ここは日本!? これは現代の住宅??
駅近でも落ち着いた雰囲気で、昔ながらの住宅街が広がる東京・杉並区の高井戸の街。
建築家として活躍し、オフィスのデザインや家具販売を手がけるインターオフィス社長の寺田尚樹氏が、両親と暮らす自邸がこの地に完成した。
▲〈テラダハウス〉外観。地階扱いの部分はRC造、上部の家型のボリュームは木造。真っ赤な愛車がガレージに止まる
シンプルな家型をした建物に一歩足を踏み入れると、そこは未来感あふれる世界。
斜めに立ち上がる壁も、ビビッドな色使いで曲線のフォルムをしたミッドセンチュリーの家具も、1960年代に描いた“輝ける未来”をイメージさせるものだ。
TECTURE MAGではこのユニークな建物について、寺田氏と平手健一氏(寺田平手設計)に案内と解説をしていただいた。
▲寺田尚樹氏(右)と平手健一氏(左)
Movie & photographs: toha(特記を除く)
動画の内容
00:26 全体を貫く斜め壁
01:22 家具と空間
02:50 家具のサブスク
03:25 〈リビングタワー〉を使いこなす
04:55 みんなが集まるハッピーな家
06:27 白タイルで囲われたバスルーム
08:15 ミニマルなベッドルーム
〈テラダハウス〉を読み解く2つのカギ
〈テラダハウス〉には、「2つ半」のポイントがある、という寺田氏。
「斜めの壁が3層にわたって突き抜けていることが、1つの大きな要素です」と寺田氏は語る。平手氏は「斜めの壁と建具の納まりは、小さなモデルをつくりながら、職人さんと一緒に相談してつくりました」と苦労を振り返る。
▲斜めの壁に沿って動く、引き戸のディテール
2つ目は、家具をどう空間に取り込むかということ。
「既製品の置き家具について、何をどういうふうにレイアウトするかは、設計のかなり初期段階から考えました」と寺田氏。
エーロ・サーリネンによるKnoll社の〈チューリップチェア〉や〈オーバルテーブル〉、フリッツ・ハラーによるUSM社の〈ハラーシステム〉など、ミッドセンチュリーの名作家具を配するにあたって、寺田氏が利用したのは家具のサブスクリプションサービス。これが〈テラダハウス〉の“2つ半目”のポイントとなる。
▲キッチンとダイニングの間を仕切るように置かれた〈ハラーシステム〉
▲1階では〈ハラーシステム〉が、部屋を仕切る壁に沿って設置されている
「建築のコストの中から家具が除外されることで、値段をあまり気にせずに家具を選ぶことができ、自由度が広がったと思います」(寺田氏)。
「リビングのソファだけは、既製品では僕の中では回答が得られなかったので、オリジナルのソファをつくっています」という寺田氏は、300×600×900mmのブロックを自由に組み合わせ、ベルトで巻いて緊結するモジュラーソファを本物件のために開発した。
▲インターオフィスで製作した〈MIFFY SOFA〉と名付けられた寺田氏オリジナルデザインのソファ。ベルト通しの「×」が、キャラクターのミッフィーを想起させる
みんなが集まる楽しい家に
▲リビング・ダイニング・キッチン全景。吹き抜け上部のフロアに〈リビングタワー〉が置かれている(Photo: Ben Richards)
「自分の憧れるクセのある家具を、いかに空間に使っていくか」を重視した寺田氏。〈テラダハウス〉の中で最も重要な位置を占めるのが、リビング吹き抜け上部のフロアに鎮座する〈リビングタワー〉である。
「ヴェルナー・パントンがデザインしたこの家具を、使いこなしたいと思っていたのですね。ここでくつろげるように設計しました」。
〈テラダハウス〉に満ちる、明るい雰囲気。寺田氏は「みんなが集まる楽しい家にしたかった。設計の当初からあったハッピーなイメージは、1950年代や60年代の、未来や宇宙に希望をいだいていた時代の雰囲気です。リビングの約3.5m幅の大開口も、みんなで楽しめたらいいなと思ってつくりました」と語る。
▲リビングとテラスをつなぐ、引き戸の大開口
そのほか、真っ白な100mm角のタイルで包まれたバスルーム、濃いブルーで塗られた主寝室など、ユニークな空間が扉を開けるごとに展開する。
▲洗面カウンターが一体でつくられたバスルーム
▲コンパクトでミニマルな主寝室。テキスタイルデザインは安東陽子氏によるオリジナル
▲トヨウラ製のオールステンレスの特注キッチン
見どころ満載の〈テラダハウス〉を、動画を通して堪能いただきたい。
(jk)