93%が既存か仮設!ミラノ・コルティナ2026に見る、建築とサステナビリティ

©︎ Milano Cortina 2026
2026年2月6日から2月22日まで開催される2026年の冬季オリンピック・パラリンピックは、ファッションとデザインの世界的な中心地であるミラノと、1956年大会が開催されたコルティナという「2つの都市」の名を冠する分散型開催となります。
しかし、建築や都市の視点で最も注目すべき数字は、開催都市の距離ではなく、その会場構成にあります。 組織委員会の公式発表によると、全14の競技施設のうち、実に93%(13施設)が既存施設または仮設施設が活用されます。恒久的な新築施設はわずか1つ。これは、2025年までのオリンピックの新たなロードマップ「オリンピック・アジェンダ2020+5」が掲げるコスト削減と環境負荷低減を、高いレベルで具現化する試みと言えるでしょう。
本記事では、この「既存活用・仮設利用」の精神がいかに実践されているのか、開会式・閉会式を含む全会場を5つの地域(クラスター)に分けて紹介します。
また、以下に各会場の場所をまとめた地図を表記しています。現地を訪れた際など、ご活用ください。
ミラノ・クラスター(Milano Cluster)
大都市ミラノでは、既存の展示場やアリーナを活用しつつ、都市再開発の核となる唯一の新築アリーナが配置されています。
1:ミラノ・サンシーロ・オリンピックスタジアム(San Siro Stadium)
用途:開会式
ステータス:既存
インテル・ミラノとACミランがホームスタジアムとして使用する「サッカーの聖地」である、100年の歴史をもつスタジアム。

©︎ Milano Cortina 2026
2:ミラノ・サンタジュリア・アイスホッケー・アリーナ(Milano Santagiulia Ice Hockey Arena)
用途:アイスホッケー
ステータス:新築(建設中)
設計:デイヴィッド・チッパーフィールド・アーキテクツ
今大会唯一の新築プロジェクト。設計は2023年にプリツカー賞を受賞したデイヴィッド・チッパーフィールドが手掛ける。都市再開発地区「サンタ・ジュリア」の核として、大会後もコンサートやスポーツに使用される予定。

© Onirism Studio
浮遊するリングのミラノ五輪メインアリーナ、デビッド・チッパーフィールド・アーキテクツが設計した〈アリーナ・イン・サンタジュリア〉Arup、イタリア
3:ミラノ・ロー・アイスホッケー・アリーナ(Milano Rho Ice Hockey Arena)
用途:アイスホッケー
ステータス:仮設
ミラノサローネのメイン会場としても有名な、世界最大級の国際見本市会場「フィエラ・ミラノ・ロー(Fiera Milano Rho)」のホール内に、仮設スタンドとリンクを設置。大会後は撤去され、元の展示場に戻る「リバーシブル」な会場。
4:ミラノ・スピードスケート・スタジアム(Milano Speed Skating Stadium)
用途:スピードスケート
ステータス:仮設
上記ミラノ・ロー・アイスホッケー・アリーナと同様に、「フィエラ・ミラノ・ロー」内に設置された仮説会場。

フィエラ・ミラノ・ロー Photo by adrianocastelli / iStock
5:ミラノ・アイススケート・アリーナ(Milano Ice Skating Arena / Unipol Forum)
用途:フィギュアスケート、ショートトラック
ステータス:既存改修
アッサーゴにある既存の多目的アリーナ「ウニポル・フォーラム」に近代化工事を施し、オリンピックの会場として活用。期間後も、アイススポーツの重要な拠点として、若い才能が成長し、情熱を育む場を提供する。
コルティナ・ダンペッツォ・クラスター(Cortina d'Ampezzo Cluster)
1956年冬季五輪の開催地でもあるコルティナでは、当時の遺産(ヘリテージ)を現代基準で再生させています。
6:トファーネ・アルペンスキーセンター(Tofane Alpine Ski Center)
用途:アルペンスキー
ステータス:既存
東ドロミーティ山脈を背景にした、世界で最も美しいと称される既存コース。

©︎ Milano Cortina 2026
7:コルティナ・スライディングセンター(Cortina Sliding Centre)
用途:スケルトン、ボブスレー、リュージュ
ステータス:既存改修
1956年大会で使用されたコース跡地での再整備。トラックの完全な再建だけでなく、最適な運用に不可欠な周辺施設の建設も含まれた。

整備前のスライダー Photo by AVR SCR / AdobeStock
8:コルティナ・カーリング・オリンピックスタジアム(Cortina Curling Olympic Stadium)
用途:カーリング
ステータス:既存改修
1956年大会のために建てられたメインスタジアム。1981年以降に屋根が追加された建築であり、カーリング競技のほかにパラリンピックの閉会式も開催する。

Photo by pict-japan / AdobeStock
ヴァルテッリーナ・クラスター(Valtellina Cluster)
9:ステルビオ・スキーセンター(Stelvio Ski Centre)
用途:アルペンスキー、スキーマウンテニアリング
ステータス:既存
オリンピックにおけるスキーマウンテニアリング(山岳スキー)の初開催を彩る、ボルミオ・スキーセンターの中心的なコース。
10:リヴィーニョ・スノーパーク(Livigno Snow Park)
用途:スノーボード、フリースタイル
ステータス:既存
風光明媚なリヴィーニョ渓谷に位置するコース。5つの異なる競技エリアが1つのフィニッシュゾーンへと集約されており、観客は複数の競技を同時に観戦することができる。
11:リヴィーニョ・エアリアル&モーグルパーク(Livigno Aerials & Moguls Park)
用途:フリースタイルスキー
ステータス:既存
リヴィーニョ渓谷の南西斜面に位置するスキーエリア。ゴールエリアのすぐそばには、約3,000人を収容できるパノラマテラスが設けられ、ジャンプやアクロバットの迫力ある演技を間近で観戦できる。

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ヴァル・ディ・フィエンメ & アンテルセルヴァ(Val di Fiemme & Anterselva)
12:プレダッツォ・スキージャンプスタジアム(Predazzo Ski Jumping Stadium)
用途:スキージャンプ、ノルディック複合
ステータス:既存
1989年建設の既存ジャンプ台を改修。新たな審判塔の設置、造雪システムの強化、最先端の照明システムの導入が行われた。

©︎ Milano Cortina 2026
13:テーゼロ・クロスカントリースキー・スタジアム(Tesero Cross-Country Skiing Stadium)
用途:クロスカントリー
ステータス:既存
世界選手権など多くの国際大会で使用されてきた既存施設。冬季五輪開催に向け、大規模な改修が実施され、コースの見直しから既存施設の機能強化に至るまで、さまざまな改善が施された。

Photo by Giorez / iStock
14:アンテルセルヴァ・バイアスロンアリーナ(Anterselva Biathlon Arena)
用途:バイアスロン
ステータス:既存
オリンピックでは初開催となるバイアスロン(クロスカントリースキーとライフル射撃を組み合わせた競技)における世界最高峰の施設。

©︎ Milano Cortina 2026
ヴェローナ(Verona)
15:ヴェローナ・オリンピックアリーナ(Verona Olympic Arena)
用途:閉会式
ステータス:既存(古代)
紀元1世紀建設の古代ローマ円形闘技場。歴史的建造物の威厳を保ちながら、安全性とアクセシビリティを向上させるための改修が施され、世界最大級の「アダプティブ・リユース(適応的再利用)」の実践と言える。

©︎ Milano Cortina 2026

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