飛騨高山を中心に山林売買、不動産、伐採、製材のほか、住宅や中規模木造建築物、木造あそび場施設などの設計、運営まで手掛ける飛騨五木(ひだごぼく)グループ。岐阜県産材以外にも、木材の産地やデザインにこだわる同社の設計部門・5boc architectSの井端氏、河合氏に、全国の行政から問い合わせが増えているという木材を多用したあそび場のデザイン、またPark-PFI制度を活用した施設設計についてインタビューしました。

井端菜美氏(左)と河合啓吾氏(右)
井端菜美氏(取締役、設計担当/以下、井端):飛騨五木グループは林業の川上から川下まで手掛ける商社です。設計部門・5boc architectSのほか、山林売買や信託、不動産、伐採や乾燥、製材といった山や木材に関わるさまざまな部門があります。小水力発電所の工事や製材して出た端材をバイオマスチップにして販売する自然エネルギー部門、日本の森林や林業について発信するメディア部門、BtoCのオンラインショップなど事業は多岐に渡ります。
創業時は林業のほか、大工を抱える工務店だったのですが、「もっと木の良さを知ってもらいたい」という思いから2015年に飛騨五木株式会社を立ち上げました。今は設計したあそび場施設を運営する部署もつくり、使われている木の情報を利用者に発信することにも力を入れています。

写真提供:飛騨五木株式会社

写真提供:飛騨五木株式会社
井端:製材部門がグループ企業にあるので日常的に材の特色を聞いたり、設計段階で「こういう木を使いたい」という相談ができます。希望する丸太の寸法や長さを伝え、価格や調達可能かの確認も事前にできますし、そもそも建築が成り立つかどうかのアドバイスももらえるのは設計者としてとてもありがたい環境です。

〈KAKAMIGAHARA PARK BRIGE〉Photo: tomoyuki kusunose
河合啓吾氏(執行役員・以下、河合):通常、流通している部材や調達に無理のない部材で設計することを念頭に置いていますが、〈KAKAMIGAHARA PARK BRIGE〉の場合は丸太や雨架かりになるところに7mの部材を使っています。これほど長い材は流通以前に、伐り出して来られない場合もあります。流通している材木が3~4mが多いのはそういう理由です。7mの材を伐り出せる山がどこで、何本取れるか社内で相談することで、私たちのデザインが実現しています。
丸太から木取りして構造材や板材を製材しますが、1本の木を1つの建築のなかで使い切るようなデザインもします。「この建物はどこの木でできている」という、産地の分かる木材で設計、施工しているのも私たちの特徴です。

河合:ある企業の3階建てオフィスビルを木造で設計したのですが、その企業が所有する山の木を使いたいという話がありました。グループ会社の株式会社井上工務店と連携して山の調査、伐採を行い、構造材に使いました。流通している材を使うより費用はかかりますが、飛騨五木グループなら伐採からデザインまで一元的に請け負えます。地域の材を使うことや、環境問題に取り組む企業のストーリーとして、このような問い合わせは年々増えていますね。
井端:一般的に国産材や岐阜県産材というくくりで入手することはできますが、高山市のどこの山、というところまで分かるというのはあまりないですよね。地元の木が使われた施設を利用することで、子供たちにも建築がより身近なものに感じてもらえる可能性があると思います。
設計した私たちだけではなく、林業部門のメンバーも自分たちが伐採したり、製材したりしたものが使われた建物を利用することができ、社員やその家族とも共有できることは5boc architectSでのやりがいだと思っています。

〈森のわくわくの庭 しばふ〉写真提供:飛騨五木株式会社

〈森のわくわくの庭 よぞら〉写真提供:飛騨五木株式会社
井端:私たちに依頼をいただくことが多い木造のあそび場ですが、きっかけは〈森のわくわくの庭 しばふ〉と〈森のわくわくの庭 よぞら〉です。小売業のクライアントがスーパーマーケットを撤退させた広い屋内施設の内装改修で、初めは「中央を広場にしたショッピングモール風にする」ということしか決まっていませんでした。
「人がたくさん来る面白い場所にしたい」というご要望だったので、木材をふんだんに使い、室内に木造を建てるイメージで中央に広場、周囲にテナントが入るようデザインしました。テナントが思うように誘致できないままオープンしたのですが、中央のあそび場を目当てに多くの親子連れが訪れてくれました。
天候に左右されず、空調が効いたあそび場にニーズがあることが分かり、社内で協議して無料だったあそび場をメインに、遊具を増やして子供が遊ぶことに特化した有料施設への方針転換をクライアントへ提案しました。入場料を得ることで事業として成立させ、あそび場の運営も自社(飛騨五木株式会社)で行っています。

〈KAKAMIGAHARA PARK BRIGE〉Photo: tomoyuki kusunose
井端:〈しばふ〉や〈よぞら〉など、私たちが手掛けた木造のあそび場へ多くの行政の方が視察に来られ、今ではPark-PFI(公募設置管理制度)へのお声がけいただくことが増えています。
Park-PFI事業に最初に取り組んだのは、各務原市の「学びの森官民連携型賑わい拠点創出事業」で設計した〈KAKAMIGAHARA PARK BRIGE〉です。まだPark-PFIに取り組んでいる行政は全国的にも少ないのですが、各務原市は積極的に取り組んでいました。
河合:〈KAKAMIGAHARA PARK BRIGE〉は構造の斜材が入っているところがガラスで、構造材のないところが板張りになっている、普通と反転させたデザインが特徴です。建築のつくられ方を見せることで、子供にダイレクトに伝わるといいなと思ってこのようなデザインにしています。1スパン一間のデザインを3スパン1区切りで、ガラス窓、板張り、ガラス窓と連続させ、メタセコイヤの並木道と調和するリズミカルなファサードにしました。
井端:内部はトラスで柱をできるだけ落とさないようにしています。一般的には集成材梁でスパンを飛ばしますが、ここでは集成材を使わず無垢材を使ってトラスにしているのが特徴です。林業を手がけるグループの設計事務所だからこそ、チャレンジできることだと思っています。

井端:ここはもともと「学びの森」という各務原市の大きな公園があり、イベント日は何万人も集まる反面、真夏や真冬は閑散としているので賑わいをつくりたいという市の思いがありました。行政だけだとできることが限られ、イベントの企画も予算のかけ方も難しいということから、官民連携を模索していたところ、私たちが木造の遊び場を手掛けていることからお声がけをいただき、プロポーザルに参加しました。
愛知県大府市にある「あいち健康の森公園」でも、Park-PFI制度を活用した新たな公園施設の設置、管理運営を行う事業者公募で選定されました。こちらは木材を多用した屋内外のあそび場のほか、ドッグランや周囲を囲む展望テラスをデザインしています。今年の夏ごろにオープンする予定です。

あいち健康の森公園で工事が進んでいる屋内あそび場。写真提供:飛騨五木株式会社
井端:今、私たちが設計したあそび場を遠足で利用してくれている幼稚園から、園内にもあそび場をつくりたいというお話をいただいています。岐阜県では多治見市が猛暑で知られていますが、近年の暑さは全国どこでも異常なほどです。全天候型で空調を完備し、子供たちが安全に遊べる空間はこれからもっと必要になると思います。あそび場のほかにも中規模のオフィスビルを木造で建てたいという要望も増えています。
木造以外も設計しているのですが(笑)、何かしら私たちの手掛けた木造建築を体験してくださりご連絡いただくことが多いので、目指していた「木の良さを発信する」ということが叶っていると思うと嬉しいですね。

井端:2025年8月、goboc設計事務所から5boc architectSへ名称を変更しました。その際に入居したこのオフィスは、内装もスタッフが考えてくれている最中です。木造のあそび場やPark-PFIへの取り組みといった軸はありつつも、所長のカラーがあるようなアトリエでも、決まった型のあるような事務所でもありません。誰もが意見を言いやすい環境を心掛けているので、外注で製図などの手伝いに来てくださった方には「設計事務所はピリピリしているのかと思っていたけど、ここでの仕事は楽しい」と言ってもらえています。
手掛けるプロジェクトが増えてきて、設計スタッフを募集しています。私たちの設計した施設へ視察に来てくださる自治体の方も多いので、これから全国で仕事をしていきたいと思っています。事務所とともにスケールを大きく、成長していく面白さを感じてもらえると思います。
今後、東京でも遊び場ができる予定です。東京事務所も立ち上げ、
河合:なにより楽しく仕事ができることが一番だと思っているので、オフィスのキッチンで料理をしたり、スタッフがリクエストした建物をみんなで見に行ったりしています。
木はストラクチャーにもテクスチャーにもなりうる、人間にとって一番身近で魅力のある素材です。その樹種や材木、流通の知識を増やすことができ、木造で中規模のビルにも挑戦できる環境はなかなかないと思います。興味のある人はぜひチャレンジしてほしいと思っています。
インタビュー:3月5日 5boc architectSオフィスにて
トップ写真:〈KAKAMIGAHARA PARK BRIGE〉Photo: tomoyuki kusunose
Photograph:Kei Sasaki(インタビュー)