ミラノサローネ国際家具見本市に併設され、35歳以下の若手デザイナーの登竜門である「サローネサテリテ(SaloneSatellite)」から、今年度の受賞者が発表されました。今年度のテーマは「熟練のクラフツマンシップ+革新(Skilled Craftsmanship + Innovation)」。テクノロジーと素材文化の新たな交差点を提示した5作品が選出されました。

SaloneSatellite Award First prize RUSSO BETAK Nippon ©︎Salone del Mobile.Milano 2026

SaloneSatellite Award First prize Portrait Russo Betak ©︎Salone del Mobile.Milano 2026
第1位に輝いたのは、デンマークを拠点とするルッソ・ベタックが手がけるペンダントランプ「Nippon」。アーク(Ark)コレクションのひとつであるこのランプは、貝殻をベースとした革新的な3Dプリント素材を、手作業で成形しています。層状のシートが光を内包しながら透過させる様は、紙のような繊細さと自立構造の剛性を併せ持ち、デジタル技術がいかに「有機的な流動性」を獲得できるかを証明しています。素材研究と簡潔な美しさに昇華させた点が、審査員団から最高評価を受けました。

SaloneSatellite Award Second prize Portrait IOUS Studio ©︎Salone del Mobile.Milano 2026

SaloneSatellite Award Second prize IOUS Studio 3DP Ceramic Tiles ©︎Salone del Mobile.Milano 2026
第2位のIOUSスタジオによる「3DP Ceramic Tiles」は、計算制御によって粘土を3Dプリントする、次世代のセラミック外装システムです。機械の精密さを、土という素材の不確実な感受性と融合させることで、持続可能な生産背景を持った「現代のクラフツマンシップ」を提示。建築の「肌(エンベロープ)」における新たな表現の可能性を切り拓いています。

SaloneSatellite Award Third prize Portrait Jungerkuhn ©︎Salone del Mobile.Milano 2026

SaloneSatellite Award Third prize Jungerkuhn Soft-Touch ©︎Salone del Mobile.Milano 2026
第3位のユンガーキューンによる「Soft Touch」は、ロボットによる高精度な制御と、磁器が持つ固有のクラフト性を高度にバランスさせた点が評価されました。一点ごとに異なるパターンは、技術的精度が「冷たさ」ではなく、素材の「生き生きとした表情」を引き出すための装置であることを示唆しています。

SaloneSatellite Award Special Mention Portrait Nicolás-Romero, AIKO DESIGN ©︎Salone del Mobile.Milano 2026


SaloneSatellite Award Special Mention Ritratto Yixian Wang ©︎Salone del Mobile.Milano 2026

Special Mention Yixian Wang Foggy ©︎Salone del Mobile.Milano 2026
特別賞には、チリのAiko Designと中国のYixian Wangが選出されました。Aiko Designは、伝統的な馬の毛編みとPLAの3Dプリントを組み合わせ、土着の象徴を現代のプロダクトへと翻訳。一方のYixian Wangは、樹脂を使わずガラス繊維布をガラスへと転換する実験的な器「Foggy」で、素材の儚さと軽やかさを極限まで引き出し、ガラスという素材の固定観念を鮮やかに更新しました。
今年度、審査委員長のパオラ・アントネッリ(MoMAシニア・キュレーター)をはじめとする審査員団が評価したのは、伝統的な技法を単にデジタルへ置き換えるのではなく、両者を相互作用させることで、プロダクトに「新たな触覚性と象徴性」を付与したアプローチでした。

SaloneSatellite Award Marva Griffin Wilshire, Founder and curator SaloneSatellite ©︎Salone del Mobile.Milano 2026
受賞作を貫くのは、「技術を道具として従わせる」のではなく、技術と素材が互いに引き出し合う関係性への着目です。効率化の文脈で語られがちな3Dプリントやロボティクスを、あえて「素材の表情を深める行為」として再定義している点に、今回の審査基準の本質があると感じます。
設計者にとって、これらの試みは単なる家具デザインの範疇に留まりません。デジタルとアナログの境界が消失していくなかで、建築空間における「ディテール」や「素材のアイデンティティ」をどう再構築していくのか。若き才能たちが提示した答えは、次世代の空間設計における重要な示唆に満ちています。

SaloneSatellite Award Róng Design Award ©︎Salone del Mobile.Milano 2026
第1位 ルッソ・ベタック(Russo Betak)、デンマーク
作品名:「ニッポン(Nippon)」
会場:スタンドB13
第2位 IOUS スタジオ(IOUS Studio)、オランダ
作品名:「3DPセラミックタイル(3DP Ceramic Tiles)」
会場:スタンドD17 / E18
第3位 ユンガーキューン(Jüngerkühn)、ドイツ
作品名:「ソフトタッチ(Soft Touch)」
会場:スタンドC23
特別賞 アイコ・デザイン(Aiko Design)、チリ
作品名:「ヌミナランプ(Númina Lamp)」
会場:スタンドB23
特別賞 イーシェン・ワン(Yixian Wang)、中国
作品名:「フォギー(Foggy)」
会場:スタンドA25