパネルと手織りの織物パネルによるファサード。建築としてはこれらが分断する状況が十分想定されていた中で、また万博という特殊な条件(施工期間11カ月、会期6カ月、解体6カ月)の中で、施工および解体の期間が支配的であるプロジェクトの構造を利用し、足場を設計対象としました。
構造設計は金田泰裕さん(yasuhirokaneda STRUCTURE)が担当し、リユース性を向上させるために汎用材を最大限採用したディテールとなっています。

Photo: Masaki Komatsu
全体の無駄を省くという意味でサステナビリティへの貢献方法を考え、万博の建築メソッドに対しての現代的な在り方を目指しています。また、パビリオンの設計においては、建築と展示が双方主役となる中で、建築はコストや工期などの制約からより表層的な表現が求められ、展示はブラックアウトされた空間が求められる、という状況が必然として存在しています。足場によって生じた空間をライブパフォーマンスのステージとして利用することにより、分断していた表層と内部の展示空間を少しでもつなげ、建築をより奥行きのあるものとして構築するということを実現しています。(加納佑樹 / cat)

Photo: TEAM TECTURE MAG

Photo: Masaki Komatsu
トップ写真撮影:Masaki Komatsu
Tourism Board Philippinesフィリピン観光振興局 公式サイト
https://phworldexpo.tpb.gov.ph/
Carlo Calma Consultancy 公式サイト
https://www.juancarlocalma.com/expo2025woven
cat 公式サイト
https://www.catarchitecture.net/works/woven