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ゲンスラー・天野大地が考える、これからのオフィス設計

ゲンスラー・天野大地が考える、これからのオフィス設計

[オルガテック東京2026 | Interview]ゲンスラー×パナソニック EWが提案する「光でシーンを転換するワークプレイス」

1965年にサンフランシスコで設立されたゲンスラーは、現在、世界56拠点に6,000人を超えるスタッフが所属し、ワークプレイスデザインをはじめとする幅広い分野でデザインをリードし続ける、世界最大級の設計・デザイン事務所です。

ゲンスラーは20年にわたり、ワークプレイスや働き方に関するリサーチ、分析を行っています(GLOBAL WORKPLACE SURVEY 2026では16カ国、約16,000人のオフィスワーカーが対象)。そこから見えてくる現在のニーズやトレンド、課題、それを解決する同社のデザイン手法について、ゲンスラー東京オフィスの天野大地氏にインタビューしました。

また、「SHIFT DESIGN」をテーマとして6月に開催される「オルガテック東京 2026」では、パナソニック エレクトリックワークス株式会社(以下、パナソニックEW)がゲンスラーによるデザイン監修のもと、『光×Well-Being』を軸に新しいオフィス空間を提案します。

panasonic

どのような展示計画になったのか、ワークプレイスに求められるニーズに応えウェルビーイングを実現するブースデザインについても話を聞きました。

出社回帰で求められる、在宅ワークとオフィス出社のハイブリッド化とウェルビーイング

天野大地氏(ゲンスラー東京 プリンシパル、クリエイティブディレクター/以下、天野):コロナ渦を経てオフィスのあり方は大きく変換されました。リモートワークやワーケーションなど、オフィス空間以外のさまざまな場所で働けることが分かり、私たちもレジャー施設で仕事をしてみました。園内を移動しながら仕事をしたり、ライドに乗りながらブレストしたり、気分やムードが変わることは意欲や結果に効果があると実感しています。そうなると「オフィスにわざわざ来る意味はなんだろう?」ということになりますよね。

ゲンスラーでは毎年、世界中のワーカーや経営者がワークプレイスについてどのような意識を持ち、何を求めているのかをグローバルにリサーチしていますが、今回見えてきたのは、出社に対して納得させられる意味をもたせる必要性があること、また、大都市だけでなく、地方都市も同様にオフィスへのニーズが変化しており、経営者たちは同業他社を研究したり、試行錯誤しながらオフィスを構築しているということです。そして、クライアントとの打ち合わせで必ず出てくるのが「ウェルビーイング」というキーワードです。

―――― 具体的にオフィスにはどのような場所が求められているのでしょう?

天野:リサーチ結果ではカフェやラウンジ、仮眠スペースなどのニーズは変わらず高く、1日を通じてリフレッシュやリラックスができ、エネルギーを回復できるインフォーマルなエリアが求められているようです。このようなニーズの背景には、近年AIワーカーが増えていることも挙げられます。日々の仕事でAIを積極的に活用するAIワーカーは、デジタル上での働き方がより高度化しているため、オフィスにオンオフの切り替えや、オフの時間を有効に過ごせるウェルビーイングな環境を求めているのです。

あらためて出社を促すためワークプレイスを見直し、投資をする経営者たちは、オフィスの完成をゴールとは考えていません。あくまで企業として目指す姿を達成するためのオフィスであり、マーケットのコンディションが人材によって変化することや、商業施設や飲食店のようにスペースあたりの売り上げや費用対効果が目に見えにくいことに対する理解度が上がってきています。そのなかで、経営者にとっては健康経営に、ワーカーにとってはエンゲージメントに寄与するものとして、ウェルビーイングという視点がより明確になってきていると感じています。

海外の潮流と異なる、日本のオフィスデザインの課題

ゲンスラー

天野氏(写真右)とブースについて打ち合わせするパナソニック エレクトリックワークス株式会社  箱田秀孝氏(Well-Being事業開発室)、谷邨和子氏(エンジニアリングセンター ライティングデザイン担当)、上野早織氏(エンジニアリングセンター 空間ソフト企画開発課)

天野:数年前から定着しているABW(Activity Based Working)は、自分のタスクや気分に合わせて場所を変えるという働き方です。経営者にとっては個人の生産性を落とさずに面積をミニマムにするチャレンジでもありますが、働き方の変化に混乱が生じ、離職者が発生してしまうケースもあります。

欧米はもとより個人主義の考え方がベースにタスク分解される傾向があるため、ABWとの親和性がある一方で、日本はすり合わせや調整をして仕事を進めていくスタイルが根強くあります。そのため、従業員が同じ空間にいる必要性が高くなりますが、ABWをかたちだけ取り入れて個人の生産性だけにフォーカスしても、会社としての生産性向上がなければうまく機能しません。心地よく感じられ、集中できる場所を設けて個人の生産性を上げ、アジャイルでチームとしての生産性も上げるハイブリッドで考える必要があるわけです。

ゲンスラー

天野:海外では、オフィスビルは入居時にスケルトン仕様で引き渡されることも多く、自分たちに合うレイアウトや照明計画を積極的に考えることができます。このようなABWに適合しやすいアメリカなどのオフィスに比べ、日本のオフィスビルは、「入居したらすぐ仕事が始められる環境と安心感」が求められ、あらかじめ天井に照明が設置されています。設計や什器の購入に関しても予算確保や承認に時間がかかり、一度決めたレイアウトの変更は難しいのが実状です。

また、同じ企業でも研究開発職と営業職といった職種や、従業員それぞれがもつ特性によりオフィスでの働き方や過ごし方も異なりますが、日本ではどうしても画一的な環境に落とし込みがちです。変化や進化のスピードが遅いことが日本のオフィスにおける課題だと考えています。

ゲンスラーが考える設計術「目標を紐解いて場に落とし込む」

ゲンスラー

―――― ゲンスラーではどのようにワークプレイス設計を進めているのでしょうか?

天野:ワークプレイスの設計において私たちは経営者とコミュニケーションを取り、中長期計画など企業が掲げる目標についてヒアリングしますが、経営者は目標に加え、サステナビリティやダイバーシティ、D&Iなどさまざまな視点をもっています。クライアントごとの目標を紐解いて「彼らにとって」何が必要で、何が最適解かを考え、仮説を立てて場に落とし込むわけです。

日本のオフィス特有の、物理的・​予算的な​制約から​短期間で​大きく​変える​ことが​難しい​空間に​おいて、個人、チームともに生産性を上げるためにはソフト面での環境設定が重要になります。WELL認証でも評価項目となっている10のコンセプト(空気、水、食物、光、運動、温熱快適性、音、材料、こころ、コミュニティ)のうち、光はもっとも効果的な要素の1つだと考えます。舞台装置を思い浮かべると分かりやすいのですが、光は目から入る情報として、大きく人の感情や五感に訴えかけることができる要素であり、集中する、リラックスするというメリハリのある切り替えも照明を活用して行うことができます。そこへさらにブーストをかけるのが香りや音です。

光が環境をつくり、ウェルビーイングを実現するワークプレイスを展示

―――― 今回のオルガテックでは、どのようなブースデザインをされましたか?

天野:今回、オルガテック東京2026では、『光×Well-Being』を軸にパナソニック EWのブースデザイン監修をしています。よりウェルビーイングでホスピタリティを重視した働き方を、移り行くワークプレイスで体験できるブースです。

パナソニックブース

箱田秀孝氏(Well-Being事業開発室 Wellサービス推進課 課長):パナソニック EWは光を中心に五感に響く電気設備でブースを展開します。ウェルビーイングをブーストさせる音や香りにも着目し、私たちがもっている電気設備をうまく使いながらゲンスラーさんの知見もいただいて進めています。

上野早織氏(エンジニアリングセンター 空間ソフト企画開発課):ブースの奥がワークスペース、中央がマグネットスペース、手前がリラックススペースというゾーニングで、当社独自の照明設計指標に基づいて、アクティビティに応じた空間の雰囲気を光で演出しています。

谷邨和子氏(エンジニアリングセンター ライティングデザイン担当):バイオフィリックデザインとして、包み込むような色味のあるライティングやマイクロLEDを使ったドットライトによる細やかなシルエットの投影で、より五感に訴えかける要素をもたせました。

天野:今回、パナソニック EWの無線調光システムやマイクロLEDによる光の見せ方と遮り方で、ワークプレイスがシームレスに切り替わる体験をしてもらえる展示になっています。環境音や香りも落とし込んだ、シーンや機能が次々と変化するオフィス空間を、ぜひ会場で体験してください。

オルガテック東京 2026 開催概要・セミナー情報

日時:2026年6月2日(火)~6月4日(木)
会場:東京ビッグサイト 南1~4ホール

セミナー:「PanasonicとGenslerが考える FUTURE WORKPLACE」
日時・場所:6月2日(火)14:30~15:15 /4階セミナー会場/無料・自由入場
登壇者:天野大地氏(ゲンスラー東京オフィス)、パナソニック エレクトリックワークス株式会社 箱田秀孝氏(Well-Being事業開発室)、谷邨和子氏(エンジニアリングセンター ライティングデザイン担当)、上野早織氏(エンジニアリングセンター 空間ソフト企画開発課)


インタビュー:2026年4月9日 ゲンスラー東京オフィスにて
Photograph:Shun Fukuda

 

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