愛知県一宮市の中核病院として地域医療を支えてきた〈一宮西病院〉の新館B棟が、2023年7月1日にオープンしました。完成後の総敷地面積・延べ床面積はともに約2倍、ベッド数は497床から801床となり、医療法人としては県下最大規模の病院になります。
この新館B棟にアイカ工業のメラミン化粧板、人工大理石「コーリアン®」、塗り床材が採用されたことを受け、B棟新設の背景やコンセプト、製品採用の経緯について、病院担当者へインタビューしました。
これまでの一宮西病院の地域においての役割や、今回のB棟新設の背景を担当者は以下のように語ります。
「当院は一宮市と稲沢市合わせて約60万人の医療圏における中核病院として、日々医療を提供しています。もともと465床で運営していましたが、毎年医師を採用し、提供できる医療が拡大するとともに、ハード面での課題が多く出てきました。3、4年くらい前から外来の診察室の空きがなくなり、病床も満床で、患者様に関連病院に転院していただくことも多々ありました。今回のB棟は病室や診察室を増やし、これらの課題を解消しています。」(病院担当者談)
現在、一宮西病院には約200人の医師が勤めています。
規模を大きくしたことで、医師も選択肢が増えてやりたいことができるので、今後の医師や看護師の採用にも繋がるとのこと。最新の医療機器も導入しており、最先端医療の提供が可能です。
A棟にあった健診センターをリニューアル。面積を3倍に拡大し、B棟の1階に移転しました。検査室と待合室の大幅な拡張を行い、すべての検査がワンフロアで実施できるようになっています。
開放的な空間で、リラックスした快適な検査を実現します。
メディカルサポートセンターの受付カウンターには人工大理石「コーリアン®」が採用されました。
継ぎ目のない全長11m以上のカウンターが洗練された空間を演出しています。
「コーリアン®」は均質なソリッド素材のため汚れや液体が染み込みにくく、いつまでも美しく保つことができ、メンテナンスが容易なことも魅力的です。
落ち着いた雰囲気のエントランスホールが来院者を温かく出迎えます。開放的なホスピタルモールは吹き抜けからのやわらかな光に包まれています。
エントランスホール、ホスピタルモール、レストランなどの家具にはメラミン化粧板が採用されました。
メラミン化粧板はカラーバリエーションが多く、どのような空間にもマッチする色柄を取り揃えています。傷や汚れに強いため、ホスピタルファニチャーとしてお馴染みの素材。また、病院は常に清潔を保つことが必要で、消毒薬での清掃が欠かせません。今回、選ばれた「指紋レスメラミン化粧板 セルサス」は、傷が目立ちにくいうえに、耐薬品性にも優れています。
「病院らしくない病院」を目指し、安らげるひと時を提供するため、レストラン・シュクランではホテルのような空間がつくり出されました。料理と同様に、椅子やテーブルなどの家具や照明すべてにこだわりが詰まっています。
病室や化学療法室にもアイカ工業のメラミン化粧板が採用されています。
病室にはウォルナットの木目に、レザー調のカウンターを組み合わせた高級感あふれるテレビボードと、同柄のセンターテーブルが製作されました。
化学療法室の受付カウンターの腰壁やメディカルコンソールBOXの表面材には、やさしいメープル柄のメラミン化粧板が使用され、患者様が落ち着ける空間が演出されています。
厨房には、アイカ工業の塗り床材「アイカピュール耐熱」と「ジョリエースE」が採用されました。
今回、一宮西病院はA・B両棟の厨房に新しい調理方式「ニュークックチル」を導入しました。ニュークックチルとは、病院や福祉施設での大量調理のために開発された調理方法です。
「病床数が多くなると、料理をつくって配膳するまでに時間がかかり、適温での提供が難しくなります。ニュークックチルは、料理をつくって一度急速冷却し、チルド状態のままお皿に盛り付ける方法です。急速冷却することで、細菌の増殖を防ぐ効果もあります。喫食時間直前にカート内で再加熱するため、より確実に適温で提供することが可能になりました。また、早朝に調理する必要がなくなるため、勤務時間が改善され、厨房スタッフの確保にも貢献しています。温かい料理を提供でき、人材の確保にも繋がるというトータルのメリットを考慮し、設備投資を行って今までの調理システムから新しいシステムに変更しました。」(病院担当者談)
衛生管理では、食中毒などの原因になる汚染源をもち込まないことが非常に重要です。
下処理室と厨房を区切る位置には、両面に扉があり、両側から食材の出し入れができる構造のパススルー冷蔵庫が設置されました。下処理室で処理された食材をパススルー冷蔵庫に保存、厨房では反対側の扉から食材を取り出すことが可能です。汚染作業区域(オレンジ色の塗り床)とされる下処理室と清潔作業区域(緑色の塗り床)を人が行き来することなく食材だけを次の工程に移すことができるので、交差汚染を防止することができます。
最後に、一宮西病院の今後について、病院の目指す役割を伺いました。
「801床となり県内でも有数の規模を誇る病院となりました。患者様からの期待も大きくなっていると思いますので、今まで以上に救急医療やがん治療をはじめとした質の高い医療を提供していきたいと思っています。名実ともに、期待に応えられる病院にしていかないといけないと感じております。」(病院担当者談)
濃尾平野を一望できるロケーションに位置する一宮西病院は、今後も地域医療の拠点病院としての役割が期待されています。
■施設概要
施設名称:社会医療法人 杏嶺会 一宮西病院
設計:日建設計
家具製作:インフォファーム
施工:大林組
今回使用されたアイカ工業のプロダクト詳細はこちら
TECTURE〈社会医療法人 杏嶺会 一宮西病院〉