WOWが展覧会ディレクターを務める「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2にて開催、会場構成をトラフ建築設計事務所が担当 - TECTURE MAG(テクチャーマガジン) | 空間デザイン・建築メディア
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WOWが展覧会ディレクターを務める「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2にて開催、会場構成をトラフ建築設計事務所が担当

「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2にて開催

展覧会ディレクター:WOW / 会場構成:トラフ建築設計事務所

東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2にて、「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」が7月4日より開催されます。

ビジュアルデザインスタジオ・WOW(ワウ)が展覧会ディレクターを務め、会場構成を建築家の鈴野浩一氏と禿 真哉氏が率いるトラフ建築設計事務所が担当します。

「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」は、WOWのディレクションのもと、会場に散りばめられた防災や災害に関する「問い」を通して、防災や災害について、来場者自分の視点で向き合う体験を提供します。

WOW「みんなは、どうする?」

WOW「みんなは、どうする?」

 

ディレクターズ・メッセージ

「防災」や「災害」という言葉を目にしても、どこか遠い出来事のように感じることがあります。しかし突然、自然の力が脅威となり、当たり前のように使っていたインフラやシステムが機能しなくなる。そんな事態、「そのとき」は、なんの前触れもなく、平穏な日常のさなかに訪れます。

それでも人は、本能的に死や喪失を予感させるものから目をそらしてしまうと言われています。生きることへの本能が私たちを守ろうとするのかもしれません。実際に直面しない限り、「そのとき」を想像することは、決してやさしいことではありません。仙台に拠点を持ち、それぞれの場所で震災を経験した私たちにも、そう感じる瞬間があります。

未来に、どのような災害がどれくらいの規模で起こるのかは誰にもわかりません。災害の種類や頻度もたえず変化しています。この変化を思えば、「そのとき」は、災害が起きた瞬間だけを指すのではないのでしょう。「そのとき」は、さまざまな時間軸や場所に存在しているのだと思います。

災害への対処には、研究や想定をもとに導かれた「答え」があるかもしれません。しかし「そのとき」に何を思い、どのように備えるのかは、人や状況によって異なるはずです。

WOWはビジュアルデザインスタジオとして、作品を発信するだけでなく鑑賞を通じて思考を促す表現を探求してきました。今回のテーマである「防災」においては、災害の仕組みや防災技術を伝えるのではなく、それに向き合う人々の意識や、心のあり方に目を向けています。防災は、誰かひとりが背負えるものではありません。自分だけでなく、家族、友人、同僚、あるいは隣にいる誰か。他者がどのように「そのとき」を捉え、備えようとしているのか。そんな視点も手がかりにしながら、自分自身の問題としてとらえ直すきっかけを届けたいと思いました。

本展は、私たちが災害にどう向き合っていくのかを見渡す場所です。シミュレーション、プロダクトデザイン、古の伝承、そして願い――。「そのとき」の先にある希望のかたちを、さまざまな問いを通して考えます。自分なりに思いをめぐらせたり、さまざまな考えに触れたその経験が、いつか訪れるかもしれない「そのとき」 への静かな備えとなって、困難をしなやかに乗り越えるための支えとなっていくことを願っています。

展覧会ディレクター WOW


WOW

東京、仙台、ロンドンに拠点を置くビジュアルデザインスタジオ。企業の世界観を描くブランド・コンセプト映像、商業施設や都市空間におけるインスタレーション、アプリケーションの設計やメーカーと共同開発する。ユーザーインターフェースまで、既存のメディアやカテゴリーにとらわれない、幅広いデザインワークをおこなっている。一方、オリジナルのアート作品やプロダクトも積極的に制作。国内外の美術館やギャラリーで展示を多数実施。クリエイター個人の感性を起点に、世界の新たな一面を照らし、人々の心を躍動させる。

WOW ロゴマーク

WOW Website
https://www.w0w.co.jp/

主な展示

災害のビジュアライゼーション

データビジュアライゼーション、絵画史料、グラフィックなどのさまざまな視覚表現から、日本や地球が経験してきた災害を振り返り、ありのままの自然や災害のシミュレーションを可視化したものから考えを広げる展示。

出展:越村俊一、日本経済新聞社「『地震列島』日本」、にゃんこそば、パノラマティクス+Eukarya、ヤマップ「YAMAP流域地図」ほか

日本経済新聞社「『地震列島』日本」

日本経済新聞社「『地震列島』日本」

ヤマップ「YAMAP流域地図」

ヤマップ「YAMAP流域地図」

防災意識を見つめ直すインスタレーション

災害が発生する頻度や、防災に対する構え方を見つめなおす体験型の新作インスタレーション2点を展示。

出展:柴田大平「防災グラデーション」、siro+石川将也「そのとき、そのとき、」

柴田大平「防災グラデーション」

柴田大平「防災グラデーション」

siro+石川将也「そのとき、そのとき、」

siro+石川将也「そのとき、そのとき、」

プロジェクト・研究・プロダクト

災害時の通信手段の断絶に対処するための斬新な研究や、スピーディーな情報発信を担うプロダクト、混乱期のその後の生活と心を支えるための取り組みや考え方、そして日常から取り入れる「備えない防災」など、さまざまなフェーズにおける取り組みやモノから、防災の「いま」と「これから」を紹介。

出展:WOTA、KDDI、ゲヒルン「特務機関NERV 防災アプリ」、中嶌 健「災害救援鳩の研究」、坂茂建築設計+ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク「避難所用・紙の間仕切りシステム」ほか

ゲヒルン「特務機関NERV防災アプリ」

ゲヒルン「特務機関NERV防災アプリ」

中嶌 健「災害救援鳩の研究」

中嶌 健「災害救援鳩の研究」

坂茂建築設計+ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク「避難所用・紙の間仕切りシステム」

坂茂建築設計+ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク「避難所用・紙の間仕切りシステム」

「そのとき」の先にある希望のかたち

災害が起きた場所の風土や人と向き合い制作された絵画、震災から生まれ世界に広がったものづくりのデザイン、「毎日災害が起こる可能性を忘れない」という意識を伝えつづける取り組みなど。災害と日常をつなぐ表現を通じて、「そのとき」の先にある希望を見つめる。

出展示:佐竹真紀子「Seaside Seeds」、トラフ建築設計事務所+石巻工房「女川町仮設住宅 ベンチワークショップ」、日本郵便+寺田倉庫「防災ゆうストレージ」、バリューブックス、福島民報社 ほか

佐竹真紀子「Seaside Seeds」

佐竹真紀子「Seaside Seeds」 写真提供:水戸芸術館現代美術センター 撮影:根本 譲

トラフ建築設計事務所+石巻工房「女川町仮設住宅 ベンチワークショップ」

トラフ建築設計事務所+石巻工房「女川町仮設住宅 ベンチワークショップ」

日本郵便+寺田倉庫「防災ゆうストレージ」イメージ

日本郵便+寺田倉庫「防災ゆうストレージ」イメージ

自然や自分とのつきあい方

樹々の生態系と人間がともに歩む防災や、自らを守る最後の砦としての「服」など、普段目にするまちの防災機能とは異なる視点から、私たちを守るものについて思考する。

展示:veig「蒸庭」、津村耕佑「FINAL HOME」ほか

veig「蒸庭」

veig「蒸庭」 Photo: Hiroki Tagawa(nando inc.)
片野晃輔と西尾耀輔による造園ユニット・veigは「ゴミうんち展」(「漏庭」展示風景)および「ラーメンどんぶり展」に続く出展

津村耕佑「FINAL HOME」

津村耕佑「FINAL HOME」
津村耕佑が 1994年に立ち上げと当時に発表した”都市のサバイバルウェアー”。人が非常事態に直面したとき、デザイナーとして提供できるデザインとは 何かという自らの問いを具体化したコートで、その後も更新を続けている / https://www.finalhome.com/

 

21_21 DESIGN SIGHT企画展「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」開催概要

会期:2025年7月4日(金)〜11月3日(月・祝)
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
所在地:東京都港区赤坂9丁目7−6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン(Google Map
休館日:火曜(※9月23日[火]は開館)
開館時間:10:00-19:00(入場は18:30まで)
※六本木アートナイト特別開館時間:9月26日(金)、27日(土)は22:00まで(入場は21:30まで
入場料:一般1,600円、大学生800円、高校生 500円、中学生以下無料
主催:21_21 DESIGN SIGHT、公益財団法人三宅一生デザイン文化財団
後援:文化庁、経済産業省、港区教育委員会
特別協賛:三井不動

展覧会ディレクター:WOW
グラフィックデザイン:佐々木 拓、金井あき
会場構成:トラフ建築設計事務所
テキスト、企画協力:角尾 舞
学術協力:関谷直也
参加作家:veig、WOTA、KDDI、ゲヒルン、越村俊一、佐竹真紀子、柴田大平、siro+石川将也、角尾 舞+香田悠真+佐々木 拓、津村耕佑、トラフ建築設計事務所+石巻工房、中嶌 健、中村至男、日本経済新聞社、日本郵便+寺田倉庫、にゃんこそば、パノラマティクス+Eukarya、バリューブックス、坂茂建築設計+ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク、福島民報社、ヤマップ、WOW ほか

21_21 DESIGN SIGHT企画展「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」フライヤー

展覧会ページ
https://www.2121designsight.jp/program/bosai/index.html

21_21 DESIGN SIGHT 公式SNS
https://x.com/2121DESIGNSIGHT
https://www.instagram.com/2121designsight/
https://www.facebook.com/2121DESIGNSIGHT


WOW × トラフ建築設計事務所が語る「これからの防災」のデザイン
―防災を”問い”から考え直す展覧会

従来の「防災展」とは一線を画す展示で注目を集めている「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」。
展覧会の企画背景や空間構成の意図について、ディレクターの大内裕史、加藤 咲、白石今日美、そして空間構成を担当したトラフ建築設計事務所の鈴野浩一の各氏に話を聞いた。

タイトルにある「そのとき」という言葉が示すのは、災害発生時だけでなく、私たちが日常の中で“どう生きるか”という時間も含む。展示全体を貫くのは、防災を「教える」でも「訓練する」でもない、新しいアプローチだった。

マニュアル以前の「問い」から始める防災

WOWの大内裕史氏は、今回の企画の出発点を次のように語る。 「ハザードマップを確認しましょう、机の下に隠れましょう、というような避難訓練的な防災ではなく、防災にはそれぞれの答えがあっていいよね、というところから始まりました」。

行政や学校が取り組む防災は「明日から使えること」が中心だが、今回の展覧会はそうではない。プロジェクト全体を通して意識されたのは、「防災とは何か」を改めて問い直すこと。白石今日美氏も続けて、「例えば伝書鳩のように、すぐに役立つわけではないけれど、未来の想像を促すような作品を選んでいます」と語る。

展覧会では、行政から発信される情報の背後にある研究も可視化している。東北大学の越村俊一教授の研究映像などを紹介し、「ハザードマップとして提供されるものの後ろ側にある研究も語りたかった」と白石氏は振り返る。一般の人が好奇心を持って見られるものにすることを目指したという。

展示作品の選定は、1つの問いに対して1人の作家を配置するという方法で進められた。作品や作家の選定ではディスカッションを重ね、問いと作家を行ったり来たりするプロセスだったという。「問いを立てて、それに対して作家を探した場合もあれば、作家が先に見つかって、それに合わせて問いをつくった場合もある」と白石氏は説明する。

加藤 咲氏は「いわゆる防災マークのような“防災的なデザイン”には、あえて触れなかった。街中で見つけられるものは、ここで紹介しなくてもいい。日常に取り入れやすいもの、防災という顔をしていないけれど実は役に立つ機能性があるものを選びました」と説明する。プロジェクトについても、「被災地のために」という前のめりなものよりも、石巻工房のように「コミュニティから自然と生まれていったもの」、暮らしの連続性の中の防災を重視したという。

 「問い」が林立する空間を歩み、希望を見出す

防災をテーマにした展示は、ともすれば恐怖や危機感に訴えるものになりがちである。しかし本展では、全体としてポジティブな印象を受ける。その温度感の設定には、チーム全体で慎重な議論が重ねられたという。

大内氏は「21_21 DESIGN SIGHTから発信する意味を考えると、怖がらせたり危機感を煽るのではなく、その先を見据えて、こんな生き方や角度だってあるよと見せる場所だろうと。みんなが希望を見出せるものにしたい、というのが暗黙の了解でした」と語る。

ただし、バランスは難しい。「楽しくハッピーな体験形式などにしてしまうと、テーマに対して軽すぎる。ある程度迫ってくる緊張感がありつつも、前向きでありたい。空間設計もグラフィックも企画も、全体で温度感を探りました」と白石氏は振り返る。

その温度感を支えるのが、トラフ建築設計事務所による空間デザインだった。鈴野氏は、展示を「問いの森」と形容する。「展示物は“答え”ではなく、考えるための“きっかけ”。問いが林立していて、自分の考えがないと出られないような空間を検討しました」。

「問い」は高さ5mを超える壁として立ち、側面にはヒントが記され、来場者は両方を見ながら進む。そして高さ450mmや900mm程度の低い壁が迷路のように配置され、自分の答えを考える時間を過ごす。最後にはライゾマティクスの作品が広がる「広場」へとたどり着き、希望につながる体験をすることになる。

Photo: TEAM TECTURE MAG

もう1つのユニークな試みが、会場である21_21 DESIGN SIGHT自体に隠された防災設備の可視化だ。「非常階段やスプリンクラー、非常灯の配置など、安藤忠雄さんの建築にも多くの防災的工夫があります。普段は意識しないよう美しくデザインされていますが、それらを初めて意識させた展示になったと思います」と鈴野氏は語る。さらに、周辺の都市にある防災設備を撮影し、壁面に展示。「まずは自分の足元から気づくこと」を促している。

Photo: TEAM TECTURE MAG

「今の子どもたちは3.11を知らない世代です。だからこそ、“怖さ”ではなく、“考えることの面白さ”から防災に触れてほしい。未来を担う人たちが、自分の答えを持てるような展示でありたいと思いました」と大内氏は語る。

本展が提示するのは、「正解を知る」マニュアル的な防災ではなく、デザインを通じて「問い続ける」防災である。

(2025.11.02追記)
Interview & text: Jun Kato, Naoko Endo

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