東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2にて、企画展「デザインの先生」が11月21日より開催されます。
本展でフォーカスする”デザインの先生”は、フライヤーに顔写真が載っている以下の6名。ひとりを除いて全員鬼籍に入っていますが、いずれも20世紀を代表するデザイナーたちです(敬称略)
ブルーノ・ムナーリ / Bruno Munari(イタリア生まれ、1907–1998年)
マックス・ビル / Max Bill(スイス生まれ、1908–1994年)
アキッレ・カスティリオーニ / Achille Castiglioni(イタリア生まれ、1918–2002年)
オトル・アイヒャー / Otl Aicher(ドイツ生まれ、1922–1991年)
エンツォ・マーリ / Enzo Mari(イタリア生まれ、1932–2020年)
ディーター・ラムス(ドイツ生まれ、1932年–)
本展の企図については、展覧会ディレクターを務めるデザインジャーナリストの川上典李子と、キュレーターでライターの田代かおるの両氏によるテキストと、プレスリリースのテキストから説明します。
『TECTURE MAG』では、開幕前日のプレス内覧会を取材予定です。後日にレポートを掲載します(Comming Soon!)。
ディレクターメッセージ
ふと見回せば私たちは、なんと多くの人工の「かたち」に囲まれて暮らしていることでしょう。
そのなかで「優れたかたち」の存在はごく限られた数です。背景には、目に見えない長いプロセスがあり、ひとつひとつに、積み重ねられた時間と思索が凝縮しています。だからこそ時代や文化を越えて語り継がれ、特別な輝きを放ち続けるのです。本展は、国境を越え、人々を驚かせ、社会を動かす力を持ち、現代においてなお特別な輝きを放つ6名を「デザインの先生」と呼び、彼らのプロジェクトとともに、背景にある哲学を表に引き出す試みです。
ドイツ、スイス、イタリアを母国とする「デザインの先生」たちは、同じ潮流に属していたわけではなく、それぞれが異なる原動力と哲学をもとに、戦後のヨーロッパで独自の道を切りひらいたマエストロたちです。ではなぜ、仕事の手法や生き方も異なる「先生」6名を、同じステージに招聘したのかと言えば、そこに共通する軸を見たからでした。
商業主義を優先した「かたち」ではなく、ヒューマニティを中心に置き、さらには環境までとらえる営みとしてプロジェクトを行なっていたという軸です。
また「先生」たちが、自身の職能についてドイツ語ではゲシュタルター(Gestalter)のほか、エントヴェルファー(Entwerfer)を、イタリア語ではプロジェッティスタ(progettista)を使用していたことにも注目します。
それは「構想者。設計者。プロジェクトする者。」にあたる言葉で、デザインをより統合的な営みとしてとらえていたことを示しています。本展では、これからの私たちの指針ともなるプロジェクトを改めて展示し、彼らの残した力強い言葉に耳を傾けます。
日常の対象に、実は発見すべき知性が潜んでいる。その気づきが混沌とした現代に問いかけるでしょう。
「私たちは、ここからどう進む?」展覧会ディレクター 川上典李子、田代かおる
主催者メッセージ
さまざまな出会いのなかに、生活や社会の今後について考えを巡らせるヒントがあります。多くの情報が迅速に行きかい、価値観が大きくゆれ動いている今日だからこそ、デザインを通して多様な視座を示してくれた巨匠たちの活動を振り返ってみたいと考えました。
今回フォーカスするのは次の6名、本展では彼らを「デザインの先生」として紹介します。
ブルーノ・ムナーリ(イタリア生まれ、1907–1998年)
マックス・ビル(スイス生まれ、1908–1994年)
アキッレ・カスティリオーニ(イタリア生まれ、1918–2002年)
オトル・アイヒャー(ドイツ生まれ、1922–1991年)
エンツォ・マーリ(イタリア生まれ、1932–2020年)
ディーター・ラムス(ドイツ生まれ、1932年–)デザイン教育の現場で未来を担う人材を育んだ人物も含まれますが、それだけでなく、信念と希望を胸に活動することで各時代の先を探り、社会の新たな局面をもたらした人物であるという点で共通しています。本展ではまた、マックス・ビルやオトル・アイヒャーに学び、後に生涯にわたって親交を深め、日本におけるデザイン学の礎を築いた向井周太郎(1932–2024年)の視点にも触れていきます。
考え、つくり、伝えつづけるデザインの行為は、生きることと切り離せません。代表作をはじめ、残されたことば、記録映像などを通して各氏の人間性に迫りそれぞれのデザイン活動に目を向けるとき、彼らは皆、私たち一人ひとりが考え、主体的に行動し、進んでいくことをまさに期待していたのだということも知るでしょう。
社会のこの先に向けて、デザインの視点に基づき「問い」そのものを投げかけることがこれまで以上に期待されているいま、デザインが担う役割もより広く、より深くなっています。忘れてはならない先人たちの活動の軌跡を改めてふり返ったうえで、この先をどう探り、社会に対してどのようなメッセージを投げかけていけるのか、そのことの重要性についても多くの皆さんと考えていければ幸いです。
とてつもない好奇心と探究心と勇気の持ち主であり、魅力に満ちた先生たちに出会ってください。
会期:2025年11月21日(金)〜2026年3月8日(日)
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
休館日:火曜、年末年始(12月27日〜1月3日)
開館時間:10:00-19:00(入場は18:30まで)
入場料:一般1,600円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料
※各種割引設定については公式ウェブサイトを参照
主催:21_21 DESIGN SIGHT、公益財団法人三宅一生デザイン文化財団
後援:文化庁、経済産業省、港区教育委員会、イタリア大使館、スイス大使館、ドイツ連邦共和国大使館
助成:サカエ・シュトゥンツィ基金
特別協賛:三井不動産
協力:国立工芸館、武蔵野美術大学 美術館・図書館、学校法人多摩美術大学、クワノトレーディング(パージナ)、竹尾、デルフォニックス、フロスジャパン、メトロポリタンギャラリー
展覧会ディレクター:川上典李子、田代かおる
企画協力:向井知子、板東孝明(武蔵野美術大学基礎デザイン学科教授)
企画協力、告知グラフィックデザイン:SPREAD
会場グラフィックデザイン:UMA/design farm
会場構成:TONERICO:INC.
映像制作:菱川勢一(DRAWING AND MANUAL)