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せんだいメディアテーク巡回「公共建築はみんなの家である」展

建築家の伊東豊雄(1941-)がこれまで手がけてきた建築作品のうち、4つの公共建築、宮城県の〈せんだいメディアテーク〉(2000年竣工)、長野県の〈まつもと市民芸術館〉(2004年)、東京都の〈座・高円寺〉(2008年)、岐阜県の〈みんなの森 ぎふメディアコスモス〉(2015年)にスポットをあてた展覧会です。

伊東豊雄〈座・高円寺〉

〈座・高円寺〉

伊東豊雄〈まつもと市民芸術館〉

〈まつもと市民芸術館〉

1990年代から数多くの公共建築を手がけてきた伊東氏は、東日本大震災や熊本地震などの被災地において、住民の要望をベースに、人々がともに集い、憩いの場となる〈みんなの家〉を建設するなど、公共としてあるべき建築の姿を考え、実践してきました。伊東氏は、これからの公共建築は、機能で分割された空間によって人の活動が制約されるのではなく、〈みんなの家〉のように、利用者主体で考えられ、あらゆる人がまるで自然の中で過ごすようにして、自由かつ主体的に活動できるものでなくてはならないと考えています。
本展では、〈せんだいメディアテーク〉館長で哲学者の鷲田清一氏をはじめ、それぞれの館でキーパーソンとなっている人々へのインタビューや、利用者へのアンケートなどによって、伊東氏が設計した4つの公共施設が、開館から時を経た現在、どのように使われているのか、どのような場となっているかを浮かび上がらせ、今日の公共建築の意義とこれからのあるべき姿について、来場者と共に考えていくことを試みます。

〈みんなの森 ぎふメディアコスモス〉

〈みんなの森 ぎふメディアコスモス〉 撮影:中村 絵

伊東豊雄氏からのメッセージ:
私たちは30年にわたって国内外の公共建築の設計に携わってきました。当初、「西欧では公共建築に関わらない建築家は建築家として認められない」といった言葉を信じ、公共建築の設計に関わることに固執していました。
しかしいざ参加してみると、次第に日本の公共建築の問題が明確に浮かび上がってきました。
管理意識が強く、利用者にとっては必ずしも望ましい建築がつくられていないと気付いたのです。では、利用者にとって望ましい建築とはどのような建築でしょうか。

利用者にとって望ましい建築とは、毎日でも行きたくなる建築です、毎日でも行きたくなるのは、行くのが楽しい建築、居心地の良い建築だからです。
しかし、我が国の公共建築は、利用者にとって楽しい建築、居心地の良い建築をつくろうとするよりも機能的な建築、管理しやすい建築をつくろうとする傾向が強いように感じられます。
「機能」という概念は、20世紀以来の近代主義建築にとってきわめて重要な言葉です。「機能」は機械を構成する部品の性能とか効率のようなもののはたらきを指す概念です。
建築における機能概念は、機械部品のように人々の活動を分割して、それぞれに特化した空間に振り分け、活動別に人々をその空間に入れ込もうとしてしまうのです。

しかし、人々の多様な活動を機械部品のように要素に分割し、その組み合わせと考えるのは科学技術に頼る西欧近代主義的思想に他なりません。そうした方法から楽しい空間や居心地の良い空間が生まれるとは思われません。楽しさや心地良さは人間の身体感覚に基づく性質であり、決して機能毎に分割された空間(部屋)から得られるのではありません。

人は屋外、即ち自然の中では機能によって自らの活動を制限されることはありません。自
然の中にはさまざまな変化に富んだ場所があります。明るい場所、暗い場所、乾いた場所、じめじめした場所、広い場所、狭い場所等々・・・。
自然の中で人々は、自分の活動の場所を自由に選ぶことができます。例えば読書をしたい時、人は木陰のベンチで読書することもできれば、芝生に寝転がって読書することもできます。
我々は自然の中で読書するような図書館をつくりたいと考えてきました。即ち、建築の内にいても、特定の部屋に居ることを強要されるのではなく、自然の中にいるようにさまざまな場所を自由に選ぶことができる建築、母子も高齢者も一緒にいることができる、子供も好き勝手に走り回ることができる、そんな公共建築をつくりたいと考えてきました。

私たちがこれまで携わってきた公共建築の多くは、日々たくさんの人々で賑わっています。そのにぎわいは、自由に振る舞える場所をつくろうとしてきたからだと信じています。機能にとらわれた部屋に分けてしまうことを、極力避けようとしてきたからだと思います。

私たちのつくってきた公共建築の多くで壁が少ないのは、部屋に分節されない流動的な空間の中に、変化に富んだ場所をつくろうと考えたからです。

その結果そのような賑わいの空間では、幼児、主婦、ビジネスマン、学生、高齢者など多くの人々が自由にそれぞれの居場所を定めることが容易になりました。混在している様子は、ゆるやかで、大きな家族の姿を想わせます。

私達が東日本大震災や熊本地震後の被災地でつくった〈みんなの家〉は、仮設住宅団地を中心に近隣の人々が集まって話し合いや食事をしたり、各種イベントなどの場として活用されています。〈みんなの家〉は、従来の公共施設のように自治体が内容を予め設定するのではなく、利用者と話し合い、利用者の要望をベースにつくられてきました。これからの公共建築は〈みんなの家〉のように利用者主体に考えられなくてはならないと思います。
今回の展覧会では、私たちがこれまでに設計した4つの公共建築を取り上げ、それらがいかに利用されているかを追求してみました。とりわけ館長や芸術監督にインタビューを試み、どのような施設を意図しようとしているかを語ってもらいました。また、利用者やスタッフの人達にもインタビューやアンケートを通じて、実態に迫ろうとしました。こうした試みから、これからの公共建築のあるべき姿を浮かび上がらせたいと考えます。

「公共建築はみんなの家である」展 〜伊東豊雄の4つの公共建築〜
会期:2020年8月20日(木)〜10月21日(水)
休館日:8月27日(木)、9月24日(木)
開館時間:9:00−20:00
会場:せんだいメディアテーク 7階ラウンジ
入場無料
主催:伊東豊雄建築設計事務所、せんだいメディアテーク(公益財団法人仙台市市民文化事業団)
詳細 https://www.smt.jp/projects/toyoito2020/2020/07/post.html
http://itojuku.or.jp/news/9701

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