「KOKUYO×VUILD」は、文具・家具から空間提案までを手がけるコクヨと、デジタルファブリケーションを基盤に建築・ものづくりの可能性を拡張するVUILDによる協業プロジェクトです。
CNC加工をはじめとするデジタル木工技術を活用し、設計から製造、実装までを一体的に捉えることで、従来の量産や設計手法にとらわれない空間とプロダクトのあり方を探求しています。両者の知見を掛け合わせることで、構想段階にとどまらない「実装を前提としたデザイン」の可能性を社会に提示しています。
こうした取り組みの延長として、コクヨとVUILDは新たな国際デザインコンペティション「Digi Fab Award 2025 by KOKUYO×VUILD」を立ち上げた。本アワードは、デジタルファブリケーション技術を前提に、建築と家具のスケールを横断する公共空間のあり方を問い直す試みです。初回のテーマには「Personal and Public」を掲げ、公共空間における個人性と共有性の関係を再考するアイデアを世界中から募集。多様な文化的背景や設計手法が交差する場として、デザインの可能性が評価されました。
グランプリ作品は、コクヨのオフィス「THE CAMPUS」での展示のほか、イタリア・ヴェネチアで開催された現代建築の国際建築展覧会「ヴェネチア・ビエンナーレ2025」の関連会場のひとつ「ヨーロッパ文化センターPalazzo Mora」でも作品が展示されました。
「Digi Fab Award 2025 by KOKUYO×VUILD」概要
応募期間:2025年6月1日(日)〜2025年7月31日(木)(日本時間23時59分)
募集対象:公共空間に設置される、建築と家具の領域を横断するデザイン
テーマ:Personal and Public
各賞:グランプリ(1点)、優秀賞(最大2点)、佳作(最大5点)
審査基準:
・アイデアが明快であること。
・テーマに沿った提案であること。
・実現可能性があること。
・独創性があること。
審査員:Digi Fab Award 2025 by KOKUYO×VUILD事務局
応募資格:個人やグループ、年齢、性別、職業、国籍:不問。応募規約への同意が必要。
参加費:無料
設置条件:
・素材:使用する素材は木材のみ。
・加工:3軸CNCルータの使用を想定すること。この加工方法に適した形状や構造を提案すること。
・サイズ/構造:制作物はW5000 D5000 H2000mm以内の空間に納まるサイズとし、自立する構造体であること。
・用途:公共空間での使用を想定し、耐久性と機能性を兼ね備えたデザインであること。
主催:コクヨ株式会社 / VUILD株式会社
作品名:Strata Engawa
作者:Superficium Studio(Samuel Esses,Jonathan Wong)

ヴェネチア・ビエンナーレ2025 ヨーロッパ文化センターPalazzo Moraでの展示の様子 ©SuperficiumStudio
日本の伝統的な「縁側」を、地層から着想を得た積層木材構造として再解釈した「Strata Engawa」。等高線のような自然な形状は、座る、寝転ぶ、集うなど多様な過ごし方を誘う機能的なプラットフォームとなる。アシンメトリーな構造により、瞑想に適した個人的な空間と、家族連れが楽しめる開放的なエリアを両立させた。温かい木肌が自然との一体感を高め、静かな思索と人々の交流が共存する場を創り出す。

ヴェネチア・ビエンナーレ2025 ヨーロッパ文化センターPalazzo Moraでの展示の様子 ©SuperficiumStudio

ヴェネチア・ビエンナーレ2025 ヨーロッパ文化センターPalazzo Moraでの展示の様子 ©SuperficiumStudio
ー 作品名「Strata Engawa」には、どのような空間的な発想が込められているのでしょうか。
Superficium Studio:Strata Engawa は、室内と庭の間に位置する日本の伝統的な「縁側」という境界の空間を、地層のように積み重なる木構造として再解釈した作品です。自然の起伏を思わせるフォルムと機能的なプラットフォームが、座る・横になる・集う・遊ぶと言った行為を促します。非対称なジオメトリーを使うことで、瞑想のための個人的な空間であると同時に家族や子どものためのオープンな空間であるということを可能にしています。

THE CAMPUSでの展示の様子
ー 素材や形態において、公共空間との関係性はどのように考えましたか。
Superficium Studio:温かみのある木合板を組み合わせることで、自然とのつながりを強調しています。また柔らかな形態には方向性がなく、どんな公共空間の中に自然と溶け込む構成となっています。

THE CAMPUSでの展示の様子
ー 本作ではデジタルファブリケーションが重要な役割を担っています。設計・制作プロセスについて教えてください。
Superficium Studio:本デザインでは、デジファブの可能性を活かし、空間的な複雑さと施工性の両立を図りました。アルゴリズムを用いることで、多様なスケールや開放性を持つ空間条件を生成し、敷地条件や要求に応じたデザイン検討を可能にしています。3軸CNCルーターによって、カスタマイズされた部材でも高い精度と効率を保ちながら製作できる点も特徴です。

THE CAMPUSでの展示の様子
ー Digi Fab Awardへの参加、そしてKOKUYO×VUILDとの協働をどのように受け止めていますか。
Superficium Studio:Digi Fab Award は、建築と家具のスケールを横断し、親密さとインタラクティブ性を併せ持つ空間を探求するという、私たちの関心と強く共鳴するものでした。
小さなスタジオである私たちにとって、グランプリの受賞は非常に刺激的かつ意義深い機会であり、1:1でのインスタレーションを通じてアイデアを検証するとともに、東京およびヴェネチアのECCで提案を展示する場を得ることができました。
KOKUYOとVUILDとの協働は、デジタルプロセス、素材実験、公共空間への関心を共有する点において特に意義深く、以前から尊敬してきた両者と共にプロジェクトを進められたことを光栄に思っています。この協働を通じて本作品は概念的な試みにとどまらず、公共空間に対する実践的かつ有効な提案になったと考えています。

THE CAMPUSでの展示の様子