旧裁判所の上に生み出す、アートと融合する高層マンション〈Tower on the Ting〉Wingårdhs、スウェーデン - TECTURE MAG(テクチャーマガジン) | 空間デザイン・建築メディア
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旧裁判所の上に生み出す、アートと融合する高層マンション〈Tower on the Ting〉Wingårdhs、スウェーデン

旧裁判所の上に生み出す高層マンション

無骨なコンクリートとアートから抽出した色彩が交わる〈Tower on the Ting〉

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〈Tower on the Ting〉Wingårdhs

©︎ Tord-Rikard Soderstrom

スウェーデンのエーンヒェルツビークに位置する〈Tower on the Ting〉は、役割を終えた旧裁判所庁舎のうえに住戸を新設した、スウェーデンの建築設計事務所 Wingårdhsによる高層マンションです。

既存の荒々しいコンクリートと、色鮮やかな光沢を放つ増築部分との鮮烈なコントラストとダイナミックな構成が本作の最大の特徴となっています。

注目ポイント

  • 無骨なコンクリートの既存建築と、色彩豊かな増築部
  • ハッシュタグ(#)型の平面計画と構造システム
  • 地元出身の世界的画家ベンクト・リンドストロームの作品から抽出した色彩
  • 釉薬を施したセラミックタイルを用いた外装

(以下、Wingårdhsから提供されたプレスキットのテキストの抄訳)

〈Tower on the Ting〉Wingårdhs

©︎ Tord-Rikard Soderstrom

旧裁判所庁舎の誕生と時代の変遷

1961年、スウェーデンのエーンヒェルツビークにおいて、新たな裁判所庁舎の設計コンペが開催された。このコンペを制したのは、当時まだ無名であったオーグストソン(Augustsson)、ヤンソン(Jansson)、シェーベルグ(Sjöberg)、ウースマ(Uusma)による建築家グループである。

その結果として、一切の妥協を排したコンクリート造の力強い建物が完成した。1967年に落成した旧裁判所庁舎は、その後長きにわたり役割を全うしてきた。

しかし、時代の流れとともに司法制度も変容を遂げた。かつて活気に満ちていたこの建物も、やがて年に数日しか稼働しなくなり、数多くの部屋の大部分が利用されないまま放置されることとなったのである。

〈Tower on the Ting〉Wingårdhs

©︎ Tord-Rikard Soderstrom

施主の情熱とビジョン

ここで1人の人物が登場する。ニクラス・ニーベリ(Niklas Nyberg)である。画家の息子であり、地元の建設業者でもある彼は、あらゆる意味で強烈な個性を放つ人物である。彼は、この地域にルーツをもち、国際的な評価を確立している画家ベンクト・リンドストローム(Bengt Lindström, 1925-2008)の熱心なコレクターでもあった。ニクラスの自宅やオフィスには、ベンクトの絵画が所狭しと並んでいる。

ニクラスは、アトリウムから覗くむき出しの岩盤の上に高層マンションを建設することを構想し、この旧裁判所庁舎を購入した。私は、裁判所の荒々しい質感のコンクリートと、色彩豊かで光沢さえ感じさせる増築部分との対比が、見事な調和(シンフォニー)を奏でるであろうと直感した。

〈Tower on the Ting〉Wingårdhs

©︎ Tord-Rikard Soderstrom

ハッシュタグ型の構造と住戸構成

設計にあたり、私たちは正方形の平面図を基本としつつ、それを記号のハッシュタグ(#)のように格子状に分割した。中央の正方形が、周囲の8つの区画を支える中心核(コア)となる構造である。

このコアを囲むように5つの住戸が配置され、四方の全方向にバルコニーが突き出す構成となっている。同様の構成をもちながらも、階ごとに変化を持たせた10階建ての住棟の最上階には、ニクラスのための屋上ヴィラが冠されている。

〈Tower on the Ting〉Wingårdhs

©︎ Tord-Rikard Soderstrom

〈Tower on the Ting〉Wingårdhs

©︎ Tord-Rikard Soderstrom

芸術を纏う建築と都市計画への統合

建物の外装を彩る配色は、ベンクト・リンドストロームの芸術作品に基づいたもので、釉薬を施したセラミックタイルによって忠実に表現されている。建築局はこの独創的なプロジェクトを即座に高く評価し、速やかに都市のマスタープランの一部として組み込まれることとなったのである。

〈Tower on the Ting〉Wingårdhs

©︎ Tord-Rikard Soderstrom

〈Tower on the Ting〉Wingårdhs

©︎ Tord-Rikard Soderstrom

〈Tower on the Ting〉Wingårdhs

©︎ Tord-Rikard Soderstrom

以下、Wingårdhsのリリース(英文)です。

Tower on the Ting
There was an architecture competition to design the new courthouse in Örnsköldsvik in 1961. The winners were a group of then unknown architects named Augustsson, Jansson, Sjöberg, and Uusma. The result was an uncompromising concrete building, dedicated in 1967, that served its purpose well.
Times have changed, and the court system with them. Eventually the building was only being used a few days a year, and then only a portion of its many rooms.
Niklas Nyberg is the son of a painter, a local builder, and a colorful character in every way. He collects art by Bengt Lindström (1925-2008), an internationally recognized painter with roots in the area. Niklas’s home and office are full of Bengt’s paintings.
Niklas bought the old courthouse with the intention of constructing a tall apartment building on top of the exposed bedrock visible in the atrium. It struck me immediately that the contrast between the raw concrete of the courthouse and a colorful, maybe even glossy, addition might sing.
We drew up a basically square floor plan, which we then divided into squares like a hashtag. The center square carried the other eight. The layout had five apartments wrapped around this central core, with balconies in all four directions. There are ten similar but varied stories crowned by a rooftop villa for Niklas.
The color scheme is based on the art of Bengt Lindström and executed in glazed ceramic tiles. The building department liked the project at once, and quickly added the Tower on the Ting to its master plan.
Gert Wingårdh

 

Wingårdhs 公式サイト
https://www.wingardhs.se

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