新刊『ex-dreams　もうひとつのミッドセンチュリーアーキテクチャ』

建築家の福島加津也と冨永祥子の両氏が率いる福島加津也＋冨永祥子建築設計事務所では、活動の一環として、近代建築の研究・リサーチに加え、それらを1冊にまとめた書籍の発行なども行なっています。

出版の第1弾は、近代初期ドイツ木造建築の知られざる名作をリサーチし、”創造的探求の記録”として1冊にまとめた『Holz Bau』。2020年5月に自費出版され、約2週間で完売しています[*後述]。

このほど、同事務所が立ち上げたガデン出版（GADEN Books）から、第2弾となる新刊が発売されました（ISBNコードを取得、全国の書店にて取り扱い可能）。
近代において最も新しい建築素材の1つである「アルミニウム」に着目し、本書が”アメリカ建築”と呼称する特徴的な建築群をリサーチした『ex-dreams　もうひとつのミッドセンチュリーアーキテクチャ』です。

『もうひとつのミッドセンチュリーアーキテクチャ』（2022年、ガデン出版）

書籍概要

本書で着目した”アメリカ建築”は、アルミニウムを活用した住宅や高層ビルから、徐々にアルミニウムの未来的イメージが独り歩きして、やがてグーギー建築（Googie architecture）と呼ばれるロードサイドのダイナーへ、さらにはポストモダン建築へと発展していく。

本書では、モダンからポストモダンへの転換期にあたる19のアメリカ建築と、4つの日本の事例を、写真と図面、イラスト、漫画によって紹介する。（ガデン出版プレスリリースより）

また本書では、主題とする建築群への理解を深めるため、以下の論考やインタビューも併録。さまざまな人々との対話を通して、近代建築史上はまだ歴史が浅く、捉えづらい一面もあるこれらの建築群に多角的に迫ることを試みていています。

・建築生産、建築構法を専門とする東京大学の権藤智之による論考
・1973年に米国で出版された『SHELTER（シェルター）』の著者であり、『Whole Earth Catalog（ホール・アース・カタログ）』の編集者でもあったロイド・カーン（Lloyd Kahn）へのインタビュー
・グーギー建築を代表する建築家、アーメー・デイビズの現在のパートナーであるビクター・ニューラブへのインタビュー。
・建築史が専門の東京大学、ハーバード大学のセン・クアンとの座談
・建築家の塚本由晴との座談

目次

002 はじめに

アルミニウム
016 書籍「アルミニウム・イン・モダン・アーキテクチャー」再録

企業の夢
034 フェアフィールド・ゴールデン・ドーム
040 カワニール社工場事務棟
044 アルコア・ケアフリー・ホーム
052 レイノルズ・メタル社デトロイト支社
060 アルコア本社ビル
064 マニュファクチャーズ・トラスト・ビル

個人の夢
074 グロスマン邸
082 シュールマン邸
090 ダイマキシオン・ハウス
094 大智寺本堂
098 ソリッドとサーフェス 権藤智之

プラスチック
112 レイナー・バンハムの愛したオルトモダン 冨永祥子
120 フトゥロ
124 セキスイハウス A 型
128 ロイド・カーンと ex-dreams の時代 / ロイド・カーン × 福島加津也、冨永祥子、佐脇礼二郎

グーギー
144 雑誌記事「グーギーアーキテクチャ」再録
150 ノームズ・ラ・シエネガ店
154 パンズ・コーヒーショップ
160 ユニオン 76 ガソリンスタンド
164 ダウニーのマクドナルド
170 ハングリータイガー保土ヶ谷店
174 近代の理想を実現すること / ビクター・ニューラブ × 福島加津也、冨永祥子、佐脇礼二郎

オルトモダン
184 ガルシア邸
196 フィッシャー邸
200 アイクラー・ホーム
208 エシェリック邸
218 母の家

リフレクション
234 近代の理想の実現 / セン・クアン × 福島加津也、冨永祥子、佐脇礼二郎
246 あり得たかもしれない建築について / 塚本由晴 × 福島加津也、冨永祥子、佐脇礼二郎
260 夢のシルエット 福島加津也

本書で取り上げる主な建築家とその作品

・ゴードン・バンシャフト（アメリカ　1909-1990）
〈マニュファクチャーズ・トラスト・ビル〉
・ラファエル・ソリアーノ（アメリカ　1904-1988）
〈グロスマン邸〉、〈シュールマン邸〉
・ルイ・アーメー、エルドン・デイビス（アメリカ　1914-1981、1917-2011）
〈ノームズ・ラ・シエネガ店〉、〈パンズ・コーヒーショップ〉
・ジョン・ロートナー（アメリカ　1911-1994）
〈ガルシア邸〉、〈フィッシャー邸〉
・ルイス・カーン（アメリカ　1901-1974）
〈エシェリック邸〉
・ロバート・ヴェンチューリ（アメリカ　1925-2018）
〈母の家〉

『ex-dreams　もうひとつのミッドセンチュリーアーキテクチャ』書籍概要

企画・編集：福島加津也、冨永祥子、佐脇礼二郎
寄稿・インタビュー：権藤智之、ロイド・カーン、ビクター・ニューラブ、セン・クアン、塚本由晴
ブックデザイン：米山菜津子（YONEYAMA LLC. / YYY PRESS主宰）
判型 / 装丁：A4判変形（300×216×29mm）、コデックス装
ページ数：272頁
言語：日英併記
ISBN：978-4-9911456-1-2
版元：ガデン出版
発売日：2023年3月29日
定価：4,800円＋消費税

ガデン出版ウェブサイト 販売ページ
https://gadenbooks.stores.jp/items/6407e358ce75b2002c2c49c8

*『Holz Bau』は、ドイツ建築博物館が主催し、その年の世界の建築本の中からベスト10を選出する「DAM Architectural Book Award」において、日本の出版物としては初めて「The Best Architectural Books」を2020年に受賞。
同書の追補版が2022年にTOTO出版から刊行されている。

9/8トークイベント「ホルツ・バウから考える今日の本づくり」、TOTO出版『HOLZ BAU［増補版］ホルツ・バウ──近代初期ドイツ木造建築』刊行記念（銀座 蔦屋書店主催）